彼女を救うためにできること①
「もちろん、憑依の魔法だよ。ザナフェルは、この子、ルリア・グランジを探していたんだよね。だから、場所を特定しようとするタイミングで、彼女にザナフェルの魂を移動させたんだよ」
その説明で、今どういう状況なのか、思い至った。
つまり、俺が加護を持つルリア様の居場所を特定しようとした。
そのタイミングで、ミカエル兄様は『憑依の魔法』を使って、ルリア様に、俺の意識を憑依させたのだろう。
その絶望的な答えに、俺の胸中は混迷をきわめていた。
「相変わらず、ミカエル兄様は呼び寄せ方が強引すぎる!」
「ああ~。その仕草、かわゆす……!」
かわいいと連呼されていることを認めたくなくて、俺は一生懸命に背伸びした。
その仕草がまた愛らしかったのか、ミカエル兄様はうっとりと胸を高鳴らせてしまう。
「ああ~、最高にかわゆす! マジ、尊死する! ザナフェル、今の姿もかわいい~!」
ミカエル兄様は獲物を見定める視線を向けて、俺を上から下までじっくり見つめた。
「うぐっ……」
居心地が悪くなった俺は思わず、言葉を詰まらせてしまう。
ミカエル兄様の魔法は、本当に突発的すぎる……。
これじゃ、対策の立てようがない。
悶々と悩んでいると、母さんの叫び声が聞こえた。
「ライル、しっかりして!」
視線を向けると、母さんが不安そうに俺の身体を抱きしめていた。
「母さん、俺はこっちだ!」
「えっ? ルリア様?」
俺の言葉に、母さんはぽかんとする。
俺は一呼吸置くと言い直した。
「母さん、違うんだ! ミカエル兄様が『憑依の魔法』を使って、ルリア様に、俺の意識を憑依させたんだ!」
「ええっ!?」
予想外な話の転がり方に、驚きの声が母さんの口から出た。
突拍子のない出来事を前にして、俺たちが戸惑っていると、ミカエル兄様は思いもよらないことをのたまった。
「ザナフェル、安心していいよ。ザナフェルの意思で、いつでも元の身体に戻ることができるから」
「……いつでも元に戻れる?」
予想外の状況に、俺は唖然とする。
じゃあ、何のために憑依させたんだ?
首をかしげていると、まるでいたずらの種明かしをするかのように、ミカエル兄様は楽しげに笑った。
「ただし、ザナフェルが戻った瞬間、その子は死ぬから。そういう面白い仕掛けを施したからね」
「めちゃくちゃ、問題がありすぎるーー!!」
ミカエル兄様の驚きの発言に、俺は目を丸くする。
つまり、俺が元の身体に戻ったら、ルリア様が死んでしまう。
でも、元に戻らなかったら――。
「私たちの手で、あっさり捕らえられるだろうね」
ミカエル兄様の言葉は無情だった。
ただでさえ、八方塞がりな状況なのに、どんどん泥沼と化していく。




