守りたい未来⑦
スタン様はダナー商会はもう、この街にはいないって言っていた。
だが、それすらも偽の情報だったということになる。
スタン様が信用するに足る人物。
スタン様は恐らく、ヴァイル様から、その情報を入手したのだろう。
なら、ヴァイル様が、グランジ家を利用した黒幕なのか?
だが、確証はない。
何か証拠を発見しないと。
極度の緊張の中、歩き続けた俺たちはついに器楽室にたどり着いた。
「ここにもいない……」
だが、器楽室はもぬけの殻。
俺たちに突きつけられたのは、あまりにも非情な現実だった。
『お土産を買ってきますよ』
『おみやげ……。すごくたのしみです』
俺の発言に、ルリア様の表情がぱあっと笑んだ時のことを思い出す。
リンクス領で買った、ルリア様へのお土産のお菓子。
焼き菓子と蜂蜜を使ったお菓子。
『マジックルーム』は空間魔法の一つ。
術者しか見えない異空間に、物質を出し入れできる。
いわゆる、空間収納。
食材なども長期保存できるから、食べ物が腐ることもない。
それでも一刻も早く渡して――ルリア様が喜ぶ姿が見たかった。
「屋敷のどこにもいないなんて……ルリア様たちは、ダナー商会の者たちによって、連れさらわれてしまったのかもしれないな」
俺の表情が沈みきる前に、母さんはすくい上げるように尋ねる。
「ねえ、ライル。ルリア様は、あなたの加護を持っているのよね?」
「ああ。……って、俺の加護を持っている……?」
その言葉を反芻すると、俺の心臓は早鐘のように打った。
「加護を持っているルリア様の居場所の把握……あっ!」
そこまで弾き出したところで、ようやく俺は母さんが言いたいことが分かった。
ルリア様は、俺の――『天使ザナフェルの加護』を持っている。
ありとあらゆる厄災から守ってくれる加護――。
ルリア様と出会ったあの日、ザナフェルとして覚醒したことで、ハープの音色には魔力がこもっていた。
それはこの音色を聞いた者に、『天使の奇跡』という加護を与えてしまうというものだ。
『天使の奇跡』という加護。
それは、前世では誰もが、喉から手が出るほど欲しがっていた加護だった。
そして――。
「そういえば、前世では、俺の加護を持っている存在の居場所を特定することができたよな」
胸に寄せた手に、心臓の鼓動が強く打ちつけている。
「ローゼンさんたちをサポートした時も、ローゼンさんの存在を間近に感じることができた。恐らく、ルリア様の居場所も感じ取れるはずだ」
戸惑いの気持ちが、次第に確信に変わっていく。




