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ミリタリー&モンスター  作者: 鮬男
無貌の片鱗
12/24

海獣人

「それで?目的地はどんなところなの?」


アングルさんの情報が入ってからシトとスモアとシャルはヒャッハーズ!のメンバーであるレーラの運転するM3ハーフトラックの荷台に乗って南へ移動していた。


「アングルさんの撮った写真もらったよ」


私はポケットから取り出した写真をシャルに渡す。

その写真には海岸付近に密集している木造の家が複数、複数の小型の舟が鮮明に写っている。


「漁村?」

「みたいだね、小型のボートが陸に沢山置いてあるけど家が少ないからあんまり大きな村ではないのかも」


アングルさんのウェストランドワイバーンが時代制限に引っかからない範囲で捜索して複数の建造物が発見された。

西側にもいくつかあったが、私達が向かうのは南側の村。

人がいるかを確認し、いるなら友好的に接して情報を集め、無理なら逃げ帰る。

逃げる時は無線でアングルさんを含む航空部隊に連絡を、無線での連絡が不可能なら緑色のスモークを焚くことになっている。


「というかなんでシャルがいるんだよ」

「面白そうだから、私がいて嬉しいんだねわかるぅ」


正直にスモアが心配だって言えば良いのに。


「イチャついてるとこ悪いんだが到着だ」


レーラさんがトラックを止めてそう言うと、私達は荷台から降りる。

漁村まではまだそれなりの距離があるが、ここからは徒歩で移動する。

それなりに教養があるであろうウィルマも含めて現地人はあまりアウトサイダーのことを知らない。

せいぜい大きな音が出る槍を持っている程度の認識なので、得体の知れないアウトサイダーが車両に乗っていてはより警戒心を強めてしまうかもしれない。


「何かあったらフレアガンで知らせろよ」

「うん、じゃあねレーラさん」


緊急クエスト用ではなく普通の信号拳銃を全員が持ち歩いている。

これは緊急クエスト用の物と違って色の付いた煙が柱を作ってずっと残ったりはせず、二十秒ほど空中に留まる発煙弾を打ち出す。

航空部隊ではなくレーラさんに対して位置を教えるのに使用。


「そんじゃ出発、戦闘はスモアお願い」

「了解」


トラックから離れて漁村の方角へ歩く。

周辺は今まで見てきた平原とは違って砂が多くなり、まったくないわけではないが草が減って来ている。

海っぽい匂いが強くなり、辺りには岩が多い。

スモアが戦闘に立ちシャルとシトが後方から着いていく形で十分ほど歩くと遠くに漁村の建物が見えてきた。


「それじゃ私はこの辺りで見てるから、何かあったら左手を頭より上で時計回りに動かして」


そう言い残してシャルは銃を構えて岩場に隠れる。

もしもの時はシャルがここから援護をしてくれる手筈になっている。

ただし対象を殺してしまわないように威嚇用。

観測手スポッターとしてシトが残ろうと思ったシャルはいらないと言った。


まあ、シャルは狙撃手スナイパーというより選抜射手マークスマンの方が近いしね。


「お喋りは任せて良いんだよな?」

「うん」


現地人との会話は主に私が担当することいになった。

ある程度漁村に近寄ると、こちらに気づいた住人が慌しく走り出した。


「ここでちょっと待とう」

「ああ」


向こうからこっちに来るのを待つ。

慌てているところで近寄ったら攻撃の意思があると勘違いされるかもしれない。

それなら相手が武装を整えるまで待った方が「攻撃できたのにしなかった」みたいな感じに思ってくれることを期待しての行動だ。


「なぁあれって海獣人じゃないか?」

「んん?……ほんとだ」


海獣人、クジラ類などに似た皮膚やヒレを持つ人型の種族であり、M&Mにもこの種族を選んでいるプレイヤーは多い。

M&Mに限らずVRゲームのアバターは人間とかけ離れた種族が好まれている。

自分がキャラクターの視線になりキャラクターを動かすという感覚から、他のプレイヤーに「そういう姿がお前の理想か」みたいな事を思われたくないという心理があるためである。


「こっち来たけど……あんまり多くないね」


銛や短剣であろう物を持ったシャチ系の海獣人およそ七人が近寄って来る。

皆シトのように白目の部分が黒くなっており、瞳は青緑色。

頭髪はなく頭部にはヒレが髪のように垂れており、肌は光沢を感じさせるツルツルとしている。

服装は全員がチュニックに近く、麻や皮革のようなもので出来ている。


「お前達は何者じゃ?!」


初っ端から警戒心というか敵意がある。


「私達はアウトサイダーってやつなんですけど」

「あ、アウトサイダー……本物か?」


高齢であろう声の海獣人はやはりアウトサイダーという単語は知っているらしい。


「どうやって証明したら良いでしょうか?」

「証明と言っても……確かに我々の言語を流暢に喋っておるが……」


本来であれば難解な言語なのかな。

自動翻訳が働いているということは彼らは私達のいた世界に存在している言語を話しているってこと?


「アウトサイダーというのは全て人間種だと聞くがお前さんは人間じゃあないじゃろう?」

「いや私は人間……じゃなかった、今は人間じゃないですね」


自分でもどうやって会話を持っていったら良いかわらかず沈黙が続く。


「うーん……悪い奴らじゃなさ――」

「うぉぉぉぉ!」


高齢の海獣人が何かを言いかけたその時、大声を上げながら――人間を基準に考えれば――少年らしき海獣人が銛を投げた。

私は拳銃に手をかけた時は既に投擲された銛がスモアに向かっていく。

だが次の瞬間その場にいた誰もが驚いた。


「おっと、撃つなよシト」


スモアはなんと投げられた銛から体を逸らしつつ空中の銛をキャッチした。

手に持った銛を地面に突き立てて私に撃つなと言ってくる。


「なっ、俺の銛が――」

「スドパ!お前はなんてことを!お赦しください!」


女性の海獣人が銛を投げた少年の頭を叩いてスモアに謝る。


「いや、気にしないで」


スモアは銛を投げられて危うく怪我をするところだったにも関わらず落ち着いている。

女性はスモアの気が変わって攻撃されるのを危惧したのか、スドパという少年を連れてどこかへ行ってしまった。


「も、申し訳ない!なんとお詫びをしたら……」


私はチャンスだと思って高齢の海獣人に話しかける。


「えーっと、それじゃあ村で少し休まさしてもらっても良いでしょうか?ずっと歩いていたもので疲れているんです」


嘘だけど。


「それはもちろんいいですとも!お前達は仕事に戻るんじゃ」

「で、ですが村長お一人では――」

「いいから!」


どうやらこの高齢の海獣人は村長らしい。

村人達は村長を一人にしたら私達に襲われないか心配のようだ。

村長もおそらくそれを理解した上で一人で良いと言っている。

こちらを信頼するという意思表示なのだろうか。


「ワシはポーダインと申します」

「シトです、敬語じゃなくて結構ですよ」

「スモアだ、よろしく」

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