悍ましい聖霊カストゥス2
「くそ!まだなのか!?」
クロムウェル巡航戦車に装備された75mmの主砲をかなりの数命中させたが、今だ効果は見られず。
しかし元よりレイドボスの耐久力は一両の戦車程度で削りきれるほど少ないことなどない。
「リドルさん!銃身の交換をお願いします!」
重量兵の一人に頼まれた通りにリドルはMG42の銃身を交換する。
重量兵は分隊支援火器を個人で携行しているため、火力はあるが身に着けた装備の取り外しなどは他人に任せるしかない。
基本的に持ち歩く予備の銃身は一本であり、彼は既に一度付け替える時に一本捨ててしまった。
「リドル君マガジンちょうだい」
「はいはい」
リドルはロゼールのポーチに自分の予備マガジンを全て入れて、リドル自身は戦車に積んでいた盾と拳銃に持ち替える。
盾の素材はクルーエルマサカーで作られているプロテクターでも使用しているクロムモリブデン鋼、同時に使用する拳銃を片手でリロードできるように拳銃用ホルダーが付いている。
拳銃はFNブローニングハイパワー、複列弾倉なので弾数が多く、時代制限に引っかからない範囲で盾と併用するのに最適でありM&Mでは大人気。
特徴的なマガジンセイフティという機能はトリガーを引くときに妙な擦っている感覚があるため、リドルはこれを嫌ってマガジンセイフティを取り除いている。
「他の連中も集まってきたぞ」
ロゼール隊に聖獣モンスターのヘイトが向いていたため他のプレイヤー達の接近が楽になっていた。
「ギリギリまで撃ったら私達は退避するよ!」
「了解!」
「先ほどの聖獣から左の家、そこの手前です」
「わかりました」
シトが観測手、スーノが狙撃手として他のプレイヤーと共に壁の上から投げ込まれた聖獣モンスターを処理していた。
悍ましい聖霊カストゥスが投げ込む聖獣を壁のプレイヤーが迎撃していたせいか、聖獣をより高く山なりに投げてくるようになったため迎撃できなくなった。
なので壁のプレイヤーは都市内に入った聖獣を倒し、高く投げ込まれる聖獣は戦闘機部隊が空中で撃ち落している。
一体は体長ニメートルほどなので航空機で攻撃するのは難しいはずなのだが、一度に投げ込まれる数か多く固まっているので的が大きくなり撃ち落しやすい。
「命中、次弾は待ってください……右側に別働隊がいますので任せましょう、別目標を探し――」
『アアァアァアルァアァアァアアアァァ!』
再び悍ましい聖霊カストゥスの声が脳に直接響き渡る。
「これはなんなのでしょうか?」
「わかりません、とりあえず今は狙撃に集中しましょうよ」
「そうですね」
『地上部隊がバリアを剥がしたようだ』
戦闘機部隊は現在聖獣モンスターの投擲がされていないため地上を監視していた。
そこには数両の戦車や歩兵がバリア内で攻撃を行い、見事HPを削ってバリアを剥がす様子だった。
『ん?何か妙だな……』
バリアを剥がされた悍ましい聖霊カストゥスの体は少しずつ形状が変化し、サツマイモのような形になった。
『あれは……翼です!』
サツマイモのような体型の体に鳩のものに似た巨大な翼が三つ生えた。
悍ましい聖霊カストゥスはその翼を羽ばたかせるのではなく自分を抱きしめるように体を包み込むとより細長くなり、浮遊し始めた。
そして水中のハリガネムシのようにワーム型の体を蠢かせながら飛翔し始める。
『飛ぶのかカストゥスとやらは』
『凄い速度ですね、追いつかれることはないと思いますが』
『私達に追いつけなくとも地上部隊の攻撃はあまり届かないわ、私達がやらないと』
『アルカトラズ隊長、アングルが単機で行っちまったんだが』
『なにを考えているんだ?!』
「もうすぐ弾切れです、補給に行ってきます」
「わかった、一緒に行かなくて平気か?」
「大丈夫です」
ユーストはスオミKP/-31に71発のドラムマガジンを装着し、予備のマガジンは40発入りマガジンを4つ持ち歩いてる。
ドラムマガジンを含めれば7キログラムにもなるほど重いが、その重さのおかげで安定した射撃が可能。
体力は多いが防御力の低い聖獣に対しては9mmの拳銃弾をサブマシンガンで大量に撃ち込むというのはかなり効果的。
そのため都市内に入り込んだ聖獣の処理で大量に撃ってしまい、残るマガジンは一つ。
弾切れが近いのでユーストはスモアと分かれて弾薬補給のため壁を目指す。
『アアァアァアルァアァアァアアアァァ!』
「ぐっ!またですか」
声のことは気にせず壁を小走りで目指す。
そして壁の階段が見えたところで、モンスターが視界に入る。
「キュルルルルルルル!」
全長は1.5メートルほどで、セミのような体にナマケモノのような手があり全身は白い毛で覆われている。
「聖獣の次は聖虫ですか、静かにしてください」
「キュリリリリリ!」
ユーストはサブマシンガンを三発ずつ指きりで撃つ。
聖虫は飛翔能力がある代わりに体力がほとんどない。
「しかしどこから?新たに召喚され……あれ?」
自分の周りが一瞬暗くなったのを感じたユーストは空を見上げた。
そこにはワーム型に変形した悍ましい聖霊カストゥスが空を飛んでいる姿だった。
さらに体を覆う翼から次々に聖虫を生み出している。
(これは厄介ですね)
早く弾薬を補給しようと階段を上ると、戦闘機の飛ぶ音がかなり近いことに気づく。
再び見上げると零戦が悍ましい聖霊カストゥスを追いかけ、鳩のような翼に機銃攻撃を加えているのが見えた。
攻撃を受けた翼は聖虫を生み出せなくなり、新たに敵が増えることがなくなった。
「さすがアングルさんだな、こんなに素早く対応してくれるとは」
近くにいるプレイヤーの会話を聞きつつ、予め置いていた弾薬箱を漁ってマガジンをポーチに補充し、現在装填されている40発マガジンを71発のドラムマガジンと取り替える。
「ああ、おかげで虫野郎はほんの少し――」
「キュルルルルルル!」
近くにいたプレイヤーが聖虫に持ち上げられて壁の下へ突き落とされた。
「なんてこった!ケニーが!」
(スモアは一人で大丈夫でしょうか)
一方教会ではその場にいた誰もが目の前に出来事に驚いていた。
「好きな神の下へ送ってやる」
「我は心で殺す」
「300グレインの弾頭で細切れにしてやるぜ」
(なんだろうこの人たち……)




