62話:思えば思うほど・・・
相当空いてしまいましたすみません。
詩歌と合流して夕食のビュッフェ会場へ行く。開場から15分。ほぼ最速組だろう。いや、最速の筈だったのだが
「すごいわね・・・」
「ええ・・・本当に」
「凄い量食べてるね」
「語彙力が仕事をしないってこういう事か」
そこには既におかわり2回目に見受けられる使い魔四人組がいた。一言で言おう、凄く恥ずかしい。そんなすぐに無くなる訳じゃないのは分かっているだろうに、まるでご馳走の山を目にしたスラムの子供か?って速さで平らげてしまう良い年こいたおじさんとおばさんの姿がそこにはあった。唯一の救いはハダルとリッタの食べ方がお上品なくらいか?いや、ほぼ掻っ込むように食べてる時点で品なんてどっかに置いてきたんだろうけど。
俺達も席へ着く。目が合うたびにドヤ顔するのマジでやめろ、こっち見んな。
「さて、負けず劣らず私達もたらふくいただきましょうか!」
「そうね!こういうのは乗ったもん勝ちよ!」
と言って取りに行ってしまった。本当さ?うちの母さんと姉貴逞しくない?俺は唯一の良心としてライラから教わったテーブルマナーで食べるとしますかね。
「・・・行くか」
「そうだね。來妃ちゃんも行くよ」
「うん」
メニューは和洋中選り取り見取り。唐揚げ、羽根つき餃子、赤ワインソースのステーキ、デザートもパンナコッタやティラミスを始めとした総品目数100越えの超豪華なラインナップ。あんな馬鹿食いはしないけどこれは制覇したくなる。こんなに食欲をそそられたのは旅が終わって帰ってきた時の宮中晩餐会以来じゃないかってレベルで興奮が止まらない。
「詩歌」
「ん?」
「俺、運動してくれば良かった」
「ふふ、蒼矢も男の子だね」
「俺、魔王とガチで戦った時以来の本気出す」
「え、臨戦態勢?落ち着こう?それしたら食材倉庫空になっちゃうから」
「何を言う?これは戦いだぞ?あ、朝はちゃんと食べれるから安心しろ」
「人の話聞いてた?」
「お兄ちゃん、あれ取れない」
「お、あれか。お嬢さん、モッツァレラチーズを選ぶとはお目が高いですな」
「來妃ちゃん、あれも美味しいと思うよ」
「小籠包か、美味いだろうな。俺も一個」
「はいはい。蒼矢は自分で取ってね」
「扱い酷いな・・・」
まだ人が少ない事もあって俺の後ろには3人か。って待て待て。ベラさん?リッタさん?俺がさっき見た時には皿にそこそこ乗ってませんでした?だからやめろってそのしたり顔みたいなドヤ顔。
「あの人達って本当に凄いよね」
「冷めた目でそれ言われても呆れてるようにしか感じねえぞ」
「大部分が呆れだから間違いじゃないよ」
「信じられるか?あんな食い方しててみんな女性の平均寿命以上生きてるんだぜ?」
「信じたくないって答えは」
「認めよう」
なんて言ってはいるが俺も皿いっぱいに盛ったからほぼ同類なんだが。とは言えこの量制覇するなら大皿7皿と小皿数皿とその他くらいはかかりそう。あんまり見せられてないから男らしい所見せなきゃいけねえか。ま、仕方ないよな!俺の使い魔があんな事してるんだ。俺がそれ以上に食えるって証明しなきゃいけないだろ!うん、俺が制覇するのは仕方ない事だ。
ちなみに、席に戻ると
「あんた取りすぎよ!大丈夫よ?簡単には無くならないから」
「うっそ・・・そんなに最初から飛ばして大丈夫?」
と言われました。
「ふ~、食べた」
「すっご」
「蒼矢って食いしん坊さんだったのね」
「うちの息子・・・こんなに食べる子だったっけ」
「來妃、もっと食べる」
「來妃、その台詞はな?前屈みになれる奴が発して良い言葉だぞ?」
「ていうかさ蒼矢」
「ん?なに母さん」
「あんたそんなテーブルマナーどこで身に付けたのよ」
「ネット」
「んー・・・私が知ってるマナーとは違うんだけど・・・」
するど!母さんってそういうの知ってたんだ。あんまり気にしない人だと思ってた。
「ダメだった?」
「いや、綺麗な食べ方だったから良いんだけど・・・お姉ちゃんの方が食べ方汚いし」
「え?うそ。汚かった?」
「カチャカチャ鳴るのが多すぎたかな」
「うっ・・・以後気を付けます」
「詩歌ちゃんは綺麗な方だから大丈夫よ」
「ありがとうございます」
「さて、それじゃ部屋に戻りましょうか。蒼矢立てる?」
「立てるよ」
ちなみに走れないっていうのは事実だ。
部屋に戻ると俺と詩歌は夜の顔をしようとしている浜辺に行くという体で再び出る。
だが俺達が向かったのは・・・
「ここだな」
「ええ」
「良いのか?ここに入ったら戻れねえぞ?」
「大丈夫よ。九尾舐めないで」
「その意気や良し。そんじゃ行くぞ」
シリアスな空気を出しながら俺が取った行動は
ピンポーン
すると聞こえてくる
「今開けますね」
という声。ガチャッとドアが開かれると
「さっきぶりでございますマスター、詩歌」
「お邪魔するよ」
「お邪魔します」
「どうぞ。既に準備は済ませております」
ここで誰にも見られてないよなっていう風な行動をする。こうするだけで怪しい集まりみたいな雰囲気を醸し出せるのだ。
「お、蒼矢様」
「主人、待ってたぞ」
「マスター、詩歌もいらっしゃい」
「そんじゃここに座ろうか詩歌」
「うん」
そうして和室に円を描くように座る6人の男女。最も力の弱い詩歌ですらも小規模な軍隊レベルでは話にならない程の実力者。錚々たる面々が集う。そんな言葉があてはまる空間だった。
「さて、では始めていきますか。蜃の対策会議」
「だな。そんじゃ俺以外の感知出来てる奴、報告を」
「龍です」
「・・・はい?」
「蜃の正体は龍でございます」
「お、おう。リッタの意見は分かった。他は?」
「・・・・・・・・」
「あれ?まさかみんな同意見?」
「はい」 「リッタと同じだ」 「同じく」 「私も同意見よ」
「そ、そうか・・・あれ?詩歌正体掴めたんだ」
「え?う、うん。まあね」
「?まあ良いか。そんで、いつ仕掛ける?」
「今すぐと言ったらどう解答なされますか?」
「そんなに切羽詰まった状況なのか?って聞く」
「はい。暢気にご飯を頂いている最中でした。やつが動き出したのは」
「ほう、それで?」
「やつは我々から遠ざかっています。相当な速さです」
「なるほどな。なら30分後に出発なんてどうだろう」
「30分?そんなに悠長にしてては」
「考えてもみろよ。なんで逃げたんだ?そいつ。俺からすれば、自分を倒せそうな勢力がわんさかいるから距離取ろうとしてるとしか思えないんだよ」
「なるほど」
「俺の仮説が正しけりゃ2,30分は逃げに徹するはずだ。なら逃げたい分だけ逃がせば良い。油断しきった所を叩こうぜ」
「ふむ。一理はありますが・・・」
「それによ、俺達家族に浜辺行ってくるって言った手前もあるし、純粋に行きたいからどうやっても浜辺には行きたいんだ。何か起きたらすぐに向かえるだろ?」
「2,30分も遠ざかられると流石に追うのが疲れますが・・・それを把握するという名目も悪くはないですね。それで行きましょう」
「そんじゃ俺達は一足先に行ってるから後で合流しようぜ」
「了解しました」
そのまま俺達は浜辺へ向かった。
ベラ達が戸締りをしている時、ふとハダルが呟くように言った。
「後悔しています」
「ん?どうした。そんなこと言うのはお前らしくないじゃないか」
「私達は蒼矢様に幸せになってほしいと願っている。でも、我々が関わる事でその幸せを奪ってしまっているのではないかと」
「それは・・・」
「事実、家族よりもこちらを優先してしまっているこの状況が正しいとは思えません。7年以上受ける事の出来なかった愛情を感じていただきたいのですが・・・」
「でも今回ばかりはマスターが必要だぜ?新しい技をポンポン生み出せるマスターの力が」
「・・・これが終わったら身の振り方を考えなければなりませんね」
「力があるというのはこういう時嫌なものですね」
彼らの心情とは裏腹に夕陽が沈む空には雲一つ無かった。




