77話:また一難
全然暇が取れん・・・
旅行から帰ってきて1週間。あんな忙しない旅行から帰ってきた俺は・・・
「クッソあちぃ・・・詩歌ー、アイス取ってー」
「10分前に食べたばかりよね?一個だけあるけどあれお姉さんのでしょう?」
「どうせこの後出かけるんだからその時に代わりの買えば良いさ。あー、グータラさいこう」
見事なまでの抜け殻と化していた。その姿は親の金を自堕落に使い続けるクソ息子と称されても否定出来ない有様。世界よ、これが勇者だ。
「なんでドヤ顔してるの?」
おっといけねえバレる所だった。
あの旅行中に色んなことがあったらしいと聞いている。香坂はなんでもかつてのトラウマに遭遇してピンチだったらしかった。何故かベラが憑依して事を収束させたようだってのも聞いた。
俺は嬉しかった。俺の命令が無いと基本動かなかったあいつらが俺の仲良い奴を助けてくれたんだから。いつか焼肉にでも行くかな。
後は相楽と堂本が何やらトラブルに巻き込まれたとも。この辺は今日の午後会う事になってるから色々聞こうと思っている。
折角リフレッシュしに行ったのにまた面倒事の予感しかしない。だからこそ今エアコンを付けたこの室内でのネトゲグータラ生活を満喫するのだ。フフフフ・・・
午後・・・詩歌と共に蝉が元気に音を鳴らし、灼熱の殺人光線が降り注ぐ中、待ち合わせ場所へ向かう。
「あづい・・・じぬ」
「おじさん臭いよ?今日は宿題教えてって言われてるんだからキビキビ歩く!」
「・・・これ労働じゃねえかよ」
「そろそろ駅だから涼しくなると思うよ?もうひと踏ん張りだから。ね?」
元気すぎんか?この子。何をやるにもまず怠いという思考が頭を埋め尽くすであろう最中に。全く逞しく育っちゃって。育ての親の俺は反対に軟弱になりました。
電車を使って待ち合わせ場所へ行く。学校の最寄を2駅程過ぎた場所だ。到着すると結構な人数が揃ってた。
「あ、先輩!こんにちは、お久しぶりです」
「二人揃ってか。仲が良い事で」
「ねえ、蒼矢顔死んでない?」
「みんな学校ぶりだな。相楽、俺がそんな顔してるわけないだろ?それより、これで全員か?」
「亜矢ちゃんがまだ」
「あいつがいるなら宿題の手伝いに俺いらなくね?」
「良いじゃないですか。JKとJCに囲まれるんですよ?嬉しくないんですか?」
「なんというか場違い感が・・・ね」
「真面目を着て歩いているようだな」
「天ちゃんはそれ言っちゃダメだからね?それに一人でも男の子がいると変なのに絡まれにくいと思うし」
と、そこへ
「ごめんなさい。待たせたわ」
「揃いましたか、それじゃファミレス行きましょう。今日は早く終わったら皆でカラオケ行きますからね」
「へ?俺聞いてないんだけど?」
「今決めましたから」
「そう言えばみんなの歌聞いた事無いわ。私は賛成」
「私も」
「異論はないわ」
え?東雲さん?あなたはてっきりそんな浮ついてちゃダメよ!みたいに言うと思ってたんだが?
「私も賛成かな」
「詩歌もか・・・俺もそれで良いぜ」
そうしてファミレスに向かう。地味にカラオケ楽しみな俺もいるからちゃちゃっと終わらせますか。
1時間後・・・
「お、終わった・・・」
「蒼矢、凄いよ。でもペース早すぎ・・・追いつくだけで精一杯・・・」
「桐生君?あなたは学年一位だからそんな苦でも無いでしょうけど普通はこの量を1時間で仕上げるなんて無理よ。これに軽く順応して教える側に回ってる詩歌さんもとんでもないわね・・・」
「あはは、褒められてる・・・よね?」
「とっても褒めてるわ。あなたもライバルって事ね」
「中学生の宿題も軽く教えられる桐生先輩、詩歌先輩、東雲先輩が凄すぎです」
「いやいや、俺達1年前にやったばかりだからな?ある程度は教えられるさ」
「私達がまるですぐ忘れちゃうおバカさんって言われてるのに否定できない」
「確かに・・・やっぱり学年トップクラスの成績は凄いんだね」
やっぱり次回のテストは自力でやんないといけないな。罪悪感に支配されてしまう。
「終わったからカラオケ行きましょ!」
「てか、結構進んでたからあっさり終わったな。行こうぜ」
そうしてカラオケに向かっていたのだが・・・
「頼む!妹を・・・妹を助けてくれ」
変な男に頼み込まれるハメに。はて?どうしてこうなったんだっけ・・・
ファミレスからカラオケまでは徒歩15分というくらいの距離しか離れてない。俺達が後少しで着くという所だった。
「ん?あいつは」
「あの時の雑魚?なんでこんなところで・・・」
「雑魚って言うと不良に絡まれたって言ってた時のがあいつ?」
「そう。なんだろう、やけに落ち着きないわね」
「ま、私達には関係ないだろう。行くぞ」
と素通りしようと思った所へ
「あ、あの時の!」
「どうも。それじゃ」
「ま、待ってくれ。あの時の事は謝る。だから俺を助けてくれ」
「・・・何言ってんの?」
「何が何だか分からなすぎて蚊帳の外なんですけど」
「安心しろ。相楽と堂本含め全員がそうだから」
「よく分からんが助ける義理は無い。私達には用事があるのでな」
「妹が!妹が・・・死にそうなんだ」
「へ?」
みんなの声が重なる。
俺はこの時、放ってはいけないと直感的に感じた。
「何がなんだか分からねえから最初から全部話せ。良いな?」
「あ、あんたは・・・?い、いや聞いてくれるだけでもありがたい。実は・・・」
「おっと、どうせならカラオケ行ってからにしような?」
「は?」
「馬鹿。そんな話を人の往来で堂々とする気か」
「そ、そうだな」
思わぬ客でより窮屈になったがとりあえずは入れた。が、そんな歌うなんて雰囲気でもなくとりあえずは話を聞くことに。
「それで?死にそうってどういう事だ?」
「妹は、佳織は元々体が弱くて入院しがちだったんだよ。でも、4日前だ。4日前にいきなり腹の痛みと激しい頭痛を訴え始めて・・・そっからは衰弱する一方で。医者も分からないらしく」
「いきなりなのか?」
「ああ。ナースコールを押すのも一苦労だったらしい。俺の前では頑張っているんだがそれでも辛そうなのが分かっちまって・・・」
「ふーん・・・」
俺はこの時「おかしい」と思った。いきなり腹と頭に激しい痛み。MRIとかやっただろうに見つからないってのはただの病じゃないとしか思えなかった。医学に精通している訳じゃないから正しいとは言えないが・・・
「なあ、その頭の痛みってのはどんな感じなんだ?」
「なんか・・・うなされるというか」
「・・・で?他には?」
「痛みにどうこうというよりも何かを嫌がってたというか」
「そうなのか」
ここで俺は能力者達とアイコンタクトを取る。それと、俺はマイクを取って歌い始めた。
全員が驚く。
「ちょっと!?さっきまで真剣に聞いてたと思ったらいきなり?」
「先輩、流石に不謹慎です」
俺はそれでも歌い続ける。頭の痛みの原因に心当たりがあったからだ。
いつしか皆が聞き入っていた。1番を歌い終えて俺は聞く。
「なあ、そのダルさは取れたか?」
「え?そう言えば取れてる。なんで気付いたんだ?」
「そこは気にすんな。頭の不調は治るぞ。安心して良い」
「本当か!?本当だよな?」
「ああ。安心しろ」
ここで俺は言えなかった。腹痛の方は原因不明だとは。




