守りたい未来⑧
前世でも持っていた力。
その時も、俺は――自分の天使の加護持ちの存在を感じ取ることができたはずだ。
それなのに、肝心なことにすぐに気づかなかったなんて。
「それだけ、焦っていたのかもしれないな」
気が動転していたせいで、重大なことを失念していた。
「母さん、ルリア様の居場所を探ってみる。うまくいく確証はないけれど」
「試してみる価値はあるわね」
俺が言いたかった言葉を、母さんが穏やかに紡いだ。
まずは念じて、ルリア様の居場所を特定しようと思った。
「ルリア様……」
意識を集中させると、ぱっと景色が変わる。
そこは見覚えの場所だった。
「えっ? 器楽室の前……? 先程、俺たちが通った場所じゃ?」
俺は思わず、声を上げた。
感じ取ったルリア様の居場所は、確かに『器楽室の前』を指し示している。
でも、目に入るのは広々とした室内だけだ。
そして――。
「あれ? 何だか、声が違う……?」
「うまくいったみたいだね」
混乱をきたしていた俺を抱きかかえていたのは、明るい金色の髪をした青年だった。
抜けるような青空に似た瞳。
さらさらとした明るい金色の髪との対比が、本当に綺麗だと思った。
……だが。
「相変わらず、その反応、かわゆす…………」
その青年は興奮して思わず、声がもれ出ていた。
しかも、慌てふためいたり、わめき散らしたりと、その美しい姿にふさわしくない奇行を繰り返している。
その言動に、纏う空気に、どこか既視感があった。
「ああ~。まさか、ザナフェルの方から、私に会いに来てくれるとはね!」
「うわあっ! なんで、俺、ミカエル兄様に抱きかかえられているんだーー!!」
目の前に立っている青年が、ヴェルディ第一王子だと悟った俺は、ひたすら絶叫するしかなかった。
……というか、何が起きたんだ?
ルリア様の居場所を特定しようとしたはずなのに、気がついたら何故か、ミカエル兄様に抱きかかえられている……!?
確かに、ダナー商会の者たちが、ミカエル兄様たちがもうじき、屋敷に来るって話していたけれど!
「どうなっているんだよ……!」
慌てて、飛び降りて、部屋にあった鏡を覗き込む。
そこに映っていたのは幼い女の子の姿だった。
綺麗に手入れされた真紅の髪と、ぱっちりとした大きな緑の瞳のご令嬢だ。
その幼い顔立ちにひどく見覚えがあった。
……いや、見覚えがあるとか、そういう話でおさまる存在ではない。
「ええっ!? ルリア様……!?」
何度、鏡を見返しても、今の自分の姿がルリア様であることは変わらない。
「こ、これって、まさか!?」
俺の頭の中の混乱は最高潮に達していた。




