ロゼール隊
レイドボスが出現する少し前。
「クリムさん!久しぶり」
「ひ、久しぶり……なのかな……」
「お久しぶりですシト様」
クリムに抱きついていたシトは次にメイド長へ向かって両手を広げる。
メイド長は戸惑いながらも渋々抱擁を受けれた。
シトがスーノと話している間に到着したリッジウェル家の馬車。
乗ってきたのはクリムとメイド長、そして警備隊長だった。
「えーっとあなたは確か……」
「警備隊長のラッセルです、元ファイロ帝国第一騎士団として義務がありますので同行しました」
そう言うと他の武装した者達を従えて都市内に入って行った。
丁度その時スモアともう一人のプレイヤーが駆け寄る。
「おう会えたのか、私達個人参加は都市内で待機だそうだ」
「そっか、ところでなんでユーストがいるの?」
フェイスマスクを着用しているため顔は見えないが、かなり小柄で白いマントやフードという外見と手に持ったスオミKP/-31でシトにはすぐに誰だかわかる。
レイパユースト、通称ユースト。
「この世界に来てからずっと山の中にいたのですが、レイドイベントの通知を見て誰かいないかと思って来てみたら案の定でした」
ユーストがここ二週間山の中にいたということに驚きつつ、全員が都市内へ入る。
個人参加として来た者は騎士の監視付きで都市へ入るのが許可されるが、それなりの数が既に入っている。
彼ら現地人は騎士などを除いてあまりアウトサイダーに対する警戒心が薄い。
(どうして現地人はこうもアウトサイダーに親切なのかねぇ……)
「どうしたの?」
スモアの考え事をしている顔を見てシトが問いかける。
「いや、なんでもない」
そしてレイドイベントが始まった現在、シトとスーノは壁の上へ、スモアとユーストは門で、クリムとメイド長は教会で待機することになった。
階段をのぼった壁の上、そこには十数人のプレイヤーと監視役の騎士の姿がある。
シトは近くにいるガスマスクとヘルメットを装備したプレイヤーに話しかける。
「どうもこんにちわ」
「どうも、君達は個人参加か?」
「ええ、あなたはクルーエルマサカーの人ですよね、ここから攻撃するんですか?」
「ああ、今回はマデュースが使えないから迫撃砲でね」
シトとガスマスクの女性が雑談をしていると、スーノが壁の外へ指を指しながらガスマスクの女性に話しかけた。
「手振ってますけどお知り合いですか?」
スーノが指差す方向には手を振るこれまた同じ格好をした者が数人、その内の一人が手を振っている。
「そうだ、あそこに私と同じ格好してる人いるだろ?」
そう言いながら壁の東側にいるプレイヤーを指差す。
ガスマスクの女性がそのプレイヤーもガスマスクとヘルメットで顔が隠れており、現地人と思しき騎士と会話をしていた。
「普段はあのグリムトゥースと手を振ってるロゼール、グリムの弟のリドルとよくダンジョン攻略して――」
女性は喋るのを急にやめて空を見上げ、釣られてシトとスーノも空を見上げた。
そこには十体ほどの聖獣の纏まった緑がかった光が都市内へ向かって飛翔していた。
「撃て!撃て!撃て!」
「あんな攻撃があるなんてね」
壁の上にいるプレイヤーが聖獣に気づいた瞬間、即座に銃撃を加える。
既に都市内へ入ってしまったのもいくつかあるが、今は飛翔中のモンスターを迎撃する。
「急げ急げ!」
重量部隊の兵士三人を含めた総員五名のロゼール隊は一番近くのクロムウェル巡航戦車の上に乗り、悍ましい聖霊カストゥス目掛けて戦車を発進させる。
バリア内でなければ攻撃は届かないため、可能な限りプレイヤーを戦車に乗せて戦車ごとバリア内に突っ込む。
タンクデサントのような作戦だが、戦車はモンスターに対して無敵というわけではないため歩兵も必要だ。
モンスターが戦車の転輪に体を突っ込んだり、出入り口をこじ開けて来るということがゲーム時代にはあり、エンジンに対して魔法などで攻撃されてもダメージにはなる。
他にも多くのプレイヤーがロゼール隊と同じように戦車に乗っている。
「きやがった!」
戦車の上に乗ってるロゼール隊が振り落とされないために速度をあまり出していないため、聖獣型モンスターなら走って追いつける。
それをロゼール隊が迎え撃つ。
「無駄撃ちはするな!戦車の上じゃあ銃身交換もできないぞ!」
「了解!」
重量部隊の三人が持つのはグロスフスMG42機関銃、一人で持ち歩くようなものではないが撃てないということはない。
クルーエルマサカーの特徴として、彼らはほとんどが自作の防具を装備している。
特に重量部隊は拳銃弾くらいなら至近距離でも弾く鎧を装備し、一人で分隊支援火器を持っているため機動力が低いが火力は高い。
「リロード!」
ロゼールとリドルが持つのはヘーネルStG44、時代制限に引っかからない程度の古さかつ扱いやすい銃であることからM&Mプレイヤーには大変好まれている銃。
「くっそ、数が多いな、弾大丈夫か?」
聖獣は武器を持っていること以外はせいぜいグールより生命力がある程度だが、問題は一度に召喚される数が多い上に限界を感じさせない召喚の持続。
対処できないことはないが、弾薬を減らされるのが厄介。
「気にしてもしょうがないよ、とにかくやってみないとね」
戦車の上にいて銃声だらけだというのにリドルの小声にローゼルは返事をした。
ロゼール隊の乗る戦車はバリアを通過したが、他の戦車のほとんどは足止めされている。
「一番乗りだね」
「よし!止めろ!」
「止めろ!」
ある程度悍ましい聖霊カストゥスに近づいた所で止めろと言われた戦車長は操縦士に戦車を止めさせる。
距離はまだあるが、十メートルもの目標なら命中させるのは困難ではない。
「停止射撃で確実に当てろ!戦車は俺達が死守する!」
「了解!」
戦車はいざという時の移動も考えて車体前方を右に向け、砲塔を回転させる。
重量兵の内二人は戦車前方側、残った重量兵とロゼールとリドルは戦車後方側に立つ。
「射撃開始!」




