大切な存在④
「母さん、一度、部屋に戻って、状況を整理しよう」
「そうね」
俺の提案に、母さんは噛みしめるようにうなずいた。
この周囲一帯の瘴気は、すべて浄化している。
リンクス領周辺の魔物はこれ以上、増加しないはずだ。
あとは残った魔物をすべて倒せば、この地は安全になる。
ここで焦っても仕方ない。
急がば回れ。
無茶は禁物だ。
今はできることをしよう。
そう意気込むと、俺は母さんと一緒に、お城がある方向へと進んでいった。
街の散策は、広場を避けつつ、お城の玄関前にたどり着いたところでお開きとなった。
さすがにこれ以上、街を歩き回るのは危険すぎると考えたからだ。
「はあ……。疲れた……」
与えられた自室にある机の上に突っ伏し、盛大に溜息を吐く。
「母さん、ごめん。巻き込んで……」
「何を言っているのよ。ライルは何も悪くない! それでも、ライルを無理やり連れていこうなんていう人は、お母さんがミカエル様だろうが、国王様だろうが、文句を言ってあげるから!」
「母さん、ありがとう」
母さんの温かみに、胸がぽかぽかと温かくなる。
「変な感じだ……。幸せで不安になる。ザナフェルの生まれ変わりの俺がこんなに幸せでいいのかな……。いつか、この幸せが終わってしまうのかな……って考えると――」
「そんなこと、考えても仕方ないでしょう。大丈夫。終わらせないわよ」
母さんの言葉に、身体の芯から自然と笑みが込みあげてくる。
「私たちがついている。前世が何であろうが、誰がなんと言おうが、あなたが私の息子であることは変わらないもの」
「母さん……」
穏やかに笑う母さんを、俺は胸が熱くなるのを感じながら見つめてしまう。
「ライル。お母さんが、絶対に守ってあげるからね」
「違うよ、母さん」
「えっ……?」
俺は母さんの温もりを感じると、深く息を吸い込んだ。
「俺が母さんを守る。絶対に守ってみせるから! 絶対に幸せにしてみせるから!」
固く掴んだ決意に、母さんは俺を抱きしめてくれる。
とても優しい抱擁だった。
「馬鹿ね。お母さんは、ライルが幸せでいてくれるのが一番なの。そばにいてくれるのが幸せなの。きっと、死んだお父さんも、同じことを言うと思う。ライルを誇りに思っている」
「母さん、ありがとう……」
大切な親子の会話。
それが何よりも、俺を温かい気持ちにさせてくれる。
真実を知っても、ずっとそばにいてくれたことへの感謝と温かい気持ちが、胸を満たしてくれたのだった。




