守りたい未来⑥
屋敷の中はしーんと静まり返っていた。
俺たちはこれといって危ない目に遭うこともなく進んでいったけれど。
「母さん、待って。誰かいる」
「えっ……?」
俺の声に、空気が一瞬で凍りついた。
隠密スキルを駆使しているから、誰かに気づかれることはないはず。
だけど、ミカエル兄様には見破られてしまう。
俺たちが相手の出方を見計らっていると。
「ここにザナフェル様がいるのか?」
「ミカエル様の話ではな」
ダナー商会の者らしき人たちが、俺のことを噂していた。
「まずは、ザナフェル様の捜索が最優先だ。もうじき、ミカエル様たちも、こちらにお越しになられる。そうすれば、すぐに見つかるだろう」
「そうだな」
ダナー商会の者たちが話していたことは、思わぬ事実だった。
やっぱり、ミカエル兄様は俺たちの行き先を把握していたみたいだ。
すぐに追ってこなかったのは、屋敷で待ち構えるためだったのだろう。
このままではルリア様たちを救う前に、俺たちは問答無用で、ネーア王国の王城に連れ戻されてしまう。
救出作戦が、お先真っ暗に……。
どうにかする方法を考えないと……。
屋敷にダナー商会の者たちがいる状況の中、ミカエル兄様が来るという、最悪の事態。
この窮状で、自分にできることは何だろう。
その答えはもう見えていた。
アナスタシア様たちを陥れようとした者を捜さなくてはいけない。
そして、アナスタシア様たちを救わなくてはいけない。
(もう、みんなが苦しまなくてもいいように……。一時的なしのぎじゃなくて、根本的な解決策を見つけないと)
俺は決意を新たにする。
だけど、今も、ダナー商会は脅威を振るっている。
決して、気を抜くことはできなかった。
「母さん、まずは器楽室に行ってみよう」
「ええ」
俺と母さんの意見が合致する。
「確か、この先だったよな」
記憶を頼りに、音を立てないように慎重に進んでいく。
「それにしても、屋敷の人たちを見かけない。ジオさんたち、大丈夫だろうか……」
不安に駆られた俺の心臓はバクバクと音を立てている。
この音で気づかれるのではないかと心配になるほど、頭の中に自分の心臓の鼓動が鳴り響いていた。
「代わりに、ダナー商会の者たちはやけに屋敷に出入りしているな」
「誰か、手引きをした人がいるのかもしれないわね」
「そうだな」
器楽室に向かう間も、隠密スキルはしっかりと俺たちを守ってくれた。
何回か、ダナー商会の者らしき人たちを見かけたが、横を通りすぎても声をかけられることはなかった。
ダナー商会の者たちをやり過ごすと、足音を立てないように慎重に奥へ奥へと歩を進めていく。




