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7話:疲れた勇者は眠りにつく

世界という物はいつも残酷だ。俺は世界を救うという偉業を成し遂げ、色んな人から称えてもらった。だからといって自分が偉いなんては思わない。だが


「ねえ蒼矢。お姉ちゃんの頼み聞いてくれよ~。部活でヘトヘトだからさ。ね?お願い!!」


「いや、俺も今日はもう外出たくないから今日は我慢しろよ姉貴」


「我が儘が多い弟だな~。そんなんじゃ女の子にモテないぞ」


流石にこんな仕打ちを帰って来て早々食らうというのはあまりに残酷だと言いたい。神とか言うのがいるのなら労働の対価を要求したいと思う。それから我が儘が多いは特大ブーメラン刺さってるんだが、そこをあえて追及はしない。俺もこういう所は成長したと思おう。


「はいはい。買ってくりゃ良いんでしょ。そうと決まれば、行きたいところあるからついでに行ってくる」


「珍しいね。昨日までは行かせるのに15分近くかかってたのに。なんかあった?」


「別に?ま、弟が優しくなっただけとでも思っててくれ。ほんじゃいってきます」


家を出た俺はすぐに人気のない場所へ向かう。魔法使う所なんざ見られたらどんな目に遭うか分かったもんじゃない。研究対象か?はたまた国防の為にこき使われるか。まあ、戦争しない国で後者は無いと信じるがどちらにせよ御免こうむりたいからな。俺がまず転移魔法で飛んだ場所はとある無人島だった。陸も海もあって誰にも見られず実験できる環境。それを叶えられるのが無人島だった。インターネットを駆使し人があまり上陸せず、陸からも離れている場所をやっとの思いで見つけたのだ。


「夜の無人島って静かだなー。後ろの森が良い感じに怖さを演出してる」

実際、俺の探知には島に住んでいるのであろう昆虫や少しの動物しか引っかからなかったから、誰かに見られる心配は無いだろう。とは言え、こんだけ暗い場所だと幽霊さん達はまず見えないし、遭遇もしたくないから


「正光魔法 聖なる円環(セイクリッド・リース)


俺は念のためにこの世のものでない者達を浄化する魔法を島全体にかけた。そしたら4つも浄化出来た事が分かった。どう考えても人が50年は居住してなさそうだが何故だろう。考えたところで分からない事が分かるだけなので、気にしないようにした。


「よし、そんじゃやるか。とりあえずは低級の魔法と剣の確認をと」


結果として分かった事だが、俺の低級魔法は全力でやれば陸まで届きそうだという事と異世界にあった飛斬という技は海を割れてしまうという事。下手な軍隊では相手にならない程だろうからやはり戦闘は無しで行くという方針が決まった。


「となるとやっぱりこれも試すか。まずは空に探査をしてっと」


正確には地球の周りにある小惑星を見ているのだ。そうしているうちに俺は気付いた。


「あれ?あの物体こっちに向かってるような・・・向かってる!?落ちてくるって事!?」


そういえばネットニュースで接近してる物体があるって書いてあったような・・・


「おいおい、マジか。予定変更。重力魔法じゃなく反重力魔法の試し撃ちにするしかねえ」


俺はすぐにイニットでどの方向に転換させるかを計算した。勿論、惑星の軌道とか周回速度なんて知らんからそこは適当になるんだが。


「よし。演算完了。発動、アンチグラビティ!」


カッコよく詠唱を決める俺、また世界救ったぜ異世界の友よなんて思っているが、物体は俺が思い描いたように動かなかった。


「あれ?おかしい。何故だ。重力は反転させた。なのにどうして・・・」


俺は考え続けた。そして、俺の魔法が無意味だった事に気付いたのは20数分の時が経ってからだった。


「そうか!宇宙空間に存在してるんだから重力なんて作用してないじゃん。てことは、運動ベクトルの向きを変更する事が出来れば地球に落ちるのを阻止できる」


アニメで見た事がある。確か黒い翼が生えてたけどあんな芸当が出来れば良いのか。


「いやいや無理だろ。そんな魔法知らねえし、今から作るにしても流石に無理があるだろ・・・いや、それでもやらなきゃ。ここまで来たなら作ってやるさ、ベクトル操作魔法!」


理論は単純だ。重力魔法と反重力魔法の動く範囲を360度に変更して使用者が指定してやれば良いように設計するんだ。俺には魔法文字とかあるらしいが理解出来なかった。その代わり、ラノベやアニメで培った想像力でどうにかしてきた。ならば今回も。


「イメージ通りに動いてくれよ頼むぜ。発動!」


名前考えてる余裕なんて無かった。イメージする事だけで限界だったから。






隕石になりかけていた物体の落下阻止に成功して炭酸を買ってきて疲れ果てた俺は家に帰ってきた。


「ただいま。ほい、炭酸。それと悪いんだがちっと疲れてるからこのまま寝かせて」


「大丈夫?ご飯は一応冷やしておくわね。食べたくなったら食べちゃって」


「あ、ありがとう。蒼矢。無理させちゃったんだね。その、ごめんなさい」


「そう思うなら次からは控え目にしてくれ。姉貴」


そのまま自室のベッドで寝てしまった。ゲームの約束を忘れたままで。

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