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陰キャな僕は義妹を寝取ることに決めた。  作者: リンゴと蜂ミッツ
第1章 陰キャな兄とギャルな妹
28/53

第27話 甘じょっぱくて

 カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 駅舎を出ると辺りはすっかり夕闇に包まれていた。

 家まで15分の道程を妹と肩を並べて歩く。

 右手に持っている教科書の詰まったカバンはずしりと重く、空いている左手は火照ったように熱いまま。


 僕たち兄妹の間に会話は無く、最寄り駅と自宅の中間地点にある児童公園に差し掛かった。

 まだ僕たちが小学生だった頃、この公園から家まで妹の手を引いて帰った記憶があった。

 

 さっきから一言も発しない妹。それでも僕の隣にぴたりと肩を寄せている。

 僕の左手と彼女の右手が時折触れ合いながら微妙な距離を保っていた。

 

 ―――高校生になった兄妹が仲良く手を繋いで帰ることなんてあり得ない


 そう常識的な思考を巡らしてはみたものの、今この瞬間に思い切って彼女の手を握れば受け入れてくれるような気がした。

 でも、だからこそ怖かった。妹を寝取ると決めた自分がこのまま一歩を踏み出してしまえば、もう僕らは仲が良い兄妹ではいられない。

 

「‥‥‥バカ兄貴」


 隣を歩く妹がポツリと零した。僕を残して突然走り出す。

 考えに耽っていて、気づけば自宅はすぐそこで‥‥‥。


(れん)―――」


 思わず妹の名前を口にした。だけど呼び止めた声は自分の耳にやっと届くくらいの弱々しいものだった。


 妹に遅れて家に入ると両親はすでに帰宅していた。

 久しぶりに家族4人で食卓を囲む。


「あら? その絆創膏どうしたの?」


 向かいに座る母さんが目ざとく聞いてきた。こういう鋭いところが妹に受け継がれている訳で。

 思わず箸を置いて空いた手で首筋に触れる。


「あ、こ、これは―――!? えっと‥‥‥」


 言葉に詰まると不思議そうな顔で母さんが見つめてきた。

 キスマークなんてことは絶対に言えない。ましてや妹に付けられたなんて知られたら、両親が苦労して築いてくれたこの温かい場所()がなくなってしまう。


「怪我でもしたのか?」


 そんな僕の態度に父さんまでもが首を捻る。


「怪我っていうか‥‥‥」


 口下手な僕は返す言葉を完全に見失った。

 背中に嫌な汗をかき始めたところで隣から助け船が出た。


「蚊に刺されたって言ってたじゃん」


「あ、そうだ、そうだった。昨日の夜、部屋に蚊が出たんだ。刺されたところが腫れちゃって」


「痒いからって、掻いちゃダメよ」


「もうそんな時期か。愛ちゃん、蚊取り線香とかスプレーってあったかな?」


 僕の体にキスマークを刻んだ張本人は助け舟を出した後、何食わぬ顔でご飯を頬張っていた。

 どうやら冷汗をかいたのは僕だけのようで、その場はなんとか誤魔化すことができた。



 本格的な夏を目前にしたこの時期、我が家では浴槽にお湯を張ったり張らなかったりで―――だから今夜は簡単にシャワーを浴びた。


 自室に戻ると大きな蚊が‥‥‥もとい、当たり前のように妹の姿があった。ラグの上でクッションを枕に寝っ転がり、スマホ片手にクッキーをぱくついていた。

 半袖Tシャツにショートパンツという下半身の露出度が高いいつもの格好なんだけど、妹を寝取ると決意した側には目の毒で。

 

「あんま見んなし」


「み、見てないし」


「きょどってんじゃん」


「う、うるさい‥‥‥! って勝手に食べるなよ」


 見つかれば面倒だと考え隠していたはずなのに、加藤さんに貰ったクッキーはもう殆ど残っていなかった。

 そんな中、妹は悪びれもせずジト目をこっちに向けてきた。


「これ手作りじゃん。誰から? 教えろ」


「誰からって」


 正直に答えたら妹はどんな反応を見せるんだろうか? あまり良い結果にはならない気がする。

 それより目ざとい妹のことだ、もしかしたら既に察している可能性があった。

 こういう時の妹に対する下手な嘘は、自分の首を絞める結果になることを僕は知っていた。だから諦めて正直に答えることにした。


「加藤さんから」


「あの女‥‥‥」


「な、なんだよ」


「一方的に告ってフラれて、間なしに違う男へ手作りクッキー送るとか―――加藤って人、メンヘラじゃん」


 しかめっ面の妹の口から僕と同じ感想が聞こえた。‥‥‥やっぱり彼女はメンヘラ女子なんだ。

 別にメンヘラが悪いとかそういうことではないんだけど、普段から真面目で他人に対して厳しそうに見える学級委員長のイメージからはかけ離れていた。

 妹には口が裂けても言えないけど、陰キャな僕の頭の中に『ギャップ萌え』って言葉が浮かんだ。


「ご馳走様―――」


 妹が指先についたクッキーのカスを舐め取りながら体を起こす。

 クッキーが入っていた透明な袋を見れば空になっていた。


「あっ、1枚くらい残してくれてもよかったのに―――加藤さんに感想聞かれたら困るだろ」


「ふん! 最近流行りの塩クッキー、甘じょっぱくてメチャ美味(ウマ)かった。これでいい?」


 鼻を鳴らした妹が面倒くさいって感じを前面に押し出し淡々と感想を述べた。

 甘すぎるクッキーにはそんなに惹かれないけど、甘じょっぱいなら少しは食べてみたかった。


「感想はきちんと伝えるのが礼儀だかんね」


「わかったよ。ってか、勝手に食べておいて、それ言うかな」


「文句あるん?」


 おっと、今夜は深く追及し過ぎた。最近の妹は幼い部分が発露したヤキモチが厄介で。

 これ以上へそを曲げられると後が大変なので、「‥‥‥いや、別に」と答えておいた。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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