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95話:抜けない楔

昨日更新したかったのにムリダッタ・・・

暑かったし仕方ない(正当化)

亜矢視点。




「もしもしお母さん?」


「亜矢ね。進展あったのかしら?」


「進展かも分からないけど、蒼矢から伝えてって」


「彼から?何?」


「警察はこっちで動かすから情報統制は任せただって」


「・・・噓でしょ?止めなかったの!?」


「うん・・・」


「この馬鹿!!本当に警察なんて動かせる筈ないじゃない!!一人でそんな事出来る筈が無いわ!!今すぐ追いかけなさい!彼を殺したくなければ!」


「だって、色々話が進んじゃって気付いた時には伝えてって言われて行っちゃって・・・」


「まずいわね・・・良いわ。警察にはこっちから話をする。あんたは彼を止めに行きなさい。にしても、高1でしょ?なんでそんなカッコよすぎる事が出来るのよ・・・旦那なんかよりずっと・・・とにかく任せたわよ!?」


そう言って電話は切られた。


そして今になって彼女は後悔した。


「そっか、私たちを安心させるために・・・行かなきゃ!」


私は体育館には戻らず、そのまま外を走り出した。























「まさか、取調受けた時のが生きるとはね」


あれから俺は警察への連絡を終えて体育館に戻っている。余程俺のご機嫌取りでもしたいのか、今から準備したとしても40分後に着けるかどうかとすぐに準備を始めてくれた。今回は俺が捕まらずに奴らを叩きのめす作戦だからそのくらいに着ける(衝突自体はもう少し早めに)予定で行く。願わくば、ガラの悪い奴らに無謀な正義感で挑む馬鹿な善人がいない事を祈るだけだ。


「しかし、いきなり連絡しても動いてくれるとはな。しがない高1の戯言で済むだろうに。今回は相手が相手。事後処理だけすれば良いならお安いんだろうが・・・こりゃ誰かの手回しでもあったと見るべきだな」


てなわけでとりあえずは始業式出て終わり次第すっ飛んでいく事にした。焦っても仕方ない。最近の極道は相手の承諾も無しに手は出さないだろうと思う。力任せに何かをやろうなんてはしない人達も増えたと聞いている。ま、朝っぱらから脅しかけるような勢力じゃそこまで考えてんのかすら分からないが。


「はぁ・・・ま、自分から買って出た仕事。血は流しすぎない程度に頑張りますかね」


「なに独り言言ってんだ?」


「お?ベラじゃん。どうした?」


「必要かと思ってな。そのやくざ?とやらについて軽くは調べといたぞ」


「・・・めっちゃありがた」


「まずだが今回は星連会とやらのわか・・あたま?」


「あー若頭ね」


「そうそうそれ。その大谷ってのが指揮しているらしい」


「・・・それが本当だとするなら・・・いや、なんでもない。情報助かった。まだ何かあったら念話で頼む」


「はいよ」


俺は走り出す。こうしちゃいられない。今すぐに協力を仰がなきゃいけない。今やこの国最大の能力者集団である土師に。


もっと早くその可能性を考えるべきだった。勇者をやめたとは言っても俺はやめられないかもしれない。


まずは安全の確保だ。


























「あ、帰ってきた」


「悪い。待たせた。あとどれくらいで始業式始まる?」


「あと4分だけど」


「そうか・・・相楽、堂本。ちっと来てくれ」


「さっきの件?」


「ああ」


そのまま詩歌の耳元に顔を近づけ


「それと詩歌。探知頼んだ」


「分かったわ」


そう言って俺達は外に出る。


そして事情を話すと


「なるほど。つまりお館様に協力を仰ぎたいと」


「ああ。土師なら国内の極道勢力はどうにか出来るだろう?」


「出来るだろうけど・・・そのくらいなら蒼矢が乗り込んで壊滅させた方が良いんじゃない?」


「いや、まあそこは俺が協力を仰ぐ時点で察してくれ」


「つまり、裏で誰かが糸を引いている・・・と?」


「まあな。それも国家を動かす程の何かと俺は見てる」


「そういう事だから我々が取り込まれる前に味方にしようと」


「はい。そうです」


「・・・とりあえず聞いてみるわ。忍。この話をお館様へ」


「直ちに」


木の上にいた忍に命令を出す。一般人じゃ気付けないだろう。凄まじい練度だ。


「それにしても・・・とんでもない物に手出したわね。家族が危険だからちゃんと守りなさいよ?」


「言われなくとも。もう手は打ってある」


「流石ね。はぁ・・・どうしてこんな無茶するのかな・・・そこがカッコいいんだけど(ボソッ)」


「時間だ。二人共戻るぞ」


そう言って相楽と堂本は歩いていく。


「女の子って・・・肝座ってんな」


そう呟いて後を追いかけた。


























「ええ・・・本日は快晴で新学期の始まりには素晴らしい陽気です。さて、みんな無事に揃いまして・・・」


クソダル。てか、伊藤来てないんだから無事なわけないだろ。ま、伝えないのは大正解だけども。


こんな睡眠導入剤を耳から摂取するくらいなら竹刀でも振ってた方がマシだ。言っても住宅街だから流石にスーパードンパチタイムは始まらないだろう。


不安は尽きないがやるしかない。ほら、暗殺者13人に囲まれたあの時よりはマシだ。大丈夫。


あの時程のプレッシャーじゃない。仮に500いた所で一人一人が雑魚なら烏合の衆。軽く対処できる。


俺クラスだと100の兵隊より1の剣豪の方がヤバい。油断するとたまに1発は貰うけども。


今回ばかりは期待しよう。現実ってのは大して面白くない事ばかり。だから今回も単純に取り立てに来ただけ。そんなつまらない展開になる。そう信じよう。


例え、普段表に出てこないNo.2が出てくるとかいう異常事態だとしても。


























「それではこれにて始業式を終了します。生徒の皆さんは後ろの方からお戻りください」


その声が聞こえたと同時に燐子先生のもとへ向かう。


「先生」


「・・・ああ。行ってこい」


「はい」


そのまま外へ向かう。他の教師は何のことか分からないようだった。


「桐生、頼んだぞ」


他人には聞こえないようにその背中に言葉を贈った。


























「ふん、しかしまあ俺を寄越すとは、親父はこの一件どうやっても物にしたいらしいな」


「カシラそろそろお時間です」


「そんじゃ、きっちり仕事すっかな」


俺、大谷はそのまま車を降りる。10人しか兵隊はいないがまあこんな寂れた場所の地上げなら楽勝だろう。親父がなんでここに執着すんのかは知らねえが、俺がのし上がる為にも今は大人しく聞いておこう。


予め何人かに話を付けさせに行かせてる。そんで心が折れた所に若頭の顔がいかつい俺がいりゃー、仕事人って意識もって働いてくれるだろうよ。


最近じゃ女の権利向上とかで水商売する女も減ってきてる。丁度いい機会だ。娘の方も仲間入りさせるとすっか。俺達のシノギに役立ってもらうぜ。




「よお、美奈ちゃん」


「ヒッ、だ・・・だれ?」


「まあ知らないのは当然なんだが・・・初対面の、しかも年上にどちら様ですか?じゃないのは褒められないなぁ・・・おいお前、父親としての教育出来てねえじゃねえかよ。あ゛?」


「すいません!不出来な娘で」


「てめぇ・・・自分の無能を娘のせいにしてんじゃねえよ!!」


父親の顔に拳を入れる。流石にこの親父はひでえ。同情しちまう。ヤクザから金借りて家族を軽く見捨てるなんざ。しかも他人のせいに平気でするしよ。ヤクザが言うなとか言われるかもしれんがヤクザは基本仲間には優しい。気に入った奴を無駄に見捨てたりはしねえ。案外義理人情のある奴が多い。人を殴るために、悪事の為に入る奴は少数派だ。


中には全うに働いてたのに出世競争でありもしない事を流布され蹴落とされたせいで歪んでヤクザになる奴もいる。ま、全うに過ごして少ない金で生きるより、ヤクザとして捕まるか捕まらないかのスリルの中で生きる方がよっぽど楽しいとか言い出す奴もいたしな。何せ、出世すりゃ億の金が手に入る世界だ。


光があるから影が出来る。闇があるから光は生まれ、影は生まれる。自分のくだらねえ出世欲の為に嘘ついて蹴落として成り上がるのは華の無い雑魚のやり方だ。本当の上に立つものはそれだけでなく、周りが何も言えねえ実績作って成り上がるもんだ。


俺は後者を目指す。腕っぷしは若いころに示した。だから俺は、これを成功させていずれ親父を超える。星連会はそこそこ大きい組織。だったら日本のテッペン目指してやる。


この父親はすすり泣くだけで何も出来やしねえ。まあ、ヤクザから金借りる時点でお察しだ。この嬢ちゃんには悪いが俺が成り上がる為の道具になってもらおう。ま、頑張ってくれりゃ10年もすりゃ自由になるかもな。


「そんで、美奈ちゃんは働く気になってくれたかい?お父さんの為に」


「ヒッ・・・は・・・はい」


「・・・・・おい、仕事の説明したの誰だ?」


「え?俺っすけど」


「里中、お前バカかよ。なんで怯えさせてんだ。怯えさせんのはそこで泣きじゃくってるゴミだけで良いんだよ。そう思わねえか?」


「すみません・・・学校行きたいとか言うから行けるわけないって怒鳴っちまって」


「全く・・・お前みたいなやり方だからソープに送っても評判上がらねえんだよ。良いか?金の為に全力で奉仕するって気持ちにさせなきゃ。怒鳴ったのは悪かった。が、学校は無理だ。そこは諦めてくれ。な?」


「・・・」


へへへ、もう堕ちるわこいつ。やっぱ修羅場潜り抜けてない奴はチョロいな。


なんて仕事終わりって思った時だった。






「お前らさ、俺のダチに何してくれてんの?」


一人の男が扉の所に立ってる。誰だこいつ?いつから・・・













そして俺はこの後後悔する事になるんだ。

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