守りたい未来①
未来は定まっていない。
俺たちの想いが、どのように未来を彩るのかはまだ、分からない。
それでも、前に突き進むだけだ。
母さんの幸せはもちろん、俺の大切な人たちの幸せにも絶対にたどり着くために――。
ミカエル兄様が目の前にいる、絶望的な状況。
それでも、アナスタシア様たちを陥れようとした者を捜さなくてはいけない。
ダナー商会の暗躍を止めるために。
進むべき道程の険しさはとうに知っている。
それでも、俺たちは進み続けるのだろう。
心の内にきらめく刃を抱きながら、一歩ずつ。
「ザナフェル。この場から離脱しようと思っているみたいだね。でも、この状況で逃げられるわけないから」
改めて、俺たちが直面したのは厳しい現実だった。
そしてーー。
「ああっ、いいねっ! その微妙な顔っ! きゅんきゅんするよっ!!」
「うぐっ……」
ミカエル兄様の溺愛ぷりだった。
しかも今、朝食中だったから、メイドさんたちに注目されて居心地が……。
「ああ~。かわゆす! ザナフェル、今世も大好きだよ!!」
「そそそ、それってどういう意味の好きだよ!!」
抱擁された俺は腑に落ちないようにつぶやく。
とにかく、ミカエル兄様の言動に翻弄されたままじゃダメだ。
俺たちには、アナスタシア様たちのためにやらなくてはならないことがある。
この状況を生かすも殺すも、俺たちの手腕にかかっているのだ。
「……何とかしないと」
俺は周囲の状況を確認する。
この状況を打開して、ルリア様たちのもとに行かないといけない!
ルリア様は、『天使ザナフェルの加護』を持っている。
ありとあらゆる厄災から守ってくれる加護――。
だが、アナスタシア様たちの近くに、ダナー商会の者がいたら、今後も命を狙われる可能性がある……。
ミカエル兄様の話を踏まえると、アナスタシア様たちを狙っているのは、俺が今まで出会ったことがある人たちの中にいるのかもしれない。
「ザナフェル」
ダナー商会のことを考えていたからか、ミカエル兄様は再度、昨夜のお祭りについて触れた。
「お祭りには、ダナー商会が関わっていたよ。ザナフェルが探している人物もいたかもしれないね」
「俺が探している人物……」
スタン様は確かに、ダナー商会はもう、この街にはいないって言っていた。
だが、それすらも偽の情報だったということになる。
スタン様が『誰』から、その情報を入手したのか分かれば、グランジ家を利用した黒幕を突き止めることができるかもしれない。
スタン様が信用するに足る人物。
怪しいのは……。
俺が思考を加速させる前に――。




