5話:後輩に夢は見るな。姉に夢見るのもやめとけ
なんとか1日に2話投稿出来ました。
俺は帰宅部。その活動は礼をし終わったら一刻も早く家へ帰るプロフェッショナルを目指す事。その為には強靭な足腰。身軽な体。学校から家までの最短ルートを把握し記憶出来る能力。帰宅後何をするかを考える計画力。あらゆる能力を極めた者が真の帰宅部部長では無かろうか。という事を真面目に考察する帰宅部。それが桐生蒼矢だ。
だが、そんな蒼矢のパーフェクト帰宅教室開講の準備を邪魔する不遜な輩が存在する。それこそが
「桐生せんぱ~い。一緒にスタバ寄ってから帰りましょうよ~」
と、甘ったるいテンションとノリで話しかけてくる近隣の中学校の3年生で同じく帰宅部の香坂 日和。俺が中3の頃から絡まれている。こんな意識低い系帰宅部と同類に扱われるのは誠に遺憾なのでしないでくれ。
「なんだよ。こっちとしては早く帰りてえんだ。じゃな。また明日。」
「え~。先輩しか頼れる人いないんです~。私もバズってみたいんですけど写真撮るの上手くなくて・・・先輩上手そうだから私とスタバ行きませんか?先輩としてもチャンスですよ?ぴちぴちのJCと一緒にいられるんですから」
「ふむ。ぴちぴちかは知らんがJCなのは認めよう。だがな香坂よ。中学生なら尚更寄り道はいけない事だ。それに今のうちから受験勉強を始めておけ。行きたいところがあるならな」
「え、ちょっ。そんな正論は求めてないですよ?ちょ~ウケる」
こいつそろそろ殴って良いか?と同時にここで思い出してしまった。剣の師匠であるアマンダさんを
「ソウヤ。良いか?お前はなそういう環境で育ってきたから女って生き物が怖いってのは分かる。でもな、ここは恐らく社会からして違う場所だ。だから、この世界の女性はきちんと区別してくれ。言葉遣いで忘れてるかもしれないけど私も女なんだ。私はそんな奴らと同じに見えるか?姫様はどうだ?警戒するなとは私も言えないよ。でもさ、拒絶はやめてくれ。私も初めての弟子にそう思われちまったら傷付くからさ」
本当にかっこよかった。そして、綺麗な人だった。あんな人が俺の家族だったらと何度思った事か・・・あれ?なんで会いたいなんて思うんだろう。別れはきちんと済ませてきたのに・・・
「先輩?ちょっと?聞いてます?行きますよね?」
「え?」
「もう。ダメダメな先輩ですね。ほら行きますよ。連れていってあげます」
「香坂悪い。今日はなんか疲れてるから」
無理矢理に繋がれた手を拒絶する。そして走り出した。
「ちょっと!?先輩!?待って!待ってください!!桐生先輩!!!!」
声が聞こえる。俺を呼ぶ声。でも振り向けなかった。体感時間で言うなら半日前はまだ向こうで走り続けていた。止まれる訳がない。ゲームとかの娯楽は正直しょぼいし少ないしつまんなかった。でも、思い出したら。毎日みんなで苦しんで、時には本音でぶつかって、心の底から笑いあっていた時を思い出しちゃったら
「帰ってきたくなんて、、なかったのに」
同時に悲しくなる。俺は勇者としてその力で沢山の命を、人々を救った。時には、不毛な戦いを終わらせるために敵であるはずの魔王側の魔族を助ける為にも戦った。でも、俺はまだ15,6歳なんだなって。高校生になって3ヶ月。戦う事7年。でも、中身がちっとも成長出来てない事に気づいてしまった。師匠が。立ち寄った宿屋の人達が。対峙した敵が。色んな人達が強くしようと頑張ってくれた。強くなるチャンスを与えてくれたのに生かせていない、そんな自分が不甲斐なくてカッコイイ所を見せなきゃいけないのにそれも出来ない。
泣きながら走って気が付いた時には1駅分もう歩いてた。学校と家の距離は3駅分。そっからそれぞれ徒歩がある感じだ。歩いて帰ろう。そう決意した。
「ただいま」
家に帰ると母さんが出迎えてくれる。
「あら、おかえり。そういえばそろそろテストだけど大丈夫?何か欲しい本ある?いじめられてたりしてない?なんか暗いけど」
なんか、あたたかいな。この感じ。そういえば母さんはいつも優しかったっけ。
「うん。どっちも問題無いよ。ありがとう母さん」
自分の部屋に行くとまずは気分転換の為にゲームをやった。7年やってなかったら凄く下手になってる。それにゲーム仲間とのチャットが来ていた。
【今日は9時から11時まで潜りませんか】
二つ返事で良いよと送る。こういう一幕でも思う。帰ってきたんだなって。
「こうしちゃいられねえ。今日深夜にどこで魔法試し打ちするか考えないと」
頬を叩いて、イニットを使いながら海上と陸地の候補を考えた。
終わってゆっくりしてると
「たっだいま~」
思わず溜息が出る。大魔王のご帰宅だ。
リビングに行ってお帰りというと
「お、我が弟よ。部活で疲れてるお姉ちゃんに炭酸買ってきなさい」
遠い目をして窓から夕焼けを見ながら思う。俺が倒すべき魔王はここにいたのだと。




