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大切な存在⑤

翌日から、俺と母さんは気を取り直して、お城の中で過ごすことにした。


「これまでの調査内容が纏まり次第、森の調査を開始するんだよな……」


俺は改めて、スタン様が告げた言葉を思い出す。

つまるところ、調査内容が纏まるまではお休みということだ。

街に出かけて買い物という手もあるけど、ミカエル兄様のことがあるから気軽に行きにくいのもある。

だからと言って、スタン様たちにミカエル兄様から聞いた話を打ち明けても、信じてもらえるかは分からない。

信憑性が欠けているし、証拠もない。

何より、ダナー商会には、ミカエル兄様という後ろ楯がある可能性があった。

下手に動けば、ネーア王国や俺たち天使の従属国そのものを敵に回すことになる。

できるだけ、慎重に動く必要があった。

ただ、もっとも……。


森の奥に、ダナー商会の者たちはいない。


そのことを知り得ただけでも恩の字なのだ。

完全に行き詰まった状態。

結局、何も打つ手が思いつかなかった俺は、しばらく図書室に篭って、本を読もう。

そう結論づけたのだ。


「ダナー商会のことも重要だけど、彼らの雇い主のことも探らないといけないしな」


胸に走った痛みを振り払うように、俺は頭を横に振った。

ダナー商会。

彼らの雇い主に、アナスタシア様に対して、悪意を持った者がいる。

その人物に雇われた彼らが目的達成のために、スタン様に取り入って、アナスタシア様に近づいた。

そして、隙を見て、アナスタシア様に毒物を施した。

そこまでは分かっている。

だが、肝心の雇い主については不透明だ。


どこの誰で、何が目的だったのか。

何も分からない。

だが、そのことを誰も言及しないあたり、スタン様たちは既にその人物の手がかりを掴んでいるのかもしれないな。

でも、俺たちと同じように証拠がない。

だから、内密にしているのかもしれない。


俺はこれまでの状況から現状を把握する。


「うーん。考えても、すぐには答えは出ないか」


俺は一度、深呼吸をすると、母さんと一緒に、与えられた部屋を出て、城を渡り歩く。

図書室は、演奏会の依頼の関係で、何度か通ったこともあるので道に迷うことはない。

道すがら、廊下に飾られている壷や絵画などを見ていると、図書室まではあっという間だ。


「誰かいるかな?」

「何人か、いるみたいね」


母さんの言葉に、俺は少し躊躇ったものの、入り口の扉を開いて中に入った。

仄かな明かりを手がかりに、書棚に収められている本を見て回って、お目当ての本を探す。

数冊、手にしたところで、手近な席に座り、本を開く。

基本は、ダナー商会と闇魔法を調べるためというのを建前に。

母さんと一緒に、片っ端から、それに関係しそうな本を読んでいる。

とはいえ、図書室には山のように本がある。

まだまだ、先は長そうだ。

今も、ある意味、時間つぶしに、関係ありそうな本を探していた。

どれくらいの時間が経ったのか、席と書棚の間を何往復かした頃。


「これって……」


俺はふと、気になった本があったので手に取った。

タイトルに『濃くなる瘴気と闇魔法の関連性』と入っている本だ。

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