92話:蒼矢と來妃
結構重要な回なので長くなりました。
夏休み最後の日はとにかく遊んだ。前楽しめなかったカラオケも颯斗と煉牙も呼んで10人以上で楽しんだ。途中女子がうっとりしてたが何故だろう。
その後はボウリング。スコアは3ゲームやってだいたい平均が180くらい。220超えるとプロらしいから極めてみようかなと思った。
そしてみんなと別れて風呂に入ってご飯も食べて夜。久しぶりにガチでネトゲでもしようかなと思った時だった。
「サ終・・・だと?」
すぐにメンバーからメッセージが来る。
「おい、まさか今回のイベントで終わりか?」
「ぽいよね」
「最近はみんなin率低かったし新しいので頑張る?」
皆早い。俺も負けじと会話に参加する。
「なら、探すか」
20分探して楽しそうなのを見つけたから潜ってみることにした。
一足早くゲーム世界にクロウの名で降り立っていた俺は少しだけ操作の確認をしておく。
「ふーん、キーボード操作とはいえ複雑じゃないからあの防衛線経験してれば上達は早いかもなぁ」
少し遊んでるとログイン出来たらしく通話開こうと言われる。
「よ、元気してるか?」
「まあな。あ、今回のプレイヤーネームはクロウなんでよろしく」
「俺も変えた。今度からはラグナロクさんと呼びたまえ」
「私はソーラーにしたわ」
「ラグナロクはヤバすぎじゃない?まあ私もアテナにしたんだけどさ・・・」
「お前ら中二病すぎじゃねw」
こんな会話をしながら操作に慣れていく。やっぱり全員が上手いだけあって1時間せずにレベリングは出来るレベルになった。
それから少し進めると
「へぇーギルドか。最大5人のプレイヤーで組めるんだな」
「後一人どうする?」
「誰か知人にプレイヤーいる人おる?」
「いや、いねえな」
「ま、焦らなくても良いんじゃね?まだ俺達も手探りなんだし」
今日はギルドを結成してお開きになった。時刻は21時。寝るには早すぎるが明日寝坊しない為にも23時には寝よう。さて、この後は何をするかな。
そんな時に扉をノックする音が聞こえた。
「詩歌だけど」
「どうぞ」
風呂からあがったままで来たようだ。思春期真っ只中の男なら期待してしまうような色気を出している。
「どうした?」
「さっきまでネトゲやってたの?」
「ああ」
「あのさ・・・私もやって良い?」
「良いけど、パソコンあったっけ?」
「実は・・・」
事情を聞くと、同じくネトゲーマーの颯斗に相談した所、捨てる予定のパソコンがあるらしいのでくれると言うのだ。
「じゃあ、今から受け取りに行くか」
「そうだね・・・って今から?」
「おうよ。ちっと連絡するわ」
颯斗からは家が分かるんなら良いけど、分かんないなら最寄り待ち合わせでって言われたから駅に向かうことにした。
颯斗の最寄りまでは歩いて50分近くかかる。という訳で俺は
「詩歌。空飛んでくぞ」
「何を言い出すかと思えば・・・見つかったら大変だよ?」
「そんなヘマはしないさ。それに、夏休み最終日の夜だし、空から夜の街を眺めるってのも良いだろ?」
「そうね・・・なら、連れてってくださる?」
「喜んで」
寝苦しい日が続く熱帯夜の季節でさえも少し空に行くと丁度いいくらいの気温になる。
「風が気持ちいいね」
「だな。しっかしネオンやら電気やら凄いのなんの。こりゃ綺麗だわ」
「・・・ありがとね。こんな景色を見せてくれて」
「どういたしまして」
そこからは会話が無くなる。今俺は詩歌を抱きかかえているような状態。多分恥ずかしいんだろう。耳が赤いから。
ゆっくり飛んでるから後10分はかかる。俺は、その10分をいつまでも味わっていたいとそう思った。
「随分早かったな。てか、二人で来たのか。偉いぞ蒼矢」
「まあな。女の子一人で夜道パソコン運ばせるようなゴミじゃないんでね」
「ま、良いや。そんじゃ行こうぜ」
「ああ」
警戒するに越したことはない。先程からこちらを覗く男3人の視線が分かる。はてさて狙いは詩歌かそれとも別なのか・・・
颯斗の家まで付いてくるならリッタに駆除よろしくとでも言おうと思ったがついてくる気配は無かったので武力行使に出ずには済みそうだ。
「悪い。ちっと待っててくれ持ってくるから」
そう言って家へと入っていく。それとは入違いざまに若い女性が出てくる。
「全く、あの子は・・・友達が来るなら言っといてくれればいいのに」
「申し遅れました。桐生蒼矢と申します。こちらは詩歌です。この度は私の方から急遽連絡をしたのでご迷惑をお掛けしてしまいましたすみません」
「あー、責めてるわけじゃないのよ颯斗を。それよりも随分しっかりとしているのね。・・・本当に高1?」
「アハハ・・・あ、そうだ。こちらささやかな品ではありますが、どうかお納めください」
「あらありがとね。あら美味しそうな羊羹だわ。お父さんが帰ってきたらいただくわね」
そう言って家の中へ戻っていく。
「ちょっとちょっと」
「うん?」
「あの羊羹どこで用意したのよ」
「ハダルに行くからお願い☆って頼んどいた」
「し、仕事はや・・・そしてその星は何?」
「触れないでくれ。ま、仕事はまだ終わってないけどな。とりあえずはさっさとパソコン受け取って帰るか」
「??うん」
それから2分くらいして颯斗がやってくる。
「待たせた。これだぜ」
「きにすんな。それよりありがとな」
「ま、お前ならパソコンの扱い分かるだろうし大丈夫だろ。そんじゃまた明日な」
「ああ。また明日」
そのまま駅とは反対の方へ歩き出す。
「おい、駅はそっちじゃねえぞ?」
「大丈夫。近道しってっから」
俺は詩歌の脳内に直接語り掛ける。
(大人しく付いてきてくれ)
(何か気になる事でも?)
(ああ、さっき羊羹渡した時に「父さんが帰ってきたら」って言ってたよな?時刻は9時半過ぎ。考えすぎかもしれないが駅の広場にあった血痕も気になる)
「なるほど。了解したわ」
「助かる」
そのまま人のいない場所へと移動する。
「そんじゃ探すわ。見張っといてくれ」
「うん」
(さて、颯斗に似た人を探すか)
前にも使った探知魔法で探す。すると
「これは・・・」
「どうしたの?」
「マズイことになったかもしれない・・・」
「え?なに?怖いんだけど」
「恐らくだけどさ、颯斗の父さん」
「うん」
「浮気中かもしれない」
「・・・・・・・・は?」
「遺伝子レベルでの解析もしてみたけどほぼ確定で良いと思う」
「ん?遺伝子レベル?そんな事まで出来るのね」
「ああ。俺この件は放っておくわ」
「そうね。それは触れちゃいけない問題ね」
「・・・帰るか」
「・・・うん」
気が付けば俺は変な空間にいた。
あの後パソコンのダメになりかけてた部品とかを修理して高グラフィックのにも耐えられるようにしてから寝たはずだったんだが・・・
「あら、目を覚ましたのね」
「あんたは・・・來妃の時の・・・」
「そう。お久しぶりね、勇者君」
「やめてくれ。勇者はもうやめたんだ」
「そう、ま、本題に入らせてもらうわ。あの子をを引き取りに来たの」
「あ?早くねえか?」
「そんなに睨まないでお姉さん怖いの嫌いだから」
・・・・・・・・・・キッツ。オカン、恥ずかしいからやめてよ・・・
「ちょっと?何よその目は」
「いや、妙齢にしか見えないけれどもどう考えてもお年を召された女性が発する言葉としては少し・・・ね?」
「しっつれいな!私は神としては若い方よ!?」
「どうでも良いや。そんで?何で來妃を引き取るんだ?」
「このガキンチョめ・・・短時間で貴方が來妃に多大な影響を与えたからよ。いや、与えすぎた」
「??正直構ってやれなかったんだが?」
「それでもよ。あんたとんでもない戦いしたでしょあれこっそりと彼女見ててね。彼女に必要だった最後のピースが揃ったの」
「ふーん・・・つまり元の鞘に戻すと」
「がっこう?とやらも始まるみたいだし丁度良いでしょ?」
「・・・そんなに引き取りたい理由があるんすね」
「・・・まあね。人間には分からない事情が私にはあるのよ。あの天災を育てきらなきゃいけない訳がね」
「なら、來妃が良いって言うなら良いと思いますよ。俺としてはまだお兄ちゃんとして色々関わりたいんで嫌ですけど」
「・・・そう。また会えるから今は私に返して?」
「返して?まるで來妃を自分の物みたいに言ってんな。なあ、來妃って結局なんなんだ?あの子は・・・一体何者なんだ?」
「君が自分を知った時知ることになる。大丈夫、彼女は君の味方さ」
「・・・つまり今はまだ知るなと?」
「知らない方が良い。君はこれを知ったらすぐに動いてしまうだろうから」
「來妃は知ってるのか?この事」
「話したよ。君達は似ている。お兄ちゃんが良いって言うなら構わないと言っていた」
「・・・そうか。俺じゃ預けられないって言いたいならどうぞご勝手に」
「良いんだな?本当に手放して」
「俺がどう言ったって連れてくんだろ?だったら自分を知る時とやらを待つよ」
「・・・イライラさせてくれる。知らないぞ?大切な何かを失う事になっても」
「黙れアバズレ」
思わず殺気を飛ばす
「な!?」
「イライラだ?先にイライラさせたのはてめえの方だろうが!随分と自分が上だなんて自覚をお持ちのようで。殺してやろうか?今ここで。あ゛?」
「殺す?出来るのか?お前に」
「少なくとも何でもかんでも隠し通したいクソ野郎くらいは捻り殺せるさ。それになんなんだ?連れていきたいって言う。來妃もそれで良いんだろ?なら何故イライラなんかすんだ?何がしたいのか分かんねえんだよオバハン」
「・・・チッ」
「俺は帰らせてもらう」
そう言うと蒼矢は消えていった。
一人残された空間でその女は立ち尽くす。
「なんで?・・・私ですら恐怖を覚えたあの殺気・・・この空間から自力で脱出?なんでそんな力があるなら一緒にいたいって言わないのよ・・・なんで手放そうとするの?貴方言ってたじゃない。この力は守りたい物を守るためだって・・・」
「ママ・・・泣いちゃダメ」
「あ・・・ごめんなさい。カッコ悪い所見せちゃったね」
「私だって悲しいの。お兄ちゃんなら一緒にいたいって言ってくれるって信じてたから。ねえ、なんで私とお兄ちゃんを引き離したの?」
「それは・・・」
「私ね?学んだの。例え言えない事だとしても言わなければいけない事は言うって。ママはそれしなかった」
「・・・」
「お兄ちゃんはね?優しいの。だから今回もその言えない何かを感じ取って身を引いたんだと思う」
「人をアバズレ呼ばわりする人間は優しくなんてないわ」
「そう。なら、そう呼ばせたママは最悪の人、いや神なんだね」
「え?」
「だってそうでしょ?お兄ちゃんに話す事も話さず、ママの望みを叶えるって言ったら今度はイライラする。地上の言い方で言うなら・・・ママはクズだよ」
「・・・」
「だから教えて。何で私達を引き離したの?」
「彼はね・・・神に気に入られてしまってるの。あの世界の神が尽力しているけどどうやっても止められない。でもね?神に対する切り札である貴女との絆は芽生えさせた。今度は力を付けさせたかったの。」
「・・・それは言えないね。お兄ちゃんがそんな事聞いたらすぐに力を付けようって頑張っちゃう」
「まだ・・・まだ彼に勘付かれる訳にはいかない。だって運命に抗おうとするなら」
「あらゆる神と戦うことになってしまうんだもの」




