報告
しばらく戦闘はありません。
つまり自分的には苦戦すると言うことです。
ダミアン率いる王国騎士団が到着し、王都は完全に王国の支配下に戻った。
一度ダミアンからホットラインでの報告があったため、王都奪還の事は、既にダミアンに知らされていた。
「エバートン殿、ヒデキ殿!!王都奪還ありがとう御座います!!それにしてもさすがですね!!この短期間で王都奪還を果たされるとは!!」
ダミアンの賞賛の声を貰い、王都警備の引き継ぎをエバートンが説明している。
「居住区の住民は全員無事です。王城の壁と天井に穴が開いている以外は、ほぼ損害はありません。国王陛下のご帰還までには、補修も完成するでしょう。王国騎士団も徐々に戻って来ます。それまで王都の警護を頼みましたぞ!!」
「勿論です!!この命にかえましても!!」
ダミアンがエバートンに宣誓している。
彼は国王陛下が王都へ帰還したら、どうするのだろう?
ブルネルでのダンジョン攻略戦では、大隊を失う失態を犯したが、今回の働きは素晴らしかった。
失われた命は帰って来ないが、王国騎士団にいる以上は皆覚悟の上だろう。
彼の今後のことを知りたかったが、俺は聞くことは出来なかった。
ダミアンとエバートンの打ち合わせも終り、俺達はブルネルへと帰還する。
翼竜を召還し、ブルネルからのメンバーは全員翼竜の背に乗り込んだ。
「では!!ダミアン殿!!またお会いしましょうぞ!!」
「はっ!!必ずや!!ヒデキ殿!!セルゲイ殿!!お達者で!!」
「ダミアンも達者でやれよ!!」
セルゲイの大きな声と供に、翼竜は飛翔した。
ぐんぐん上昇し、ブルネルへ向かう。
防御結界を張り、最高速度で飛ぶように命じる。
休息を取らずに、飛び続けたら陽が登る頃にブルネルの街が見えて来た。
とんでもない速度で飛んでいたことが如実に分かる。
ガウラン辺境伯邸の前に着陸して、皆屋敷に入り朝食を用意してもらった。
朝食後、国王陛下と謁見して王都奪還、帝国の全面撤退の報告をした。
国王陛下一行の王都帰還は、王城の補修が完成する2ヵ月後を目処にすること事となった。
報酬は国王陛下が王都帰還後、祝勝式典で支払われるそうだ。
式典とか面倒なだけだが、さすがに断れない。
国王陛下との謁見の後、冒険者3チームは解散、各々帰宅して行った。
皆が帰ったところで、エバートンとガウラン辺境伯へ報告に行く。
「王都奪還、ご苦労であった」
「いえ・・・先のダンジョン攻略に比べれば、さしたる苦労はありませんでした。それより辺境伯に許可をいただきたい旨があります」
「何だ?」
「今回、帝国の王都侵略を担っていた男が、ヒデキ殿と同郷でして、ヒデキ殿とはまた違った力を持っておりました」
「ほう!!ヒデキ殿と同郷!?」
ガウラン辺境伯が身を乗り出して来た。
「で、違った力とは?人工的なドラゴンやアイアンゴーレムを造る技術です。他にも私の『観察眼』を場所の移動はできませんが、固定した位置で、誰でも見ることができる技術も持っておりました」
「何?誰にでもだと!?すると、あらゆる場所を常に見張れると言うことか?」
「はい!!指定した場所に、術式を組み込んだ魔石さえおいておけば・・・ですが」
ガウラン辺境伯の目がギラリと光る。
さらに拳を握り締め。
「その技術、我が物にすることが出来るか?」
「出来ます!!すでに研究材料の提供は受けました。それは問題ありません。私が許可を頂きたいのは、その先です。この技術を作り出した男・・・ミタと言うのですが、お互いに同盟を結び、知識の相互提供をしたいと申し出ております」
「知識の相互提供か・・・」
喜色満面だったガウラン辺境伯の顔が、曇る。
「私の魔法陣術式の一部とヒデキ殿の魔法陣の一部を提供しようと思います。その許可をいただきたいのです」
「うーむ・・・」
即断即決が持ち味のガウラン辺境伯が唸り悩んでいる。
これはレアな光景だな・・・
「もちろん「転移魔法陣」「ホットライン」「連続6大魔法」他、絶対秘匿するべき知識は与えません。それ以外ならば、必ずや我ブルネルの利のほうが大きいと断言します」
「うむむむ・・・うん!!エバートン!!貴殿がそこまで言うならば、許可をしよう!!」
「有難う御座います!!さらにうまく行けば、ミタを我陣営に引き入れることが出来るかも知れません!!」
「何だと!?それは本当か?」
「はい、ミタと話したところ、帝国に対して忠誠心はありませんでした。あの男は自分の研究心さえ満たされれば、どこに自分がいようが、構わないのです」
「ほう・・・ヒデキ殿はミタとか言う男と同郷とか?ミタと言う男は、エバートンの言うような男なのか?」
おっと、いきなりお鉢が回ってきたぞ。
「はい、あの男は典型的な科学者・・・いやこちらでは錬金術師です。研究が全てであり、国など、どうでも良いのです!!」
「なるほど!!錬金術師か!!良い例えだ!!ではミタを我陣営に引き込めるなら、多少の知識の漏洩は許可しよう!!」
「はっ!かなりの確率で、ミタを我陣営に引き込んで見せます!!」
「うむ、雑事が無ければ、早急に行動に移せ!!情報に制限はかけるが、金に糸目はつけん!!」
「畏まりました!!それでは、早速行動へ移ります」
「期待しているぞ!!」
ガウラン辺境伯の大声に送られて、屋敷を後にした。
エバートン、俺、エリーでエバートン邸へと向かう。
「今日はゆっくり休んで下さい。明日にメンバーを選び、帝国へ行きましょう」
「ミタから提供された物の研究は良いのですか?」
「それもミタを引き込んだ後のほうが、捗ります」
「ああ・・・確かにそうですね」
「ヒデキ殿の方で、ミタが興味を持ちそうな物が何か分かりますか?」
「確実ではありませんが、いくつか用意できると思います」
「おお!!それは有難い」
エバートン邸について、夕食まで自室で過ごす事にした。
久しぶりにゆっくりと出来る。
クロエが入れてくれたお茶を、エリーと2人で飲んで和む。
「ヒデキ様、今度は帝国へ行くのですか?」
「そうなるな」
「あのミタと言う男、信用できるのでしょうか?」
「出来ないよ!!」
「ええっ!?」
俺がきっぱりと言ったので、エリーは驚いた。
「あの男に忠義とか信用とかそんな概念はないよ。あるのは探究心だけ」
「先ほどもエバートン様がそうおっしゃっていましたが、人ってそこまで割り切れるものなのですか?」
「科学者、錬金術師の事だが、中には、ああいうタイプが稀にいるのさ」
「そうなのですか?危険ではありませんか?」
エリーが心配そうな瞳で俺を見つめる。
俺はエリーの頬に手をやって、ゆっくりと撫でた。
「心配するな。ミタは俺と同じ日本人で、科学者だ。策謀には長けていない」
「でも・・・」
エリーは俺の手を握り直して、まだ心配気だ。
俺は黙ってエリーの手を握り返した。
「いざとなれば、俺の6大魔法も、切り札のエリーもいるじゃないか!だからもう心配するな!!」
「そうですね!!私がいます。必ずヒデキ様をお助けします!!」
「頼んだぞ!!」
本当に今日は、ゆっくり出来そうだ。
― ― ―
翌日の午後
ガウラン辺境伯邸 転移の間
ミタとの交渉に向うためのメンバーが集合していた。
エバートン、俺、エリー、ベルタの4人だ。
「これから、帝都へと向います。正式な訪問ではなく、あくまでも非公式に行動しますので、
そのつもりでお願いします」
「国境ではなく、帝都に直接乗り込むのですか?」
「もちろんです。案内人も待機していますので、ご心配なく」
「はあ・・・」
てっきり国境に転移するものだと思っていたので、驚いてしまった。
心の準備が整う前に、エバートンは魔法陣へと歩を進めるのだった。
明日も投稿予定です。




