84話:深夜の一悶着
「な・・・なんじゃ?」
「ヒヒヒッ、あはははははははは」
俺は狂ったように笑う。仕方が無いだろう。だってこいつらは滑稽すぎるんだから。
「・・・狂ったか」
「狂った?最初から狂ってるよ。あ?嗤った理由が分からないって顔だな」
「そりゃそうじゃろ」
「本当に分かんねえのかよ・・・だってお前らさ」
俺は激しく顔を歪める。
「なんでおれのことばをまんましんじてんの?」
「何を言って」
「だってよ、俺は敵だぜ?敵の言う事を聞くってその姿勢は評価に値するけどよ、一から十まで信じ切るなんて・・・馬鹿としか思えないだろ?」
何人かはハッとした顔をしたが時すでに遅し。あの世界ならもう手遅れだ。
「何故俺の言う事を信じた?何故味方を、仲間を信じられなかった?お前らのトップを完膚無きまでに叩きのめした男の言う事を全面的に信じてしまう程にそいつらは信頼に値しなかったのか?」
「そ、それは・・・」
「そんなだからこうやって乗り込まれるし、襲撃は対策されるしってなっちまうんだよ。俺に警察を動かす余裕を作らせちまうんだ」
「警察?まさか!!」
「今頃入り口付近でたむろしてるだろうな。罪状としては一応人の敷地であるここを不法に占拠したって事で逮捕状が出ているはずだ」
「・・・詰みか。信じていれば、もっと信じていれば良かったのか?・・・」
「知らんよ。少なくともここまで完敗って事は無かっただろうな」
俺は突入したとしても血をあまり流さないようにやってきた人間だ。その甘さは出たかもしれない。
「そういや聞きたかったんだが、そんなに俺が憎かったか?」
「憎くないとでも?ぽっと出のガキに自分の地位を奪われ、社会的信頼も失ったのだぞ?恨みなど少ない訳がなかろう。じゃが、ここまでやられてはな・・・もう憎む気も起きないわ。負けた。二度も負けた。その事実を突きつけられたってもんよ」
そうして語りだした。本来は城聖に俺を呪わせる手筈だった事。呪殺ならただの不審死という事で足がつくことも無いから妙案だと思ったそうだ。
「わしもやきが回ったかの。もう何かをする気力すら起きんわい」
「そうか、だとしたらちっとは周りを見てみな」
「ほ?」
外から警察が突入した事が分かる音が聞こえた。踵を返し帰ろうとする。だが、途中で立ち止まってこう言った。
「あんたの部下はまだこの状況をどうにかしようと模索している。首領のあんたがここで折れたらそいつらが報われねえよ。ここまで地位にしがみついたんだ。なら命果てるまで足掻いてみせろ。そしてもしも・・・もしあんたがシャバに出てきてまだ何かを企もうってんなら、その部下達と共に頑張ってみるんだな。そしてそれが俺のダチ、家族に危害を加えるってんなら・・・その時はまた立ち塞がってやる。こんなガキを超えてみせてみろ」
そう言って部屋から出ていく。ほぼ入れ替わりの状態だった。程なくして警察の確保だのなんだの声が聞こえた。
外に出て冷えた空気を深く吸い込んでから高揚感に浸る。
「いや~、あんなシチュエーションであんな事言ってみたかったんだよな~。カッコよかったかな」
本当に企ててほしい訳じゃない。本当はさっさと隠居してくれとか思ってる。でも、ああやって去っていくキャラはカッコよく見えるし俺もその一員に!!という感じであの茶番をやったのだが・・・
「とりあえず帰るかな」
そんな高揚感から一転。姉貴が起きてたらどう説明すれば・・・と頭を抱えて帰路につくのだった。
時を少し戻し詩歌が対峙していた頃・・・
3対1。しかも1は女。侮る者は多いだろう。まず勝てると思って慢心する愚者はごまんといる。
この3人組もその仲間だった。
「なんたる強さ!下の警察などいらんではないか!」
「そうね。でも、あなた達が彼らによって裁かれることに意味があるの。私がどうこうするべきじゃないわ」
「フフフ、貴様も人外の存在と警察に知られるハメになるのだが・・・そこは良いのか?恐れるならば我々を見逃せい」
「もうバレてるから却下ね。それにその心配はしてないわ」
「・・・愚かなり」
「愚かはあなたよ。考えてもみなさい?何故警察は私に任せきりにしているのか」
「??」
「だって彼ら・・・土師の能力者達が警察の服着てるだけだもの」
「なん・・・だと?馬鹿な!という事は」
「そう、ここで能力使いがぶつかる事は知っている人たちと言う事。つまりね」
そこまで言って九本の尾を顕現させる。
「貴方たちは血路を開くしか・・・もう道は無いのよ」
「きゅう・・・び?」
「うそ・・・だろ?」
「勝てる訳ないだろ・・・」
「戦意は消えた・・・安心しなさい。殺しはしないわ」
そう言うと30は確実にある狐火を顕現させる。
「ちょっとだけ・・・火傷してもらうだけよ」
その避けきれない弾幕を前に為す術無く当たるのみ・・・なんて甘い奴らでは無かった。
「五の符、地天!」
呪符により数はある程度減らせたが
「くっ、熱い・・・」
この時減らせたと安心しなければ良かったと後悔する事になる。
急に明るくなったと思ったら
「あんなのは手品よ。本番はこっち。鳳仙花!!」
鳳仙花という技名は今決めた物だが、この技は恐ろしい。頭上に現れた火の塊から無数に火弾が射出されるという技。蒼矢には「おいおい弾幕薄くねえか?」と言われたがもっと増やしたら普通は死んでしまう。
無論、蒼矢に比べればモブレベルにしか力の無い人では
「ぐぁっ!」
あっさり一網打尽にされてしまう。下で見ていた者は全員別次元の何かを見ているような顔をしていた。
この近隣には蒼矢が予め皆寝るようにと魔法をかけてあるのでこんなドンパチは沙羅以外は知らないまま。
の筈だったのだがここで誤算が生じている事に誰も気づいていない。それは・・・
「何の騒ぎ?って・・・警察?」
母が起きていた事である。
ここ最近ずっと考えてる。弟が変わってしまった事を。いつだっただろう、いつからか弟は変わった。高校で問題児になり始めるし、全国レベルに通用するバドミントンの腕は持ってるし・・・思っていたのはただ一つ。
「あの子は・・・誰?」
姿も声も全く違わない。強いて言うなら筋肉がしっかり付いて引き締まったのが変わった所かな?ってくらいしか外見は変わらない。でも、あんなに運動できたっけ?とかこんなに諦めたような、憐れむような眼をする子だったっけ?って疑問が生じる。
女の子を連れてきた。話を聞けば行くあてもなくうちに来る?的ノリで連れてきた友達と言ってた。
見た瞬間に戦慄した。
(この子・・・人間じゃない?狐?)
誰にも言っていない秘密。それはその物の真実が見える事。街中を歩く大人達の中には狸とか時々いるのを子供の時から知ってた。だって分かるんだもん。蒼矢には鼻が良いと誤魔化したけどね。
だから警戒した。弟が狐に見初められたって。
証拠を掴んだら追い出してやろう。そう思ってた。でも、家に害も無いし、家事は真摯に学ぶし、逆に蒼矢が振り回してるように見えた。
だから大丈夫かなって安心した。
でも、深夜に二人で出掛けたり、色んなことを知っているのを知って私は理解した。
姉である私にも打ち明けられない何かが・・・あの二人にはあるって。
だから旅行の時に問い質した。そうして言われた言葉。
頼りになんてなる筈ありません。
かつてあの子に深い傷を負わせたのは私。姉として、女として一番近くにいる存在が男としての部分を否定してしまった。その結果と言うべきか・・・私のにも、詩歌ちゃんの水着にも反応を示さない人にしてしまったのだと痛感した。
紳士的に気にしないんじゃない。気にならなくなってしまったのだ。水着を本当にただの布だと思っている。その証拠に目には光が無かったし、反応すら見せてなかったから。
それを後悔しながら、蒼矢が変わった事について考えながら気付けば寝てしまっていた。
ふと起きると外がやけに騒がしい。
すると部屋には見知らぬ人間が3人。本来なら悲鳴をあげるべきなのだろうが突然の事に声が出なかった。
それから逃げたのだが誰かと言い争う声が聞こえてくる。その声は詩歌ちゃんのも含まれていた。そしてこの時同時に察した。
「蒼矢・・・あなたも関係しているのよね」
少しの間更新遅れます




