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81話:絶対に・・・

「せ、先生?そんなに慌てて何をしていらっしゃるんですか?」


「え?あ、いやこれはちょっと大事な物を失くしてね」


「先程タリウムと仰っていましたが関係が?」


「あ、ああ。タリウムを研究の為に使ってるんだよ。それが無くてね。この部屋の外には持ち出してないのに・・・」


事実、タリウムの瓶を持ち出してはいない。別の入れ物に移して投与していたから嘘はついていない。


「そ、そうですか。物が物ですしみんなに見つけたら連絡貰えるように言ってきますね」


「いや!それはしなくて良い!というかするな!」


「え?だって」


「だってじゃない!君は何も見なかった良いね?」


「は、はい」


「くれぐれもオフレコで・・・な」


あまりの必死さに首を縦に振らざるを得ない看護師。そのまま逃げるように部屋を後にした。


(バレた!マズイ!あの女を始末しなければ。だが、下手に手を出せば今度こそ終わり・・・今はあの女は様子見で良いか。問題はタリウムだ。病院としての正規の方法で手に入れた訳じゃない品だ。そりゃそうだろう。病院に研究許可の申請など出していないのだ。もし広がったら・・・)


そこまで考えた医者の結論は


「早急にあのガキを始末しないと」


だったのだが、ここでこの医者は一つ忘れている。元々は城聖を子飼いにする為に妹の佳織を危篤にしたのだ。ここで殺しては本末転倒。彼の主の計画を一番妨げる行いだという事を。


医者は血相を変えて捜索を再開する。さっきより荒々しく、血気迫る勢いで。


「ダメだ。無い」


結局手術の予定時間ギリギリまで探してダメだった。一応医者をやっている手前、手術をすっぽかす事は出来ない。仕方なく部屋にカギをかけ出ていった。


廊下を歩くその姿は何かに取りつかれたかのような風貌。その鋭い目の奥では


絶 対 に 殺 し て み せ る


という情念が支配していた。

























「やっと到着っと」


「そうね」


「な、なあ」


「ん?どした?城聖」


「本当にタリウムなんて盗んだのか?てかなんであの主治医そんなもん持ってんだよ」


「そりゃお前、妹の佳織さん殺すためだよ」


「なんで、妹が?」


「さあな。それは知らん。少なくとも今どうにかしてあのゴミ医者のバックにいるハゲ野郎探してもらってるから俺達はあの医者どうにかすんぞ」


「どうにかって・・・出来るのか?」


「お前、一応ヤンキーだよな?やれるかじゃねえ、やるんだよ。タリウムが無くなったことであいつは事を性急に片づけようとする筈だ。だから短期決戦をする必要がある」


「そんな。。。お前、妹の命がかかってんだぞ!?」


「うるせえわ!じゃあお前ひとりでどうにかしろよ。最初から助けなんて呼んでんじゃねえ」


ま、このタリウムが奴のだっていう証拠はない。勿論指紋照合すれば行けるんだが、これの入手経緯聞かれたらこっちが捕まる。だから本人に口を割ってもらうしか無い。


「まあ良い。遅れれば遅れる程不利になる。こんな日中から作戦開始すんのに苦労したぜ」


そう。普通に営業している時間帯なのだ。普通の見舞い客もいる。だから表に出ないようにやるしかない。


「さ~て、そんじゃ久々に正義の味方ごっこでもしますかね」


絶 対 に 助 け て み せ る


蒼矢はそう誓った。


























2時間半の手術を終えて医者が戻ってくる。


「探さなくては」


鍵を開けて探し始める。すると


「あった!良かった。これで須崎 佳織は殺せるな。そうとなればすぐに準備だ」


タリウムが入った瓶を見つけた。だが同時に違和感に気付く。


(あれ?でもあそこってさっき探さなかったか?それに、しまってあった棚からは遠い・・・まさか!!)


ピロン!その音はスマホの撮影終了の音だった。


「へぇ~、あって良かったですね。それで?誰を殺すって?」


振り向く。そこには


「な、お、お前・・・桐生・・・蒼矢?か」


「ほほぉ・・・俺って有名なんだね。しがない一人の男子高校生の筈なんだがな。そんなに睨むって・・・なんか恨みでもあるんか?」


「恨み?なんのことだい?僕は風の噂で君を知っただけさ」


あら、意外と冷静。ここで激昂したら楽だったんだがな。


「そうですかい。ま、良いけど。その薬瓶。何に使うんです?」


「君に話す必要は無かろう。君が病院関係者というなら別だが」


「俺はてっきりその中身タリウムだと思うんですよね」


「それは君の勝手な想像さ」


「想像・・・想像か。クク」


「何を笑っている」


「いやいや、突然見つかった大切な瓶。中身も確認しないんだって思いましてね」


「何?」


「僕が何故タリウムと思ったんでしょうね?」


「・・・てめえ」


「ほら、確認しなきゃ。学校のテストでも確認は重要じゃないっすか?まさか学問を教える側に身を置く人間が確認作業を怠るなんて・・・アホな事はありませんよね?」


しぶしぶ確認する。嫌な予感はしていた。まるで確認する事に誘導されているみたいで開けてみても何も違和感は無い。このまま人体に1グラムでも投与すれば死ぬであろう劇物にしか見えなかった。


「なんだただのはったりか」


「・・・ヒヒヒ」


「何故笑う?嗤いたいのはこちらだ。あの方からお前はとても厄介だと聞き及んでいたが大したことないじゃないか」


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


笑いが止まらない。本当にこいつは薬を扱う人間なのか?なんでこいつ


「中身が減ってるか確認しないの?」


「は?」


「普通さ?そういうのってこの日にこれだけ使った、だから後どのくらいあるって管理表みたいなの作らねえか?」


「ま、そうだな」


「おいおい、本当に鈍すぎないか?」


「???」


そこで言われた意味に初めて気づいた。


「ま、まさか・・・」


「まあ、思わないよな。自分の体内に入ってるなんて」


「き、キサマー!いつ?どこでどうやって!それにお前何をしたのか分かってるのか!?」


「ああ。法に触れるな。でもよ、お前が言えた義理か?お?」


「くっ、それは・・・」


「あの子がどれだけ苦しんだと思う?髪は抜けるし痛いし意識朦朧だし。同じ事にお前もなれよ。ちなみに教えとくぜ。その中から抜いたのは1グラムだ」


「!!」


それを聞いて絶句した。自分が総計で彼女に投与する予定だった総量。つまりは


「し、死ぬ?た、助けて。助けてくれ!なんでもするから」


縋ってくる体を蹴り飛ばす。


「ゲフッ」


「アホが。医者が医療に反する行為を行って助けてもらえるとでも思ってんのか?なあ院長」


「え?」


部屋に入ってきたのは


「やっと尻尾を見せてくれたね神林君。彼から話を聞いてね。佳織さんだけ重篤化していると。調べてみたら君が主治医じゃないか。だからこうして話を聞きに来たのさ」


「院長・・・ち、違うんです。これは何かの間違いで」


「ずっと聞かせてもらっていたんだ。この会話を。だから君の弁明は聞く余地はない」


「ま、待ってください!そいつだって俺の部屋に勝手に侵入してそれで」


「悪事を暴いただろ?」


「あ・・・」


「そもそもだ。私が彼の隣にこうして立っている状況で察するべきだ。私は彼の不法侵入を不問にふしたとね」


「なぜ・・・」


「勿論驚いたとも。まさか友達の妹の為にこんな危険を冒す馬鹿がいたのかとね。だが、その馬鹿は現代人が捨て去った馬鹿さだ。自らの野心、保身の為にしか動かない。いや、動けないゴミクズがのさばるのが今の医療業界。そんな目から頭から色々腐っていくような光景しか見てこなかった。だがね?この子は医療を専門に学んでないにも関わらずタリウム中毒と見抜く知識を持ち、尚且つ全ての計画を自ら立てプレゼンもする行動力も兼ね備えたこれからの社会に無くてはならない存在。私はね、こんな大切にすべき馬鹿を応援したくなったのさ」


「負けたのか」


「勝ち負けか・・・さて、話しを聞かせてもらおう。君の後ろに・・・誰がいるのか。君は元々真面目な医者だったと聞いている。影響を与える何かが無ければこんな事はしないだろうからな」


そうして連れていかれた。俺は嘘を2つ付いた。一つはあいつの体内にタリウムは入れてない。抜いたタリウムはハダルが研究に使うという事で譲渡しただけだ。そして院長は俺を知識を持ったと評価したが正確にはあいつらがいなきゃ分からなかった。








その後、妹さんは順調に回復。退院の兆しも見えてきたらしい。そんな報告を受けながら家で食っちゃ寝してると


「蒼矢、警察があなたに」


「・・・ポリが?」


「その言い方やめなさい」


「ごめん。とりあえず行ってくるよ」


玄関で待っていた二人の警官。話された内容はこうだった。


「彼を裏で操っていたのは土御門 是孝。あなたが潰した土御門家の元有力者でした」

さあ、ここからは能力バシバシの戦いになります。

頭脳戦?ほどほどですね()

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