83話:だから世界ってのは
時を遡る。警察が訪ねたすぐ後、自室に籠った時の事である。
「今日から激アツイベントが来るんだっけな」
そう、このネトゲ史上最高火力の武器を生成する為に必要な素材のドロップ確率が上がるキャンペーンを3日間だけ開催するのだ。
そしてこの日は初日。
「ま、2時間以内に落ちりゃ有難いかな」
必要素材4つのうち既に2つは持っている。もう一つはすぐに集まるので問題無いのだがヒスイの宝玉。このアイテムだけが入手難易度がトップレベルに高い。
まず、プレイヤーレベルが50以上である事(最大は70)が前提でソロプレイ時のみかつ初期装備でポップ確率のとても低い敵を倒すと10%の確率で手に入る幻と言われたアイテム。手に入れただけで暇人認定されるアイテムがヒスイの宝玉だ。
今回、撃破時の確率が10%から50%に上がるとのことで、ガチ勢たちがこぞって潜っている。蒼矢もその一人なのだ。
そしてプレイ開始から30分後・・・
「は?後一個じゃん。泥50%偉大すぎないか?」
必要数は全部で5個。7体遭遇して4個手に入ったのだ。
「マジで1時間以内に終わるぞこれ」
こうやってのめり込んでしまうからゲームは怖い。怖い目つきで画面に向かう男子高校生がそこにはいた。
結果から言うと48分で素材集めは終了した。
「いや~、実に有意義でしたわ」
ログアウトして窓の外をふと見ると視線を感じた。
「随分と上手い隠れ方だ。この国にこんだけ隠密が上手い奴がいるなんてな」
そいつに接触する為に蒼矢は家を出た。
あっさりと倒しても情報を吐かなかった為、魔法で探し、単身偵察に行った。
「さて、ここは誰の根城なんでしょうかねっと」
古い廃ビル。外からでは人がいるなんて思わないであろうその外観からは想像出来ない光景が広がっていた。
「ここは集会場か。15人はいるな。何してんだ?」
見てみると
「良いか!!是孝様をあんなお姿にした憎き桐生蒼矢。奴をひっ捕らえ処刑するのが我々に与えられた責務!全う出来ぬ者は帰れ!!」
「おうおう、とんでもない言われようだぜ。全部そちらさんが悪いってのによ」
「帰らぬか・・・では誓いの文言を!!」
「是孝様に光を!!不届き者には絶望を!!」
「・・・・・・」
いやいや、相当疲弊してるよ?こんだけ疲れてる状態で俺とやりあったら死ぬだけだぞ?まあ、殺さないけど
「とりま、ここが敵さんの根城であってるかな」
そのまま当の本人がいる部屋を目指す。簡単に見つかった。一際扉がご立派な部屋があったからだ。
「それで?どうするつもりだ?」
「ん?何か話してる?」
「私が考えたプランではまず深夜に3人の忍を使って桐生蒼矢の姉、桐生沙羅を誘拐。そのまま桐生蒼矢がこちらに来ると見込んで解放の代わりに錠をかけます。その際に姉の方は本人の前で錠がかかり次第解放。すると見せかけて再度拉致。これで外部にはバレないかと」
「・・・甘いな」
「甘い・・・とは?」
「ただ拉致したのではあやつは人質だけを解放して帰ってしまう。アイアンメイデン・・・あれを使うぞ」
「ど、どのように使うおつもりで・・・」
「なに、予め針を刺す直前で止めておけば下手に触れれば刺してしまう。あまりの危険さに言う事を聞くだろうよ。その後は姉の方は記憶を消して放てば良い」
この時蒼矢は以外にも冷静だった。
(ふーん、鉄の処女か・・・確かに恐ろしいが、気付いた時には手遅れなんて事にしないのは甘いな。確かに脅すだけならそれで良い。だが、一度錠を付けてある程度してから目の前で殺すなんて計画を立てないだけまだマシか)
国の宰相レベルとなるとそんな風に物を考える事が多い。いわば2段構えだ。この意図としては相手の戦意を完全に削ぐ、もしくは怒りを露わにさせ、こちらが攻め込む理由を作りだすなどだ。
蒼矢には死んでいなければ回復させられる手段がある。だからこいつらの事を脅威には思っていなかった。
この時考えていた事は
「どうやって家の被害を少なくするか・・・だな」
その場から去り、家へ帰るまでの間、ずっと考えていた。
「よくもまあ姉貴を拉致ろうとしてくれたなハゲ」
「フン、貴様には正攻法では勝てないからの」
「・・・潔く雑魚と認めるのは嫌いじゃない。だが、雑魚なら雑魚なりに負けが確定した瞬間に生きる為の方法を考えるべきだと思うけどな」
「生意気な口を・・・しかし・・・良いのか?そんな無防備にこんな場所へ入ってきよって」
「??なんで?」
「わしらが何も対策を施してないと・・・まさか高を括ってはおらんよな?」
「!!」
瞬間、蒼矢をボウガンが襲う!
「・・・回避されるか。見事じゃ」
「てっきり能力者なんだからそっち方面で来ると思い込んでたからな」
「お前より弱いなど知っておるわ。じゃが、弱者には弱者なりの戦い方がある」
「・・・そういう事か」
今気づいた。この部屋、ボウガンが5ヶ所に設置されている。これを避けながら戦う。それが俺に課されたハンディキャップだと。
「そしてわしの手駒の中でも優秀なこいつらを戦わせる。さあて、どこまでやれるかのぉ?」
ボウガン5ヶ所に警戒しながら手練れ4人とやり合う。常人ではまず不可能。でも
「それで・・・だからなんだ?」
「なんじゃと?」
「言葉の通りさ。それがどうしたと聞いている」
「・・・お主・・・アホになったんとちゃうか?まさに万事休す。この状況でも粋がると申すか?」
「アイアンメイデン」
「ん?」
「この部屋にはそれが無い。どこへやった?」
「何を言っておる?」
「あ?だってお前らさ、うちの姉貴あれにかけようとしてたんじゃないのか?」
「な!?」
全員の声が重なる。
「な、何故知って・・・」
「話、聞かせてもらってたから」
「馬鹿な!!あの時あの場所にはわしが全幅の信頼を・・・まさか貴様ら」
「わ、私は口外しておりません!」
「お、俺もです」
「ぼ、僕もです」
俺はニコニコしながら見てた。まさか扉の外で聞いてたなんて思わないだろうな。ま、こっちの方が都合良さそうだ。利用するか。
「そうやなぁ、俺はこいつらの誰かからこの計画の全てを聞いたんだよな」
「やはりか!!お前か!?それともお前!?」
疑っては否定し、否定しては疑って・・・ああ全く笑えてくる。絆?信頼?そんな不確かな物やはり存在などしないのだ。そんな物が存在するのは・・・
命を預けなければならない者同士の間だけだもの。それだって永遠の絆が芽生えたのは俺達パーティーくらいな物だ。
親だって気に入らない子供はあっさり見捨てる。成績悪い子供は嫌いだろう。今すぐにでも手放したいだろう。夫婦だって浮気だ不倫だで揉める。あの時一生を誓い合わなかったんですかぁ??と煽りたくなってくる。結局のところそんな不確かな物に頼っているようじゃ三流なのだ。
だがこれを公言すれば世間は社会不適合者のレッテルを貼ってくる。事実なのに認めようとしない。なんと滑稽だろうか。先人達と自分達が命を懸けて作り上げた事実をあっさり否定するのに温故知新等と語るのだから笑いが止まらない。本当に・・・本当に世界ってのは
「退屈させてくれないよなぁ!!!最ッ高だぜ!!!」
2話投稿です。
久しぶりかな




