53話:臥龍山の戦い
俺は同じ戦線で戦わないとはいえ一応出立式には参加しといた。
土師 耀厳は悪逆非道の数々を尽くす云々とか演説を始めている。凸守を含めて皆が聞き入っているのを見ると、人を纏めあげる素質はとても高いのかもしれない。本人としては恐らくやんちゃしすぎてる友達に少しだけ痛みを教える程度だと思うが、他の人達にはそんな言い方では示しが付かないからこその巨悪を討つかのような言い方だろう。
さて、俺はと言うと、ベラ達が付いたというのでその居場所の逆探知中である。少なくとも山口県とか静岡辺りまでにはいないのか。ど本命はまさかそっちだったりして。
お、発見。場所は・・・群馬とか栃木の辺りか?こっからだと結構離れてる。分散させる事の意味なんて本命を隠すって言うのがセオリーだからな。とりあえず動きがあったら報告頼むっと。
式もそろそろ終わりっぽいから。気付かれないうちに抜け出しておこうかな。グロニスと合流しないといけないし、リッタを呼ぶ必要が無いかを見ておく必要がある。俺の隠密を破れる奴なんていない。自信があるからこその独断だ。
抜け出して早々、彼らの目に付かない場所へ移動する。そこでグロニスを呼んだのだが・・・
「むにゃ・・・んみゅ?マスターじゃないか。おはよ」
「・・・お前、寝てたのか」
「?そうだけど?」
「出来るお姉さんモードに入るまで時間かかりそうだなぁ・・・」
「今日の営業は終了です」
「よし分かった、臨時営業を頼むわ」
と、他愛のない話をしていると
「お?この魔力反応は・・・神話時代の怪物か?」
「これはヤバいな・・・人間じゃ本来勝てない代物だぞ」
「あ、やっと目覚めた」
「ああ、本当の意味でおはようだマスター。今回ばかりはリッタも召集すべきだ。あの勇者パーティなら軽く倒せるだろうけどそんなメンツは私達でしか代替にはならない。ベラ達も終わり次第呼ぶべきだ。こいつは・・・強いな」
「だな。八岐大蛇を信じるとしたらマジで十拳剣クラスの霊剣無いと完封なんて無理なんだが!?どうしよう」
「マスターの愛刀ならばどうだ?あれには光の精霊が力を貸していたはずだが」
「呼んでも良いけど、こっちにまで精霊が干渉出来るかが分からないんだよなぁ」
「それは心配しなくても良いよ。彼女は君を気に入っている。正しい行いの為ならどうにかしちゃうと思うよ」
「ん?なっ!あなたは!?」
「久しぶりじゃん。リン」
「久しぶりだね。本当は干渉するの良くないんだけどこの世界の神が怠惰すぎてね。簡単に来れちゃった」
いつの間にか背後にはこの世界から見て異世界の神であるリンが立っていた。
「いや、てへっってやられても・・・ってそれがマジなら凄く楽に倒せるんだが?」
「うん。霊峰に住んでる古代龍と2時間やりあったパーティのリーダーで、ディールとタイマン張れた勇者なら軽く倒せると思うよ?それじゃ、またお邪魔しに来るね」
「お、おう。って行っちゃった・・・」
「なんか杞憂に終わりそうだがとりあえずリッタ呼んどこうぜ?」
「ああ。久しぶりに手ごたえあるかもしれない相手との遭遇だからな・・・つまんなそうだから最初オリハルコンの剣で頑張ってみるか」
「ここに来て舐めプかますのか・・・さっすがうちのマスター」
「褒めてはないよな?」
「まあな」
「まあ良いや。とりあえずは召喚終わりそうになったら本格的に近づくって事で」
こうして世界の脅威になり得る筈の怪物は人間に倒される事が決定したのであった。
「天道、久しいな」
「そうだな、耀厳。一体そんな大所帯抱えて何しに来たと言うのだ?」
「惚けるな。何があろうともこのような行為を私が見過ごすとでも?」
「相変わらず変わらないな、耀厳。お前はいつもそうやって正しい。ああ・・・そういえばその正しさと強さで私を助けてくれたのもお前だったか。あの時は助かった礼を言うよ」
「・・・何が言いたい」
「私はね、お前に憧れていた。同時に好ましくも思っていた。だが」
立ち上がったかと思うと、眉間に皺を寄せ喉を壊すかの如き声量で叫び始めた。
「貴様はいつもそうだ!私には無い物を持っている、それを威張る事もせず、日々精進し続ける。何故傲慢にならない?何故整然としていられるのだ!貴様も知っただろう!?この世は残酷だ、この世は不平等だ、この世は貪汚な者が勝つ!まさしく地獄!穢土というに相応しい!そんな時世でそう生きるお前が私は憎いのだ!」
「そうか、主張は分かった。なればこそ分からぬ。天道、主はその穢土に染まってしまったのだ?その口振りからするにその地獄とやらを忌避しているのではないか?」
「妻を、愛を失って尚強く生きようと思った。正しく清く生きようと心がけようとも、我が子供たちには愛想を尽かされ、何も上手くいかなかった。だが、自らを畜生に堕とす事で全てが上手く行き始めたのだ。悟ったよ、世の理には逆らうな。その理の中で足掻けばいい。そうすれば全ては上手く事が運ぶのだと。そして今、私の大願は成就する。頼もしい部下たちを持って良かったと思っているよ」
「大願?その召喚陣がか?私にはやはり理解出来ない。主が今言った言葉の全てが」
「理解してもらいたい等とは思わん。貴様も、凸守様も、誰もが私と言う人間を見誤っているのだ。私と言う人間を知っていれば、悠長に話などしていないだろうにな」
「さっきから大人しく聞いていれば戯言ばかり。反吐が出るな天道」
「フフフ、フフフフフフ、ただの若造が偉そうに。貴様も貴様よ。力を過信し、人を蔑ろにした結果がこれでは無いかね?」
「どういうことだ?」
「貴様らが邪魔しに来ることは分かっていたよ。そして還暦間近の私では勝てないだろう。ならば、勝負なんてしない判断をするのは自然の摂理では無いかね?」
「正論ではあるが・・・」
「!!まさか!そこの召喚士達!逃げろ!死ぬぞ!」
「え?」
皆がその意味を理解出来ない中、召喚の儀式を執り行っていた6人の体が首と胴で分かれる。
「な!?天道!貴様は!」
「不覚だ。救えたはずだ。そうだ、私が甘かった。かつての主がまだ生きていると思っていた私が馬鹿だった!お前にとって頼もしい部下は捨て駒と言う意味か!」
「アッハッハッハッハッハッハッハ!!ったり前だろうがぁ!俺の為に命を落としてくれる、俺の本心に気付かないままに動いてくれる。そんな存在は頼もしいだろ?そうとも!最初から彼らは生贄さ。最後の人血は彼らだ。勝てない勝負などする筈も無かろう」
「見下げたクズと言うべきだな。こやつは、生かしておいてはならん。総員、命を刈り取る覚悟をせよ!」
「逃げないのか?」
「・・・何?」
「この怪物は術者を失った事で制御を失うのだ。現世に顕現した瞬間から本能のままに暴れだすだろう。仲間を捨てない貴様は即座に逃げ出すと思っていたがな」
「お前も死ぬぞ!天道!」
「死んで良いんだよ!俺の守る者は既に無い。これ以上生きる意味などある筈も無かろう。妻を殺した4人のあいつらは屍にした後無人島に縛り付けてきた。悠久の時の中で生きてもらう為にな。もうやり残したことは無い。あー、早く、早く私を」
「くっ、どうすれば良い・・・どうすればあいつを救える・・・あいつに間違いだと気付かせられる」
「何をしている!一度退避だ!立て直す、いや戦力を整えるぞ!今のままではどうしようもない!」
「致し方なしか。総員、一時撤退!」
その後すぐに咆哮が轟く。この出来事は後に戦地となった場所から「臥竜山の戦い」と伝説のように語り継がれるようになるのだった。
いざ、開戦!
ま、蒼矢が強すぎるので2話くらいで終わる予定ですが




