浪人
駅まで一人で向かい、電車に乗った。合格発表サイトを再び開き、何かの間違いで実は合格していないかを確認した。後日繰り上げ合格なんてことはないのかと必死で検索したりもした。もちろん、全てダメだった。
合格している大学がゼロというわけではない。外国語学部があり、通学圏内というだけの理由で、受験科目以外何も調べることなく受けた大学には合格している。その私立大学の公式ページ初めて開いた。この大学が嫌なわけではないが、行きたくもなかった。
家の玄関を開けると、母が洗濯物を畳んでいた。
「ただいま」
「うん、おかえり」
母が合格発表サイトを見ていたのかはわからない。この会話だけで察してくれたのかもしれない。母は何も言わなかった。部屋に篭り、寝転がりながら大して好きでないアイドルの歌を聴いた。
高校生活での出来事が次々に思い出された。高校デビューしてやると意気込んでいた入学式。実行委員を引き受けたものの、計画性のなさで逆に人望を失った文化祭。挫折してやめた部活。下ネタで大笑いをとれた、修学旅行。どうしようもない3年間だった。
父が部屋に入ってきた。
「大学、どうするの?」
「いや、まあ、受かってるところに行こうかなって」
「そこに行きたいの?」
「そこしかないし」
「妥協するってこと?」
「、、、」
言葉にできない苛立ちで腹が痛くなった。
「別にいいじゃん。わからないくせに」
布団に潜り、会話を中断した。
翌朝、リビングには朝食が置いてあった。目玉焼きにベーコン、レタスにミニトマト。ミニトマトが好きな僕の皿には5個も乗っている。
「入学金の納入期限もあるから、大学のこと、今日までに決めるんだよ」
母に声をかけられた。
腹が空いておらず、ミニトマトだけを食べて部屋に戻った。「○○大学 偏差値」だの、「Fラン どこから」だのと、調べても意味のないと自分でもわかっていることを何度も調べた。
午後3時。ふと、ショウのことが気になった。
「ショウ、合格発表、どうだった?」
LINEを送った。
「俺は受かってたよ!木村はどうするの?」
「ショウ、マジすげーな!おめでとう!僕も浪人してショウと同じところを目指すわ!」
すぐに返信した。浪人するのか、僕。
インスタグラムを開くと、同級生たちが卒業式の写真をこぞって投稿している。黒板の前で撮ったカップルの写真も目に入った。僕は部屋で白目をむいて自撮りをし、「#春から浪人生」と投稿した。
「木村、マジ?俺も浪人だわ」
高2で同じクラスだった池田からDMがきた。
「池田も浪人か。予備校とかどうするの?」
「俺は今行ってるところの既卒生コースにするわ」
「マジか。僕、予備校とかあんまわかんないんだよな」
「今暇?ちょっと会わね?」
「暇!イオンにする?」
「OK」
学校の近くのイオンで待ち合わせをした。




