ベロベロや
その後、たわいもない話をいくつか交わしたところで
「キム、お前、そろそろ時間大丈夫なんか?」
「あ、そろそろバイト行ってきます」
「おう、おつかれ。また話そうなー」
と、ユーゴさんとのコラボが終わった。配信アプリでユーゴさんをフォローしてからアプリを閉じて漫画を読み始めた。
この1ヶ月、相当な数の漫画を読んだ。無料で読めるものだけでも相当な数がネット上に上がっている。元々好きだったヤンキー漫画に加え、バトル漫画、スポーツ漫画、恋愛漫画も読み漁った。高校生の時、漫画サイトはいくら時間があっても読みきれないと思っていたが、浪人生になると話が違った。
次にユーゴさんと話したのは、それから1週間後のことだった。この日、漫画サイトで3巻無料のバトル漫画を読んだ後、続きが気になって例の自転車で40分の古本屋に立ち読みに行っていた。
21:00ごろに家に帰り、スマホを開くと「ユーゴが配信を開始しました」とのアプリ通知が20分前に来ていた。通知を押すと自動でアプリが開き、ユーゴさんの配信に飛んだ。
ユーゴさんは酒を飲みながら話していて、閲覧者は僕を含めて4人だった。少ない視聴者はこの前と同じ連中のようだった。「ユーゴさん、久しぶりです」とコメントした。
「おお、キムだっけ?お前ちょっと、コラボこいや」
「いきなりですか!?」
コメントした。
「おう、はよ来いって」
途中で親が部屋に入ってこないよう、扉の前にサッカーボールを置いてロックした。通話ボタンを押す。また画面が切り替わった。この日はカメラをオンにして参加した。
「おう、キム、久しぶりやな」
「お久しぶりです」
「元気?」
「はい、相変わらずです。ユーゴさんは?」
「俺か?んー、ベロベロや」
「ベロベロ、、」
ユーゴさんは終始ニヤニヤしていた。
「ところでお前、彼女とかおんの?」
「え、、いや、、今はいませんけど」
「今はってなんやねん。じゃあ、いつだったらいたんや」
「えっと、、まー、中学生の時、、」
「はっはっはっはっはっはww」
ユーゴさんは以前にも増して海賊のような高笑いをした。
「キム、お前、童貞やろ!」
「ど、童貞!?いや、まあ、僕の歳だったら普通のことですよ」
「なわけあるかい!お前だけやで。きっと」
「そんなこと、、」
否定しかけたところで、自分が部屋で漫画を読んでいる間に友人たちは大学生活を楽しんでいるという事実を思い出し、自信がなくなってきた。
「ま、気にすんなって。お前、案外男前やから大丈夫やで」
「男前、、?ホントですか?」
「おう、けっこうモテるんとちゃうの。大学で」
大学、、。そういえば、大学生だと嘘をついていたのを思い出した。
「いやまあ、あんまりです。女子と接点がないというか」
「ほーん。そういえばさ、今週の日曜、東京のツレのとこいくんだけど、キム、東京に住んでるんだよな?」
「いえ。千葉です」
「同じようなもんやろ。夕方には終わるんやけど、お前空いてない?」
「え、まあ、たぶん空いてます」
浪人生の僕に予定などなかった。




