86話:戦いの始まり
家族に秘密を明かしてから数日、東雲とか学校の奴らとか、香坂とかと出掛けたりとかで忙しなく動き回っていた。何故だろう、皆妙に優しくて東雲はめっちゃ甘やかしてくる。正直いきなり変わられてもなんか不気味なだけなんだが。今迄みたいに自販機までパシらせるクソ女の名残も消えててSNSだったら即ブロ不可避。
そして夏休みの最終日の朝・・・俺は無人島にいた。何故ならば
「お、いたいた蒼矢君。それとみんなも」
転移する瞬間を市街地でやったら見られた時が危険だからこんな場所に集合している。リンからフィールドは準備出来たから夏休みの最終日にと言われていたからである。俺が夏休みを満喫する時間をくれる良い友達だ。
「ありがとうな」
「私達からも感謝を。リントヴルム様」
「リンで良いよ堅苦しいし。蒼矢君の使い魔だし敬語も遠慮もいらないよ?」
「・・・公の場以外ではリンと呼ばせていただきます」
「ねえ、話聞いてくれないんだけど・・・」
「一応リンは神様だし畏れ多いんじゃないの?」
「一応って・・・まあ良いや。それじゃ行こう、君達の闘技場へ」
光に包まれて目を開けると
「こ、これは・・・」
「魔領の闘技場?」
「を少し改造した感じだな」
リンが作った闘技場は凄い広大な敷地で、魔族達がコロシアムを開催する時に使われる建築をイメージしている。とは言え観客席らしきところにはドリンクバーはあるしこの場所って俺達だけの為にあるってのは嘘なのかな?
「嘘じゃないよ。蒼矢君の為さ。っとそろそろ来るかな?」
「ん?来るって?」
観客席の方が光に包まれる。そこには
「あ!蒼矢!」
「すっご~~い!広い」
姉貴に・・・伊藤?
「ほぉ・・・ここでやるのか」
「勇者が戦うのだ。もう少ししっかりとした作りでも良いと・・・余は思うがな」
「え?ムー?それにディール?え?なんでここに?」
「ん?当然であろう?人間唯一の龍王の盟友である主の晴れ舞台、見に来るに決まっておろう」
「余も同じような物だ。王女達は仕事が立て込んでいるようでな?このかめらとかで撮って見せてほしいと言われたのだ」
家族に友達に異世界の友達って凄いメンツだな・・・
その後も相楽に母さんに香坂に詩歌にと俺の秘密を知る人が集結。これにはハダル達も
「とてもやりにくい・・・」
と苦笑いしていた。
どうやら招待客は揃ったようで
「それじゃいつでも始めて良いよ。なんとここでどれだけ過ごしても固定で10分しか進まないという親切設計!!いくらでもやりあってちょーだい!!」
「それは神過ぎん!?」
「神だけに?」
リンのその返しに静寂が訪れるがその空気に笑いが産まれる。
そして向かい合う。
「ベラ、ハダル、リッタ、グロニス。まずは我が儘を聞いてくれてありがとう。色々付き合わせてきたし、大変だっただろうに皆とガチで戦いたいなんて望みを叶えてくれてありがとうな」
「それは今言わないでほしいけど・・・感謝はこっちこそです。マスター」
ベラが珍しく敬語だ。
「私ハダルとベラはあなたを信じて付いてきました。どんなことであれ、あなたは誰かを助けるために動いてきた。その手伝いをするのは当然の事。あの時私達に生きる意味を与えていただいて・・・こちらこそ感謝を」
「私もお礼は言い尽くせないです。サキュバスでありながら淫らな事が苦手で無能扱いされていた私をあなたは傍にいて良いと優しく微笑んで言ってくださいました。私の居場所はマスターのお傍です。マスターには感謝しきれない程の優しさをいただきました。そのマスターが私達と本気で相対したいと仰るなら・・・如何様にも応えてみせましょう」
「お前ら長いよ。でも私からも言わせてくれ。荒れていた私を仲間だと・・・友達だと言ってくれたあの時・・・本当嬉しかった。だから今日ばかりは友達として相手させていただきます」
全員の目は強者が持つ目だった。そして各々武器を用意する。どの武器も伝説級の業物。その醸し出す空気に皆が静まる。
そして蒼矢がコインを投げる。下に落ち、音が鳴ったか鳴らないか、地面に付いた瞬間、
勝負は始まった。
観客side
皆集められたのは夢の中だった。
光が問う。
「君達は見たいか?彼の本気を」
皆聞く。
「彼?本気?」
光は言う。
「そう、君達の中で最も大きい存在となっている彼だ」
よく分からなかったが何故だか全員が肯定していた。
すると眠りから覚め、目の前には光の扉が。普通なら怪しいと思うのに何故だろうか・・・吸い込まれるように入っていく。
すると頭の中に何かが入ってきた。
桐生蒼矢の戦いが行われる。自分はその観客だという情報が入ってくる。それに寝起きなのにテンションは普段通りになっていた。
人間はみな混乱していた。
何故蒼矢はあんな所にいるんだろう?ムーと呼ばれ自らを龍王と名乗る男とディールと呼ばれたこの男。皆この男達についての考察が一致した。
異世界の住人
そう考えると辻褄が合った。そして状況がしっかりと飲み込めた。
つまり今から行われるのは・・・
「蒼矢のガチバトル」
そこまで理解した所でディールと呼ばれた男が話しかける。
「其方たちは今から世界最高峰の戦いを見る事となる。とは言え目では追えないだろうがな」
背筋を正してこうも付け加えた。
「この魔王を打ち倒したその武を目に焼き付けておけ」
次回からは蒼矢たちメインでたまに観客視点が入ります。激しい戦いの描写を描くのは初めてなので少し緊張してます




