ミタとの密約
今日もなんとか投稿できました。
評価していただいてありがとうございます。
俺と帝国科学者(錬金術師)ミタとの一騎打ちで、帝国の侵略戦争は終了した。
封印していた6大魔法の一つη(イータ)を使って、俺と同じ地球から来たロボット工学者のミタが開発した合体ロボットを屠ったのだ。
一騎打ちの取り決めで、俺が勝った場合は、帝国軍は王国より全面撤退。
王都居住区の住人を解放するのを条件に、侵略戦争の賠償はなし。
帝国が一騎打ちの取り決めを破ったら?と、エバートンに聞いてみたのだが、一騎打ちの際に、お互いの代表者が誓約書に署名して制約が破られると、署名した者は絶命する呪いがかかるそうだ。
魔法の世界ならではの誓約書である。
「皇帝陛下にどう言い訳をすれば良いのか・・・」
ハンスが頭を抱えている。
「心配せずとも、全て私が責任を取る。ムカイ不在で王国を攻めたが、王国にはムカイを遥かに上回る魔術師がいたと、報告しておく」
「ミタ殿は同行されないのですか?」
「私は帝国と王国の今後の関係をエバートンとヒデキ殿とで話し合ってから、帰国する」
「またそのような勝手なことを!!」
「今ここで話し合っておかねば、帝国は王国に滅ぼされることになる。それでもよろしいか?」
「そ、それは・・・」
「何、私にはドラゴンがいる。話が終わればすぐに発つ。私の方が早く帰国できる。」
「わ、わかりました」
ミタの言葉に最後はハンスが折れた。
ハンスは帝国兵とゴーレムをまとめ、帰国の準備を整えた。
王国各都市を攻めている帝国兵にも撤退の伝令が出されている。
帝国の侵略戦争はここに完全に終結した。
俺とエリー、エバートンはミタと供に玉座の間に戻った。
護衛として親衛隊の2人とデトレフさんがついている。
冒険者3パーティは王都居住区へ行き帝国が撤退した事を伝え、ダミアン率いる王国騎士団が到着するまで警備の任務についた。
「エバートン殿を倒せば、私がこの世界でただ1人の天才になれると思っていたが、なかなか旨くいかないものです」
「ムカイが引退・・・まるで入れ替わるようにヒデキ殿の出現。帝国はミタ殿の出現・・・ブルネルで上位魔族の出現・・・なにか大きな時代の節目が来ているのかも知れませんな」
「ここにいるエバートン殿、ヒデキ殿、護衛の3人、本音で話せる面子という認識でよろしいか?」
「その通り、護衛の2人はガウラン親衛隊。デトレフ殿も懇意の関係です。何を話しても他に漏れるような事はありません」
ミタとエバートンが何やら不穏な事を言っている。
「エバートン殿もご存知の通り、私はヒデキ殿と同じ世界からやって来ました。往来で人にぶつかり、気がついたら帝国軍教練所のど真ん中。ヒデキ殿も同じような境遇ですか?」
「俺はサテラ草原のど真ん中でした。そこからブルネルに出て、冒険者になり、今はガウラン辺境伯と王国の依頼で、動いています」
「ヒデキ殿に寄り添っている女性は我々と同じ世界から来られたのではないのですか?」
「違います、こちらでヒデキ様と出会い妻となりました」
エリーはいつも通りマイペースだ。
「ほう・・・色々と事情がありそうですな」
「その辺は今後の我々との関係次第では、分かるかも知れません」
「その関係ですが、王国と帝国は今後同盟関係を結ぶべきだと思いますが・・・」
「王国に攻め込んでおきながら、ずいぶん虫の良い話をしてますな?」
エバートンとミタの話にデトレフさんが割り込んだ。
デトレフさんが言うことは尤もである。
尤もなのだが、ミタの言動を見るに典型的な学者タイプだ。
普通の倫理観が通用するとは思えない。
「帝国に拾ってもらった義理もありましたし、魔法と私の知識の相性が良かったので、地球では、不可能だった事が可能になったので、色々試したかったのですよ。エバートン殿なら、私の知識がどれほど貴国に対して有用か?お分かりでしょう?」
「ミタ殿が言いたいことは良く分かりました。ですが、国王は帝国との同盟は良しとしますまい」
ミタの提案にエバートンは否定的な返事を返す。
「そうですか・・・エバートン殿の口添えでも無理ですか?」
「私はブルネルのガウラン辺境伯に仕えている身であって、国王へ進言する権限はありません。ですが・・・ガウラン辺境伯には進言できます。それで妥協しませんか?」
「なるほど!エバートン殿とヒデキ殿がブルネル領に留まるのでしたら、それで構いませんよ。私の知識と技術を提供しますから、魔法陣とヒデキ殿の力の正体を教えていただけますか?スマホをどうのように使っているのか詳しく知りたいのです」
「いいでしょう。ガウラン辺境伯の許可が出たら、という条件で、貴殿の希望に沿いましょう。ブルネルに引き上げてから、改めて連絡を取り合いましょう」
「連絡の方法は?」
「密偵を使います」
「では、吉報をお待ちしております。ここで使っていた技術は、私の提案を受け入れていただいたお礼に置いて行きます。どうぞ役立てて下さい」
「ガウラン辺境伯が許可を出さなければ、提供損になりますよ」
「構いませんよ。ヒデキ殿ならお分かりでしょうが、私の知識はこの程度のもではありませんから」
「あなたがロボット工学を専攻していた科学者なら、そうでしょうね。俺もお願いしたいことがありますから、同盟が結ばれることを祈っていますよ」
「同郷同士、うまくやっていきたいものですな・・・長々申し訳ない。そろそろ帝国に戻らねば、約定に背いたと、判断されかねません」
ミタはメカドラゴンを呼び寄せ、その背に乗って、飛び立って行った。
「実に面白い。この世界・・・まだまだ研究する価値がありますね・・・エバートン、ヒデキ、そして私が協力すればこの世界の謎が・・・おっと、そろそろ皇帝補佐の顔に戻らねば・・・」
ミタは玉座に座ってハンスに命令していた時の顔に戻っていた。
― ― ―
帝国軍は退去し、王都の居住区も解放された。
王都とその周辺を占拠していたゴーレムの大群も全て帝国軍に付き従って、引き上げて行く。
エバートンはミタが玉座の間に残していった設備を調べ始めていた。
「これは・・・ヒデキ殿のスマホの画面に似ていますね。これを使って離れた所の映像を見ることが出来るわけですか・・・今見えている映像で一番遠いのは、王都の外周あたりでしょうか?これはもっと離れた所も見ることが可能ですね。素晴らしい!!この設備は急ぎ取り外して、ブルネルへ持って返らねば・・・」
監視カメラに関して、エバートンは全て持って帰るらしい。
「ヒデキ殿、これは見えている場所に何かを設置しているのですね?それを通してこちらで見ることが出来る。私が偵察に使った鳥の目を固定させたようなものでしょうか?」
「そうですね。多分ですが、玉座の間に仕掛けてあった顔認証結界の魔石でしょう」
「やはりそうですか・・・持ち帰るものは、この画面とアイアンゴーレム1体、なるべく損傷の少ないものが良いですね。運搬用の自動人形に背負わせましょう」
エバートンは簡単に言っているが、結構な大荷物になるだろう。
大丈夫なのだろうか?
エバートンは親衛隊とパワーボムに依頼して、玉座の間にあった設備を解体して、かなりコンパクトに荷造りさせた。
これならば、運べそうだ。
俺達はダミアン率いる王国騎士団の到着を待つだけになった。
エバートンは壊れたアイアンゴーレムを分解して、中の構造を熱心に調べている。
「なるほど、この線と所々にある魔石で動力を・・・実に面白い。ですが、量産できる仕掛けが分かりません。ミタにはこの辺りを聞かなければ、同盟の意味がありませんね。その前にガウラン辺境伯に進言して、交流の許可を得なければなりません!!」
「エバートン殿、そこまで帝国を信用して良いのでしょうか?」
デトレフさんが尤もな質問をする。
「帝国は信用していません。信用しているのは、ヒデキ殿と同郷のミタを信用しているだけです。あの男は帝国も王国も関係ありません。帝国への忠誠心もありません。あるのは探究心だけです。ああいう男は信用できます。後はお互いにどこまで情報を開示するのか?駆け引きですね」
「はあ・・・そういうものですか?帝国を信用していないのなら、それで構いませんが・・・」
帝国との関係は、そうそう良好にはなりそうもない。
俺は王国が他国に攻め込まなければ、それで良い。
早く平穏な日々になって欲しいものだ。
明日も投稿予定です。




