88話:またな
活動報告にも書きますが遅くなっちゃいました。
神、魔王、龍王、九尾が空間の維持に奮闘している横では・・・
「おい!本気でヤバいぞ!足場がくっ、出来るたんびに消えてく」
「空を飛ぼうにもとんでもない暴風ですしね・・・叩きつけられてゲームオーバーというのがオチでしょう」
「とにかく耐えるしかないだろ!反撃に出るにしてもまずはこれを凌がなきゃ」
「こんな大技を撃ちながら次の魔法を準備しているのですね・・・我が主ながらヤバいお方です」
とにかく命の安全に全てを捧げなきゃいけない状況。この術者が只者でない事は知っていた。だが、想像を遥かに超える規模だった事に驚いていたのである。それもそうだろう。たったの数分で森の生い茂る大地へと変貌させようという魔法なのだから。
だがそれでも・・・
「4人なら破れる!」
そう言うとそれぞれが術の発動をする。
ベラは木を、ハダルは大気を、グロニスは大地の支配を・・・そしてリッタは
「とどけぇーーー!」
蒼矢めがけて突っ込む。流石の蒼矢もこれは想定外だったらしく
「は?え?向かってきてる!?うそでしょ?」
等と狼狽していた。この術の弱点は術の発動中は歩くくらいは出来ても戦うことは出来ないという点。つまり回避は出来るはずもなく
ゴチンッ
頭と頭がぶつかる音がした。
蒼矢が発動不可になり支配権を奪った3人の力で次第に元に戻っていく。
見えるようになった時には再び相対している状況だった。
「今すぐ止めてください!蒼矢が・・・息子が死んじゃう・・・」
「母君、あの者は魔王たる余が認める強者だ。そう心配せずとも」
「それでもケガしてほしくないの!」
「・・・なら何故最初に言わなかった?あなたも見たかったのであろう?息子の戦いを」
「・・・」
「止めないと決めたなら・・・最後の晴れ舞台くらい見守ってやるがよい」
魔王は思い返す。人とは過保護だとかつて友から聞いた言葉。本当にその通りだと思った。
自分も経験した。人間と共にかつては義賊のような事をやったこともある。だが自分が魔族だとバレた時、人々は口々にこう言った。
「あんた魅入られたんだわ。今すぐ司祭様にお祓いしてもらわなきゃ」
友はまるで狂人だと揶揄された。やった事と言えば村に被害を及ぼす害獣の退治や山賊を襲い、攫われた人間を助けたくらい。敵地での過ごし方としては不適切極まりないが間違っている事はしていないと胸を張っていた。友も薄汚い奴らと仕事をしなきゃいけないならお前とこうして遊んで暮らしていたいと言ってくれて嬉しかった。
だから自分から身を引いた。このままでは大切な人が危ないと思ったからだ。
でも・・・人はそれを疚しいことがあると見たのだった。
「お前は・・・進みたい道を進め・・・余の作った轍を辿ってはならぬぞ?その生に決して癒えぬ苦しみを抱えることになってしまうのだから」
「まさかこんな形で破られるとはな。仕切り直しになっちまったか」
「おいおい、まさかとは思うが呆気ない終わりを望んでたわけじゃないだろう?まだまだ私達は遊べるぜ?」
「さて、反撃と行きましょうか。風よ、吹きすさべ!」
「そんなそよ風で俺に勝つつもりか?舐めすぎだ」
「燃え尽きな!」
規則性のない風に火が乗る。
「これは危ないな・・・」
すぐさま回避するがいつの間にか移動していたリッタに気づく。
が、時すでに遅し。
「しまっ!」
「是非耐えてみせてください。あなたは永劫の混沌の中に」
蒼矢を暗闇が包む。その暗闇は本能的に触れたいとは思わないほどの不気味さと禍々しさを持っているように見える。
「上手くいったな」
「ま、隙さえあれば成功すると謳われた禁術ですしね」
「とはいえ、こんな程度でやられてくれるとは思えませんね。次の準備をしましょう」
「全く、かつて世界最強を殺した技でも次が必要とか我らのマスターはとんでもないな」
そこはどこまでも暗く冷たい場所。自分の熱がどこかへ消えてくような感覚がした。
それと同時に聞こえてくる声。
怨念、怨恨、嫉妬、怒り、困惑・・・様々な感情を孕んだその声達は俺に問いかける。
私は何故こんなにも辛いのだ?
そして俺に話しかける。
お前も辛いはずだ
何も見えない闇の中で俺は逆に問う。
「俺が辛かったら・・・なんだ?」
答えはすぐに帰ってくる。お前は仲間だと、私と同じ存在だと。
確かにそうかもしれない。俺だって辛いことはあった。勿論自分ではどうしようもない事ばかりだった。
世界は辛い。生きることは辛い。そんなの十分に知っているさ。もう人生で体験したくないほどに見てきた。その辛さで壊れた人も見た。助け合いを語りながら、自分が助けてもらっても恩人が助けを求めるときに見捨てるのが人の性。社会人になると良かれと思ってミスを教えると何故か怒られるそうだ。なんでも下だと思ってるやつにミスを指摘されたらイラつくしプライドは傷つくから怒られて当然なのだそうだ。
そのミスで傷ついてほしくないからと教えると恨まれる。若いというだけで正しい事を言うと生意気なガキなのだそうだ。冷静に考えれば自分が至らないだけなのに・・・そう、人とは不条理なのだ。正しく生きなさい。でも、正直には生きてはいけない。このクソみたいな常識を不条理、不完全と言わずしてなんと言うのか。
そうだろう?と声に問う。
そうだ。許せない。そんな声が返ってくる。
そうだろうなと俺は思う。
こんな馬鹿らしい事で悩めるなんて・・・なんて真面目なんだろうか。嫌なんだと嘆く。なら、逃げちまえば良い。でも、世間とか家族とかの視線が怖いからどうしてもやめられない。そうして壊れないようにしてきて最終的に壊れる。そして壊れたら・・・殺人鬼とか異常と言われる犯罪者かはたまた生気を失った廃人になってしまうのだ。
俺は真面目な人が救われる為に頑張ってきた。悪い事なんてしてない人ほど苦しみやすい世界を直したかった。他にも目的はあってもこれは大きかった。
かつてライラは言った。俺は誠実で真面目な人だと。そんな俺を・・・・・・好きだとも。俺は否定した。俺は自分のワガママを通しているだけ、隙あらばふざけたくなるし思い通りにしたくなる醜い人間だと。
それでもライラは・・・
「あなたたちは可哀想だな。その辛さをどうにも出来なかったのか。そりゃ呑まれるよな、その辛さをどうにかしてくれる相手がいなかったんだから。手を差し伸べてくれた人の心に応えられないほど壊れちまってたんだから。俺はそんなあなたたちに敬意を払うよ。自分を犠牲にしてでもその真面目さを貫いたあなた達を」
声はより一層五月蠅くなる。
「全く・・・俺は聖徳太子じゃないんだぞ。そんな一気に話しかけられても分からないよ。落ち着いて話してくれ」
声は止まない。増幅した感情は制止する術を知らないまるで赤ちゃんのようだった。
「ごめんな?俺が救いきれなかった人達もいるんだよな?恨んでくれていいよ。全員救うなんて無理だったんだ。神でもない俺では・・・無理だったんだ。歪に壊れてた俺じゃ無理だった。でもさ?同じように苦しんだあなたたちには褒めてほしいんだ。俺、まだ15歳なのにここまで頑張ったんだぜ?60超えてた国王と正々堂々やりあってたんだぜ?厳密にはもっと年とってたけどさ・・・俺は真面目じゃない。嫌な事はすぐ逃げ出す情けない奴だ」
そう言ってゆっくり起き上がる。
「見ていてくれ。壊れた俺がどこまで食らいつけるのか。この腐った大人の世界のフィールドでどれだけやれるのか。俺はまだ自分の足で歩きたい。だからあなたたちから逃げる。不真面目極まりない俺だから許してくれな?くたばった時にはあなた達の所に戻ると思うよ」
そう言って体に力を籠める。
「其は、常世に降る冀望の光」
暗闇の世界に亀裂が入りそこから光が差す。声の主たちを浄化する光だ。
俺は歩きだし振り返らずにこう言った。
「またな」
ここからまた頑張りますので応援よろしくお願いします!




