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66話:その頃・・・女子編1

「亜矢ちゃん、ここ分からない」


「伊藤さん、ここはこの公式を使って」


「宿題、我らの修行の為に必要とは理解しているが・・・」


「こんな事言うのはどうかと思っちゃうけど量多いよね」


ここはとあるファミレス。集うのは宿題を終わらせたい伊藤美奈、東雲亜矢、堂本天、相楽真綾の女子4人組。(実際には伊藤が教えてほしくて勉強が出来そうな人達に集合をかけたのだが)


みんなで何かをやる。途中で脱線し結局は何の成果も得られなかった的シチュエーションになるのがお約束なのだろうが彼女たちは宿題の攻略を始めて2時間。4つ終わらせようと計画しているうちの2つ目が既に終わりそうな程にハイペースで片づけている。彼女らがこんなにやる気に満ち溢れているのには訳があるのだが、それは後に分かるだろう。


「そういえばさ?」


「どうしたの?」


「この宿題終わった人なんているのかな」


「いや、流石に・・・」


「まだ夏休み始まって1週間くらいだし流石にいないんじゃ・・・」


「桐生君ならあり得るかも」


「蒼矢か・・・あり得る話だ」


「聞いてみよっか。終わってたら招集すれば戦力になるし」


「そうだね。とりあえず次回から参加してもらおう」


「美奈ちゃんの中ではもう確定事項なのね・・・」


この時蒼矢に来たメールの文面は


「宿題終わってたら教えてって美奈ちゃんが言ってた」


という一文が相楽真綾から送られたのだが、蒼矢がこのメールのせいで面倒なことに巻き込まれるのはまた別の話としよう。




















さて、あれから3時間が経過し、一度店を変えはしたものの5時間で4つが終わった。時刻は15:30。ここから彼女たちはより真剣な顔をしているのだが、その訳は


「じゃあ、やっと本題について話せるね」


「うん」


「元々、我々はこの為に集まったと言っても過言ではないだろう」


「有意義な時間にしましょう」


「それでは、第一回蒼矢籠絡会議を始めます」


この声が聞こえた者は皆一度は振り向いた。年頃の女の子4人が籠絡なんて言葉を使っているのだから。しかもこんな不特定多数に聞かれると言えるような場で。


ある者はどういう事?と思い、ある者は1に対して4?うらやま・・・けしからん!と思ったそうだ。


このまま話し始めるかと思いきやここで理性が働いた者がいた。


「でも、この話するなら私達以外いない所じゃなきゃダメじゃないかしら?」


「・・・・・・」


数秒の静寂。そして


「だね」


「同感だ」


「確かにね」


と賛成し彼女らは店を出ていく。


彼女らが消えた店内では一人で座っているおじさんが舌打ちをする音がいくつか聞こえたそうだ。


所変わり、東雲亜矢の家。


どこに集まるかと言う事で協議した結果、一番広いであろう東雲の部屋に屯しようではないかという事で話が纏まったようだ。


東雲亜矢の母、綾菜はと言うと、娘が友達を連れてきた!と大喜びし、高級なぶどうジュースを差し入れてくれたという。


だがこんなほんわかした雰囲気は長く続くはずもなく・・・


「私は蒼矢に困ってるからって助けを求められたのよ?」


「私は助けてもらっちゃった」


「私は既に告白済みだ」


女が複数人揃う空間で平和に事が運ぶなど、家の地下からレアアースを掘り当てる並みの確立に近いだろう。始まったのは壮絶なマウント取り。伊藤を除いた3人はそれぞれのマウントを取るのに必死だった。


そんな中伊藤美奈はこの雰囲気に付いていけずいたので、隅の方で傍観に徹していた。


その間にも議論と言う名のマウント取りは熾烈を極め、


「頼られたと言っていたが、単純に都合が良い女なだけではないのか?」


「そんな訳無いわ。彼は私しか頼れないって言ってくれたの。都合が良かろうと彼が頼るのは私だけだわ。それに、彼は色んな人を助けちゃうから別に特別視されてる訳じゃない筈よ?」


「まあそうだとは思っているんだけど・・・」


「あの・・・さ?私達なんの為にここにいるんだっけ。蒼矢がどんな女の子が好みなのかみんなで知りたいから今集まってるのにこれじゃいつまでも答えなんて出ないよ」


「それは・・・」


「少なくとも、今こうして言い争う私達は彼は好きにはならないと思う。だって、学校での姿見てれば分かるもん。勉強が出来て凄いなと思うけど、蒼矢はそれはあくまでいつでも自分でありたいから成績を取ってるんだと思うの。一緒にいて楽しくない相手は嫌だと思う」


「は?なんであんたはそう言い切れるのよ」


「私がね、彼氏にしたい人を考えてたの。私の理想の彼氏は多分だけど一緒に笑ってくれる人。楽しい時には楽しいって言える人かなって。それに、そういう人って優しい人が多いと思う。きっと彼もそう思っているんじゃないかってそう考えたの」


「あんたと蒼矢は違うのによくそんな事ペラペラ喋れるわね」


「・・・亜矢ちゃんは恋愛向いてないかもね」


「・・・は?」


「蒼矢ってさ、お転婆って言って良いのか分からないけど普通の人とは違うって私は思ってる。普段は真面目な男の子なのに突然ふざけだしたり、かと思えばいきなりカッコよくて面白い男の子だし。そんな男の子を好きになっちゃったのにさ?自分の都合だけで考えすぎだと思うの」


「分かったような口を!」


「分かるよ」


「え?」


「だって、蒼矢が一番楽しそうなの詩歌ちゃんと一緒にいる時だもん。一緒に住んでるのもあるかもしれないけど、詩歌ちゃんは蒼矢の事よく分かってる気がする。私もそうだけど、蒼矢を本気で理解しようって思わないと私達は負ける」


「・・・」


「あ、ごめんなさい。変な事言っちゃったね。私、帰るね。またどっかで宿題残りやろうね」


荷物を纏めて出ていく。


堂本はこの時驚きを覚えていた。


(彼女は凄いな。あの時、クラスを纏め上げたのも彼女、蒼矢の行動力に影響されたのだろうか。今までは天真爛漫という感じだったが、今ではただの自由人ではなく人の事をちゃんと考えて行動している。見習わなくては。私も置いてかれてしまう)


この後相楽、堂本も帰宅し、東雲亜矢は部屋に一人取り残された。宿題の時はあんなに楽しかったのに、どこで間違えたんだろう。それが思考を埋め尽くす。何を間違えた?どこで間違えた?いつ間違えた?どうして、どうして、どうしてどうして


「亜矢?ちょっと良い?」


「ヒッ!お母さん?」


「そんなに怯えられると困っちゃうな。入って良い?」


「うん」


そうして入って早々


「美奈ちゃんだっけ?あの子いい子ね」


「え?」


「だって、自分のライバルを蹴落とせるチャンスだって言うのにあなたの事、見捨てなかったじゃない。ここがダメだと思うって言ってくれてた。それが正しいか正しくないかはあなたが判断する事だけど少なくとも私にはあなたを貶すために言った言葉じゃないと思ったわ」


「お母さんも、私をいじめるの?」


「いじめる・・・ね。いじめはしない。ただ否定をするだけよ」


「え?」


「お父さんを射止めた私から言わせてもらいます。亜矢、あなたは何も成長しなかったのね。言ったじゃない、あなたにはまだ本気の恋は出来ないって。少なくとも同じような事は言ったわ。人の言う事はね?嘘が多く紛れている。けど、まず一度はその言葉を聞いて、考えてみて聞く価値がないなら忘れれば良いわ」


「どういう事?」


「あなた、カンニングしてないわよね?あの成績ならこれで分かると思ったんだけど・・・本当におバカさんね」


「・・・は?」


「まだ高校生。社長でもないのにあなたは理屈で考えすぎなのよ。もっと感情で考えなさい。利害関係で恋人なんてもはや政略結婚よ?あなたはそれで彼と付き合うの?」


「それは・・・」


「あなたと美奈ちゃんの差は好きな相手をどれだけ考えてるかって事よ。良き妻になれとは言わないけど、ダメな妻になってもダメなのよ?」


「そうね」


「良い?あなたは大企業の社長令嬢。本当ならいつ縁談の話が来てもおかしくありません。あなたが好きな人がいるから、私達はお断りをしているの。そうやって結婚して幸せになれる確率は低いのを知ってるから。でも、あなたが幸せになる方法を学ばないならお見合いになるけど良い?」


「それはイヤ!」


「なら頑張りましょう。彼女にあなたは最後何も言い返せなかった。それはあなたが今の自分ではいけないと分かっている証拠です。何度も言うけどこれが最後だと思いなさい?しっかり考えなさい」


「はい。でも、お母さん全部聞いてたのね」


「ふふ、最初は聞いてなかったわよ。途中から怒鳴り声に近い声聞こえてきたから暴力沙汰になったら止められるように。それだけよ」


そう言い残して綾菜は部屋を後にする。


亜矢は呆然としたままで座り込んでいた。

次回まで、女子のお話です。

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