ユーゴさん
「お、なんやなんや」
コメント欄で僕が攻撃を受けているのに猿顔の配信者が気づいた。
「キム氏って誰やねん。初めて見たわ。自己紹介してや」
視聴者と配信者の注目が僕に集まっている。
「さっきのコメントはすみませんでした。煽ったわけじゃないんです。僕はキム氏って言います」
このコメントを打つまでに2分かかった。
僕がコメントを打つ間、配信者の男はおにぎりをもう一つ開封し、食べていた。
「おう。キム。まあそんなビビらんでええで。ちょっと話せる?コラボするか?」
コラボ、、?と思った。検索してみると、このアプリにはコラボ機能というのがあって、配信中に視聴者が配信者と通話できるようだ。
「すみません、もうすぐバイトに行かないとなんで」
コメントした。もちろん僕はバイトをしていない。
「逃げ乙ww」
「ビビってるだけだろw」
コメント欄がまた荒れる。
配信者の男にではなく、完全に安全な場所から石を投げてくる視聴者たちに腹が立った。
「まあ、5分くらいならコラボできます」
勢いでコメントした。
「おお、5分でええで。コラボきてくれや」
通話ボタンを押すと、画面が切り替わった。僕の顔と配信者の顔、コメント欄が写っている。自分の顔も映るとは思っておらず、思わずカメラを手で覆った。
「はっはっはっはw」
配信者の男はアニメに出てくる海賊のように豪快に笑った。
「コラボ、初めてなんか。それなのに来てくれてありがとうな。カメラのマークを押せばオフにできるで」
彼に言われるままにカメラをオフにした。
「なんかキム、お前若そうだな。高校生?」
「いや、大学生です」
咄嗟に嘘をついた。本当は浪人生だ。
「ええな、学生」
「Fランみたいな顔で草」
またコメントがきた
「ちょっとお前ら、ええ加減にせえよ。こうやってコラボに来てくれたんだからもうええやろ」
「方言強いですね。関西の方なんですか?」
「おう、わかるか?大阪生まれ大阪育ちや。けど、今は沼津住みやけど」
「沼津って静岡でしたっけ?」
「そうやで、キムはどこ住んどるん?」
「千葉です」
「ほーん。シティボーイやな」
「でも田舎の方なんですよ」
「千葉のどこ?私も千葉!笑」
コメントが来ていた。さっき「逃げ乙ww」とコメントしてきたやつだ。アイコンはアニメ画像だったが、女だったようだ。手のひらの返しように腹が立ったので、この女のコメントには反応しないことにした。
「そういえば、お名前はなんて言うんですか?」
「ユーザー名の通り、ユウゴやで」
「あ、ユーザー名、見てませんでした。ユーゴさんって呼ばせてもらいます」
「なんか発音変じゃね?」
僕は彼のことを「ユーゴさん」と呼んでいる。「京都産、富山産」と同じ発音だ。




