6話:勇者無き世界のその後
異世界側の話です。これからもちょくちょく登場する予定
「行ってしまわれましたね。この世界の為にも、我々の為にももっと一緒にいたかったですが」
「贅沢を言ってはいけませんよヴィーラ殿。本来ソウヤとは出会うはずが無かったのですから。あれ程優しい方は今後そうお目にかかれないでしょう。我々がそういうところを継承していく、そして次世代に教え継いでいくのです」
「その通りですね姫様。しかし、ソウヤには色々驚かされる事ばかりでしたよ。魔族と戦う為に召喚されたはずなのに、魔族には魔族のなにかしら事情があるからそれをどうにか出来れば無駄に戦う必要は無い。なんて言いだした時には王から首はねられそうになりましたからね。今となってはそれも良い思い出ですが」
「本当にな。魔王たる余の城に突然話を聞かせろと殴り込んできた時は流石の儂も驚いた。食料と住環境の問題解決をたったの2年で出来てしまうなど相当の商才と為政者の才もあるだろう。帰ってもあやつならきちんと生きていけるだろう」
聖騎士団長、王女、魔王。この三竦みが笑いあっているこの状況。数年前では一切考えられない光景である。戦争が勃発する要因を排除していく。最小限の戦い、犠牲だけで戦争を終結させた。これこそが桐生蒼矢の偉業だった。
蒼矢が召喚されたユーラ王国含めこの世界の住人は誰もが相手を潰す事しか考えなかった。しかし、蒼矢と蒼矢の考えに共感したパーティーメンバーが戦わなくていい道があると民衆を説得したお陰もあってやっと実現した平和である。
「しかし姫様。良かったんですか?自分の思いを伝えられないまま終わってしまって。玉砕覚悟でも悔い残らないようにした方が良かったと思いますよ?」
「王女よ。そこそこ長い時を生きてきた余も同感だ。あれだけ支えて支えられてという関係が主らにあったことは理解しておる。あやつなら断らなかったろうに」
「ええ。ソウヤは優しいですし私のように何年もともに苦楽を過ごした仲間をソウヤは受け入れてくれるでしょう。でも、ソウヤに必要なのは協力しあえる伴侶ではなく、ソウヤの良い所も悪い所も全てを包み込んでくれる伴侶なんです。私も21です。王族としてこれ以上は待ってもらえません。みんな私を気遣ってくれているので24になるまではという猶予を更に与えてくれています。それに、ソウヤが元の世界で良い人に出会えなかったならば一度だけ会わせてくれるようにと神と約束をしています。今は自分磨きをして彼を包んであげられる存在になる事が先決です」
「左様でございますか。これ以上私から何か申し上げるのは無粋という物ですね」
「ふむ。ヴィーラ殿の言う通りよ。ところで、そこの柱で盗み聞いている者よ。出てこい」
そこにいたのは
「か、神様!?どうしてこのような所に?」
「不思議な事を聞くね、王女もといライラちゃん。この世界の都合で勝手に呼び出したのにこの世界に良い影響を与えてくれたあの優しい青年がちゃんと帰れるかをサポートして見届けるのがこの世界の神の責務でしょ?それに改めてライラちゃんの思いを聞けたしね」
「あの、神よ。ソウヤは元気でちゃんとやれていますか?」
「そこは大丈夫。知ってるでしょ?送還するときは10分後の世界に戻るって。ソウヤくんは今・・・女の子に何か頼まれごとをしてるみたい」
「ふむ。魔王が神に質問をするというのは些か違和感があるが、一つ聞かせてもらいたい」
「そんなに畏まらなくても大丈夫だよ、魔王ディール。で、何が聞きたいの?」
「ソウヤは余を少しとはいえ凌駕する実力の持ち主。ソウヤがこちらに来た時の事は伝え聞いた事しか知らぬが、元の世界とやらでどの程度の実力者なのか聞きたい」
「あー。それか。それね。そうだなー。あっちの世界って70億人を超える人口なんだって。多分その全員を一人で相手にしても勝てちゃうな。なんだっけジュウカキ?とかカガクギジュツ?が発展してるらしいんだけどそんなの敵じゃないと思う。あ、それとこの場を借りて、地上にあまり干渉出来ないからって魔王なんていう仕組みを背負わせちゃってごめん」
「気にせずとも良い。そのお陰で良き友に巡り合えたのだ。ふむ。そのジュウカキやらカガクギジュツやらは分からぬが一つ教え損ねたのが気がかりだ。ソウヤは優しい性格のせいで非道な行い、邪悪な物に対し敵意を剥き出しにしがちだ。それを抑える方法を教えてやるべきだった」
「あ」
その場にいた魔王以外が全員声を発した。
「ま、まあ大丈夫でしょう。ソウヤが力を隠せればそんな状況には遭遇しないでしょうし」
「そ、そうですね。彼は優しいですからなんとかなりますって。あ、そうです神様。何かあった場合に私たちが駆け付けられるようにしていただけませんか?」
「いやいや、優しいからなんとかなるって謎なんだけど。って、それは向こうの神達と話さなきゃ・・・はぁ。やってはみるけど期待はしないでね」
こうして平和となった世界は時をゆっくり刻んでいく。
そろそろローファンタジーっぽい感じも出していく予定です




