守りたい未来②
「ダナー商会は隠れ蓑として、様々な場所に潜伏している。信頼している者が、実はダナー商会の者かもしれないね」
ミカエル兄様は、さらに踏み込んだ話を始めた。
「だが、彼らは目的を妨害したり、正体を暴いてきた者には容赦しない。生かす道がある方が不思議な状況だ」
ミカエル兄様はこれまでの現状から、そう結論づける。
「ザナフェル。彼らのこの街での暗躍は、もう大詰めに入っている。もう止めることはできないよ」
「それって……アナスタシア様たちの身が危ないってことなのか」
そう考えれば、全てに合点がいくけれど。
予想はしていたけれど、改めて口にすると、その事実が重くのしかかる。
それでも俺は足掻く。
立ち止まって、後ろを向いて、『これまで』を積み重ねて。
でも、それは全部、『これから』のためだから。
停滞することとは、絶対に違うから――。
大切な人たちが苦しまない未来を作りたいと願う。
『ライルせんせい、アイリスさま』
ルリア様の笑顔が、脳裏にぱあっと花開く。
『おでかけしてもかならず、もどってきてください』
ルリア様たちは、俺たちの帰りを心待ちにしている。
一刻も早く帰りたいと思う。
だけど、目の前にはミカエル兄様がいる。
それでも、アナスタシア様とルリア様が苦しまなくていいように。
俺たちがやれることを精一杯、やっていくしかない。
「スタン様が信用するに足る人物。それって……」
「アナスタシア様たちに近づいても怪しまれない人なのかもしれないわね」
母さんは、悩む俺の様子から、望む答えを引き出せたらしい。
「近づいても怪しまれない人物。それって……!」
俺はそこで言葉を切る。
目の前には、俺が抱いていた懸念が顕在化していたからだ。
「ザナフェル様、お久しぶりです」
厳かな服をまとった聖職者たちが俺の前で膝をつく。
それはさながら、騎士の示す臣従の礼のようだった。
そして――。
「ライルくん。君の前世が、ザナフェル様だということは本当なのか?」
「なっ!」
「……え?」
視界が闇に覆われる。
その声音は……俺たちにとって聞き覚えのある声だったからだ。
「そうなれば、この国すべて、全世界の民が君に膝をつかねばならない。もちろん、私たちもだ」
この先に希望はなく、ただ終わりだけが横たわっている。
そう言いたげに、男性は語り続けた。
「茜色の羽の天使、ミカエル様。空色の羽の天使、ザナフェル様といえば、誰よりも高い位なのだからな」
それを聞いた瞬間、ざぁっと全身から一気に血の気が引いた。




