57話:綺麗な物の魔力
「おぉ~~~」
揃いも揃って声が漏れる。それはそうだろう。バスを降りるとそこには海が一面に広がっているのだ。
海に面したホテル、うん。ここの支配人と友達の母さんには頭が上がらねえ。
ふと見るとハダル達も降りてきた。隣のお姉さんは・・・あれ?いない。おっかしいな、一緒に降りたはずなのに・・・
謎を抱えたままだがチェックインを済ませみんなで一息つく。
「着いたわねぇ。さて、館内少し探索してこようかしら」
「私も行くわ」
「蒼矢と來妃ちゃんと詩歌ちゃんは?」
「俺は景色眺めるからパス」
「私はもう少し休憩してます」
「來妃、クタクタ」
「そう。まあ、18:30から夜ご飯食べられるみたいだしそこまでは自由行動にしましょうか」
「了解」
「はーい」
「うん」
そうして姉貴と母さんは探索に出かけた。ざっと20分は戻ってこないだろう。
「行ったわね。蒼矢、聞きたいことがあるの」
「ん?なんだ?」
「新幹線でさ、途中席立ったでしょ?あれお手洗いじゃないよね?なにかあったの?」
「來妃、気付いてた」
「あ、バレてたのか。そっか、そっかそっか」
「ちょ?なんで泣くの?一人にしすぎたから?え?どうすれば良いの?お姉さんが抱きしめてあげれば良い?」
「來妃も、むぎゅーする?」
「大丈夫。すまんな、てっきり俺の事なんか忘れられてると思ってたから」
「忘れてはないけど、抜け出せなかったの。ごめんね」
「許す」
「お兄ちゃん、何歳?」
「グハっ!」
見るからに小学生に何歳?と聞かれてしまう。これは屈辱。だが仕方なし。
「まあ良いや。俺が消えた理由だけど」
ハダル達も来てる事だけ説明する。
「え!?4人全員?そうなんだ!」
ちなみに詩歌は俺が家にいない間ずっと周囲の警戒と敵と思しき相手への威嚇をして守ってくれていたらしいとベラから聞いている。それでも俺が帰ってきたら助けてあげられなくてごめんなさい。と謝りに来てくれたぐらいなのでやっぱ良い子や、この子。
「ねえねえ」
「ん?」
「お金・・・大丈夫なの?」
「あいつらはあいつらで稼いだらしい」
「ええ・・・もうこの世界に適応したのね。流石としか言いようが」
「という訳であいつらの部屋は206号室らしいから遊びに行きたきゃ行って良いぞ」
「う~ん、蒼矢と一緒なら行こうかな」
「ま、ご飯とか風呂とか終わったら行くか?」
「そうだね!」
「そうと決まれば、寝る」
「おじさん臭いなもう」
「二人は夫婦なの?」
「ひぇ!?」 「違うけど?」
「即否定するのね・・・」
「・・・ふーん、そうなんだ。とりあえず、応援」
「応援?」
「ふふ、ありがとう」
事実と異なるから否定したのに詩歌は落ち込むし、來妃からは何故か応援されたしよく分からない事だrけだけど、こんな時間が続いたら良いななんて思った。
しかし、俺はどうやらフラグ建築の達人らしい。まさかあんな事になるなんてこの時はまだ知らなかった。
「リン、此度はウズメの事を報告していただき誠に感謝しています」
「そんなに畏まらなくても大丈夫だよ。僕は友達の為に動いただけだし」
「ええ・・・」
「どったの?」
「実は、腑に落ちない点が・・・」
「何かあった?」
「はい。ウズメは確かに私達高天原の神の事を良くは思っていません。ですが、こんな強引な手法を取るような方とも認識はしてないのです。誰にも言えない何かを抱えているのではないかと思ってしまって」
「僕は彼女と直接話すのは初めてだからね。長い時を一緒にいる人たちの感覚って言うのは信頼に足りるものだよ。でも、一回地上に降りてみたけど伝わってる神話は事実と結構違うんだね」
「それこそ人間が我々の事を全て認識していたらそれこそ恐怖と言う物です。私は世界を照らす陽。その正体は誰も知らない。だからこそ私は祀られるのです。それが知られてしまえば私を神と崇めるものはいないでしょう」
「なるほどね・・・やっぱり世界が違うと神の考え方も違うんだね」
「同じだったらどの世界も同じように発展しているでしょう」
「間違いないね。でもあの時は驚いたよ。自分の世界をどうにかしなきゃって思ってる僕のもとに勇者として育てたい存在がいるなんて言われた時は。タイムリーだったから二つ返事しちゃったけどさ?あまりにもあれはタイミング良すぎない?君達神にとって・・・蒼矢とはどんな存在なんだい?」
「・・・それがここに来た最大の理由ですか。私達高天原の神達は揃って彼をこう思っています
世 界 を 壊 す 物
と」
「壊す?世界を?蒼矢にそんな野望は無いけどなぁ」
「どう捉えていただいても結構です。しかしながら・・・あなたと私達はそういう所は変わらないのですね」
「そういう・・・所?」
「ええ。自分達の失敗を自分達よりもひどく矮小な存在にどうにかしてもらおうと思う所ですよ。簡潔に言いましょう。私達は古き時代に過ちを犯したのです」
「彼女にも言ったけど、神は世界がピンチになるまで干渉しない、出来ないのに蒼矢を使ってでもどうにかしなきゃいけなかったって事?」
「はい。絶望も希望も知る彼だからこそ世界を壊せるんです。私達ではもう手遅れですから」
「・・・よくは分からないけど何かの考えがあっての事なんだね?なら口は出さないよ。でも、蒼矢を無闇に危険に晒すならぼくは止めに来るけど良い?」
「どうぞ。こちらにいる神は総数を数えきれないほどいますから、この数を相手に出来るのであればですが」
「それじゃ」
「はい、またお会いしましょう」
こうして2つの世界の最高神は会談を終えた。
リンは自分の世界へ帰ってくるとニヤニヤしていた。
「天照、陽を司る神様か・・・確かに力は凄いけど中身は最高神を名乗るにはまだ未完成かな。彼女は勘違いをしている。それが命取りなんだけど気付いてないんだね。本質は神なんて人間と何ら変わらないって証明しちゃったな」
独り言を喋る少年。もしも誰かがここにいたのならそう表現しても過言ではない。事実、今のリンからは神性の如き覇気は出てない。しかし、見た目とは裏腹にその顔は策士。そう形容するに相応しい表情であった。
「彼女は神こそ至高、まるでそんな風に言っているかのようだった。確かに僕達は世界丸ごとどうにか出来る力を有してるよ?でもね、僕はそんなに完璧じゃないんだ。そんなに完璧なら世界の命運を蒼矢、ライラちゃん、ヴィーラくん、アリシアちゃん、ディール。彼らを中心とした人達に頼らなくてもどうにか出来てたはずだもの。君達もそうだろう?自分達が太古に生んで放置してきた課題をその矮小な生物にどうにかさせようとしてるじゃんか。そこが君達の弱点だというのに・・・そうは思わない?ローリエ?」
「そうね。坊やにはとんでもない迷惑かけてしまったものね。亡きイーヴァースもそう、私達3柱は完璧なんかじゃなかった。なのにそれが最善だと信じてその後を考えなかった愚か者だものね」
緑髪のスレンダーな美女。身長は160cm程のこの女性こそ、生命の神、ローリエである。
「で?蒼矢君はどうだった?」
「そうね・・・とてもいい子。でも心配だわ」
「ん?なんかあったの?」
「あの子ったら・・・私の胸に全く興味を持たないのよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・はい?」
「だ・か・ら、私のこの豊満な双丘に興味を示さないってあの子男として大丈夫なの?」
「いや、紳士って事で良くな」
「ダメよ!!」
「ええ・・・」
この時リンの脳内では
(ライラちゃんとか蒼矢の使い魔のグロニスちゃんだっけ?あの子達に負ける程度しかボリューム無いのに何言ってるんだろう・・・豊満の意味理解してるのかなこのおばさん・・・)
と思っていた。
「リン?何か失礼な事考えてない?」
「なんも?」
「本当に?」
「うん」
実際の所、ローリエはD、ライラはFでグロニスはGである。リンの目は正しかったのだ。
次回は異世界組です




