79話:告白
帰宅して風呂に入ってる時ってのは本当考えるってのに適している。
あの女の子をどう救おうか。原因はなんなんだろうか。誰が怪しいのか。
考えても無駄と結論付けても考えずにはいられない。人間は考える葦だとはよく言った物だ。
「背中流してあげるよ」
風呂の扉が開いて誰かが入ってくる。一体誰だよ俺の考察タイムを邪魔する奴は。
ん?待てよ?この家には俺しか男いないよな・・・
「誰だ?」
「詩歌だけど」
「は?何考えてんの?」
「え?一緒にお風呂入ろっかなって」
キョトンとした顔してさも私変な事言ってないよね?みたいな感じ出すな。
「いや、それは理解している。なんで?ホワイ?」
「んーー、弟と一緒にお風呂入りたくなったから?」
「ええ・・・自分を姉だと思い込む不審者がいるんだけど・・・ポリスメンに電話しなきゃ」
「私と入るのそんなに嫌?」
「嫌じゃないが俺が捕まる」
「大丈夫よ」
そう言って俺の体を洗い始める。もう好きにしてとされるがままになろう。後ろ洗われてる間はと思っていた。
「蒼矢って本当女の子に興味無いんだね」
「いきなりどうした?」
「私だって結構あるのに反応見せてくれないしかなりショックかな。クラスの男子は凝視してくるのにね」
「反応したらしたで同じ屋根の下に住む相手としては怖くなるだろ」
「本当鈍いんだから全く・・・最近なんか無理してない?」
「え?」
「今回もそう。なんでなのかな。なんで対岸の火事の筈なのにこうして首を突っ込むの?」
「前に話しただろ。それが俺の生き方だったと」
「でも、そのせいで貴方が傷つくのはおかしいわ」
「傷つく?俺がか?」
「そっか・・・気付いてあげられなくてごめんね。もう慣れちゃったんだね傷つくことに」
「だから何言って」
「だってさ?最近の蒼矢、私と会った時より笑ってないもの。生き急いでるんだもん。勇者の仕事は終わったのに・・・蒼矢が何もしなくたって色んな事は目まぐるしく回っていくのに」
「・・・」
「怖いの。いつか貴方が自ら死を選ぶかもしれないその危うさが。私だって力は身に付けた。いや、身に付けさせてもらったよ?でも、私は必要な時に何も出来てない。そんな自分が情けないの。こんな事なら
力なんかいらなかった」
「それは言うな。力は無きゃ死ぬぞ。あっても早くして死んじまう人がいるのが世界だ。お前みたいに優しい奴は早死にするのが人生の相場。だから俺は」
「私に力をくれたんでしょ?不完全な力しか持たないが故に狙われた私の事を思って。蒼矢のせいで生きられる。学校にも通える。幸せだよ?蒼矢のお陰で幸せを手に入れられた。だから今度はあなたが幸せにならなきゃ。もうゆっくり幸せに過ごして良いんじゃない?」
「そんな生き方は出来るはずがない。俺は人を殺めた。力を持つまで殺さない選択を取れなかった。仲間も死んだ。俺が弱かったから。だから俺は」
「強くあり続ける?それはダメ。幸せを捨ててまで強さを求めちゃダメ」
「てめえに何が分かる!?」
「なぜならあなたは幸せになってほしいと望まれてここに戻ってきたから」
「は?」
「本当に亡くなってあなたを恨んでるのならあなたはこっちには戻ってこれないと思うの。あなたが大切な仲間なら私は幸せになってほしいと願うわ。だからあなたは勇者でいなくて良いこの世界にいられる。確かに不当に虐げられる人は多い。でも、それをどうにか出来ないと嘆くのが人間よ。それを全て解決しようとして出来るならあなたは人間じゃないわ。だからお願い一人で抱え込まないで。あなたが笑えるように私に支えさせてほしい」
何も言えなかった。[幸せになってほしい]何度も聞いたその言葉。リンにも言われた気がする。でも忘れてしまう。この世界は戦場。一瞬の隙が勝敗を決する血に塗れた終わりのないクソみたいな世界。そんな場所で幸せを望むのが馬鹿だ。
「本当に俺がのうのうと生きてて良いのか?」
「うん。良いんだよ」
「学校以外の時間は遊びに費やすような生活をしても・・・良いのか?」
「良いんだよ。勉強も頑張ったんだし、ずっと走ってきたじゃない。そろそろ休まないとどこかで限界が来ちゃうしね」
「失敗ばかりだった俺が・・・幸せになって良いの?」
「うん」
目の辺りが熱くなる。こんなに心が解放されたような感覚になったのはいつ以来だったろうか・・・いや、何回あったか。数えられてしまう程度しかない。師匠に皆伝として褒められた時、精神的に参ってる時のライラの言葉。旅を終えて戦争を終結させたとき。
全部異世界の話じゃんか。自分を嘲笑うしか出来ないや。
「恥ずかしいや。こんなに未練ばっかりで」
「仕方ないよ。何年も濃い日々を送ってきたならまだやり残した事とかあるんじゃないのかなっては思うから。私ね?蒼矢が好きだからこんな事してるのよ?」
「俺だって好きだぜ。詩歌の事」
「ドキッとしちゃったけど絶対分かってないのよね・・・蒼矢は友達とかだと思うけど私は異性として好きなのよ?」
「ふーん・・・ん?え?はい?・・・まさか俺貞操の危機?」
「さあね」
突然のカミングアウトに結構驚いたけど、それ以上に今俺の心の中にあるのは
ありがとうだった。
その日の夜、詩歌の自室では・・・
(わ、私なんかとんでもない事口走ってなかった?いや、好きなのは事実だしいつかはって思ってたけどなんでお風呂で告白するのよ・・・ていうか二コって笑うの反則よ。ドキッとするじゃない!40年近く生きててもこういう所は乙女なんだ私。ダメ、寝れないどうしよう・・・)
と布団に包まりながら悶絶していた。




