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ブラックよりのカプチーノ  作者: レア役ウマ太郎


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3/9

誓いのイオン

 イオンの最寄駅に着くと、池田はすでに改札口で待っていた。


「まずは受験お疲れ様」

 池田は清々しい顔だった。高校生活をほとんど野球に捧げ、高3の春、引退後に受験勉強を始めたと聞いていた。


「大学生みたいにカフェとか行っちゃう?」

「いや、俺たち浪人生だけどな!」

 池田のツッコミが刺さる。


 僕たちはイオンの1階のカフェに入った。カフェに入ったのはおそらく初めてで、何を注文したら良いかわからなかった。池田はブラックコーヒーのSサイズを注文していた。


「ご注文は何になさりますか?」

 店員に急かされる。レジの上にメニュー表があるため、迷うための時間がなかった。


「カプチーノのSサイズで」

 なんとなく目に入った中で甘そうな名前のものを注文した。390円を、100円玉2枚、50円玉3枚、10円玉4枚で払った。


 入り口付近の席に座ると、池田が話し出した。

「正直、木村が浪人するってインスタで知って驚いたわ」

「そうか?センター試験の時点でだいぶ諦めてたけどな」

「高2の時とか、成績良かったじゃん」

「あの時はねー」


 熱々のカプチーノを恐る恐る飲んだ。想像の5倍苦かった。途端に後悔に襲われた。高2までは良かった。最低限のテスト勉強もしていたし、周りよりもできる優越感が勉強のモチベーションとなっていた。


「池田はどうだったの?予備校も行って、頑張ってるって思ってたけど」

「俺はさすがに時間がなさすぎたわ。英語の長文が読めるようになってきたの、つい最近だし」


「時間がなかった」という言葉が、潤沢にあった時間を浪費し続けた僕に後悔を促した。


「池田はこれから予備校生活だよね。どんな感じなのかな?」

「高校みたいな時間割らしい。高校4年生きついわww 木村はどうするの?」

「予備校入りたいけど、金的にどうなるかわかんないわ」

「そっかー。予備校行けるんだったら俺の行ってるところ、オススメだよ」

「確かに!一緒に頑張りたいわ」


 池田はブラックコーヒーを自然に飲んでいる。

「インスタとか、これから見たくないよね」

 コーヒーを置いた池田が話す。

「わかる。大学の入学式の投稿とか、絶対見たくないわ」

「出家しようぜ!」

「出家!?」

「そう。インスタのフォロワーもLINEの友達も、ブロックしまくろう」


 馬鹿げた提案だったが、池田と一緒なら頑張れる気がした。何かが変わる気がした。


 インスタのフォロー欄を見て

「こいつ誰?」

「高1の時のクラスメイト」

「はい、ブロック〜ww」


 1時間が経つ頃には僕のインスタのフォロー、フォロワー欄は8人になっていた。LINEの友達は27人。グループからもたくさん抜けた。


「ってことで、浪人生活頑張りますかー」

 池田が立ち上がる用意を始めた。


 僕も冷めたカプチーノを一気に飲み干した。少しだけ甘かった。


 イオンの2階の本屋で現代文の参考書を買い、帰路につこうとしたところ、ゲームセンターが目に入った。


「浪人プリクラ、いっちゃいますか」

 プリクラなんて、普段では絶対に撮りたがらないであろう池田が言った。


 一人200円ずつプリクラ機に入れ、カメラを睨んだ写真を撮った。隣で池田が忍者のポーズをとっている。


「何それ?」

「俺たちはこれから浪忍。耐え忍ぶ生活だー」


 僕も忍者ポーズでカメラを睨んだ。落書きコーナーで「浪忍卍」と書き込んだ。


「じゃ、また近いうちに語ろうね!」

「おう!お互い頑張ろう!」


 池田と駅で別れた。家に着いた僕は下敷きにプリクラを貼って、買ったばかりの現代文の参考書を開いた。

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