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ミリタリー&モンスター  作者: 鮬男
無貌の片鱗
20/24

悍ましい聖霊カストゥス

同じ単語が何度も出てきます申し訳ない

「始まったね」

「なんかおかしくないか?」


ルキウスの南側上空に黒い雲が現れると、そこから煙が落ちるように地面の上に漂い、それが次第にモンスターの形になる。

というのがM&Mのレイドボス出現演出なのだが、黒い雲から落ちてくる煙は異型のモンスターではなく人型になり、次第にその姿が露になる。

それはいかにも魔法使いといった風貌の青年であり、見た目は普通の人間だった。


「人型のレイドボスなんて珍しいな……お、通知きたぜ」


レイドボスは出現するとその名前が勝手に表示される。

本当に名前が出るだけなので非表示にしてるプレイヤーも多いが、右上の×をタッチするだけで消えるので表示しているプレイヤーもいる。


「”悍ましい聖霊カストゥス”?」

「あのイケメンが?どこがおぞまし――」


『ウァアァァァァアアァァァアァ!』


その場にいたプレイヤーだけでなく、現地人、鳥や虫さえもが聞き取った悲痛に満ちた叫び声。

直接脳に響いているかのように聞え、距離など関係なく響き渡る。

それは紛れもなくあの青年、悍ましい聖霊カストゥスが発していた。


「な、なんなんだよ?!」

「おい見ろ!」


誰かが声をあげ、その場にいた望遠鏡を持つ者全員が悍ましい聖霊カストゥスを見た。

彼の周囲には膿のようなものが溢れ、次第にそれが一つの塊となる。

全長十メートルほどの塊で、腐敗した数百人の人間の体を一度溶かして混ぜ合わせたように手足が飛び出している。


『アルアアアルアアァァァアァ!』


そしてその異型と化した悍ましい聖霊カストゥスの周囲に純白の発光が起こると、そこから大量のモンスターが現れた。

召喚されたモンスターはライオンの頭にトナカイの角、純白の羽毛が生えた体長ニメートルほどの人型。


「なんだありゃ?」

「見た事ねぇな、まあ聖獣の類だろうが」

「へっ、なんだって良いさ、俺らの敵ってことだ」

「おいお前ら、司令から無駄撃ちしなければ発砲しても良いってよ」


そう言われた男達は手元の機関銃を聖獣型モンスターに照準を合わせた。

丁度その時、少し離れた場所に見えるT-26軽戦車が悍ましい聖霊カストゥスに向かって発砲した。


「おっ、いーぞー」


巨体で止まっているとはいえ、それなりに離れている目標に一発目から確実に狙うのは砲手の技量が見て取れる。


「よっし……あれ?」


しかしその砲弾は命中する前に砕け散った。

周囲にはまるで透明な壁があるかのように、全てのプレイヤーの砲撃や射撃は一切届かなかった。


「なんだ?バリアかよ」

「こんな技を使うレイドボスがいるなんてな」


そして悍ましい聖霊カストゥスから巨大な青白い光の槍が放たれ、放物線軌道を描いてT-26軽戦車に命中した。

槍は布に針を通すように軽戦車を簡単に貫いており、命中した箇所が熱によって変色し始めていた。


「すげえ威力だ……司令にT-26を貫通したと報告を頼む」

「了解」




一方最前線にいるリドルとロゼールは命令があるまで待機して様子を見ていた。


「砲撃も銃撃もバリアで防がれて、大量の聖獣モンスターを召喚、おまけに戦車を貫通する曲射攻撃か……」

「厄介だけど、今のところ対空攻撃がないからマシかな?まあ航空機の攻撃は届かないけどね」


航空機からの観測ではバリアは悍ましい聖霊カストゥスを中心に二百メートルほどの範囲で広がっている。


「あっ、効果範囲が二百メートル以上の爆弾でも落とせばいいんじゃない?」

「んなもんはどうせ制限かかってますよ」

「だよねー……ん?おっ、エカルラート隊だ」


迫ってくる聖獣モンスターの迎撃は他の機関銃部隊が十字砲火で蹴散らしているため、今現在の二人はやることがない。

なので会話をしながら待機していると、後方から数十人のプレイヤー達が近づいて来るのが見えた。

そのプレイヤー達は皆が銃器を所持しておらず、剣や槍などの近接武器を装備している。


「エカルラート隊!発進!」


先頭のクリーム色と黒の甲冑を装備したプレイヤーの掛け声に合わせて、ラッパの音と共に突撃して行った。

彼らエカルラート隊は銃器でモンスターと戦うM&Mであえて近接武器だけで戦っているロマン極振りのギルドである。

刀剣類でモンスターと攻城戦などを行うゲームも存在しているのにあえてM&Mで戦う理由は、銃器での戦闘を想定してあるため強いモンスターが多いというものだった。


「痛みをモロに感じるってのによくやりますね、あの連中は」

「楽しそうだね、馬には乗らないのかな」

「『置いて行くから好きに使っていただいて結構です』だそうですよ」


エカルラート隊はレイドイベントが開始するまでの間に馬や弾薬などを可能な限り運び、その後に玉砕するのがプレイスタイル。

レイドイベントの報酬の一部は貢献度で変化するので、死んでしまっても運んだ弾が使われればある程度報酬は貰える。

突撃して行ったエカルラート隊は機関銃の十字砲火に突っ込んで行く。

フレンドリーファイアは無効なので死にはしないが弾丸は命中する。

弾は当たるとかなり痛いがエカルラート隊には関係ない。

十字砲火地点を素早く通り抜けて行き、聖獣を無視して走り続けるが次第に数が減り、最後に残ったのは笠を被った侍風の服装になぜかファンタジー系ダブルブレードを持った男。


「おお!バリア通り抜けたよ!」


しかしバリアを通り抜けたところで聖獣の攻撃を受けて死亡した。


「あっちゃー残念、エカルラート隊全滅」

「しかしこれで確定しましたね、二百メートル以内に接近すれば攻撃できると」


召喚された聖獣モンスターはバリアの中から出てプレイヤー達の方へ走ってくるので、少なくとも歩行で通り抜けることはできる。

なので二百メートルのバリアを通り抜けて攻撃を行うことが有効であると誰もが予想したが、エカルラート隊の突撃で確信した。


「セスデクさんから連絡が入った、ロゼール隊に頼みたいそうだ」


伝令の者がそう言うと、リドルとロゼールはマスクとヘルメットを被った。


「へへっ、出番だね」

「はぁ、兄貴もダルバートさんもいないってのに野外戦か……」

「ダルバートさんならあそこにいるぞ」


伝令が指差した方向は後方にあるルキウスの城壁だった。

手を振り返すガスマスクとヘルメットを装備した者と、隣にいる学生帽と学生マントを身に着けた女が城壁からこちらを見下ろす。

リドルはその二人が何か会話をした後、上空を見上げているのに気がつく。


「おいおいマジかよ……」


悍ましい聖霊カストゥスは全身を巨大な手のように変形させ、周囲に召喚した聖獣モンスター数体を手に乗せて投擲していた。

緑がかった光を帯びた聖獣はその体格に見合わない速度でゆっくりと飛翔して行く。


「魔法で速度を落として落下ダメージを抑えるのかな」


城壁の上にいる何人かのプレイヤー達は既にその事態に気づき、飛翔する聖獣に銃撃を加える。

次第に多くのプレイヤーが気づき、銃撃が増えるが時既に遅く、いくつかのモンスターがルキウスの城壁を越えて行った。


「壁の内側にモンスターが……」

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