50話:準備、そして邂逅
やっと執筆の時間取れました。
1日開いてしまってすみません。
あれからどれだけの時間が経っただろう。気付いた時には高速道路を降りて一般道を走っていた。
特にあれから会話は無く、俺はネトゲ仲間にイベントを任せきりで申し訳ない事くらいしか考えてなかった。
事情聴取の最中には、母さんや詩歌は大丈夫だろうかと考える余裕くらいはあった。俺は無実では無いが悪くはない。でも、人間は連れていかれたというだけでそいつがやったんだと、事実を知りもしないで疑いたがる性分だ。その視線に家族が晒されていなければ良いと思う。なんにせよ、今の俺は信頼回復が終わったらいっその事この世界とおさらばしてやろうと思っている。こんな不毛な世界で燻るだけなら向こうの世界にはまだ俺がやるべき事は多く残っているだろう。命には限りがある。なら、より有意義に使うべきだ。この世界の神様と言うのは俺の事が大嫌いだろう。ならそんな世界に一秒でも長くいてやる義理は無い。
それにしても、颯斗や東雲達がいるにも関わらずこんなに冷静に捨てようと思えるなんて俺は余程向こうが好きなんだな。久々だ、ここまで心底疲れたのは。
「おい、聞いているか?後10分もしないで着くぞ」
「了解」
「・・・なにやら考え事をしているようだな。今回の一件が終わったらリフレッシュでもしたらどうだ?」
「リフレッシュ・・・俺にそんな安息があるとでも?」
「フッ、君の年相応さがやっと見えたよ。安息、休息は自分で作り出すのが大人さ」
「ハハハ、確かにそうだな。正論だ」
そんなことは言われなくとも知ってるさ。向こうの世界では当たり前だったから。なんで帰って来てまでそんなどが付く正論を言われなきゃならないんだよ。こちとらまだ15,16歳やぞ?元服?ちょっと何言ってるか分からない。
ふと携帯を見ると相楽、香坂、颯斗、煉牙から凄い量の連絡。はいはい、帰る時に折り返すから待っててな。
「なんだ?女から連絡貰って嬉しいのか?」
「女は女でも友達だよ。嬉しいように見えるなら、警察に捕まった俺みたいな奴をまだ心配してくれるいい奴がいるんだなーって事に感動したんだろうよ」
「本当にこんなことに巻き込んでしまいすまない。こんなことになったのはお目付け役である俺の責任だ」
「なら、どうにかその責任取ってくれよ。辞めろなんては言わないからよ」
「手厳しいな。辞めて責任を取るのが一番楽だというのに」
「あんたはまだこの国に必要な人間だ。俺とは違って。それに、辞めて終わりにされたらこっちはどうすりゃ良いんだ?って話だ。冤罪を謝って終わりなら信頼は地に落ちたままだろ?それではいそうですかなんて言える器量は俺には無いからな」
「それを許せるのは余程の馬鹿か既に人生終わった人だけだろうな。だが一つだけ言おう。君は必要とされているよ。さっきの連絡がそうじゃないか?」
「俺は言ったぜ?国ってな。俺はどう足掻いてもこの国に一切の貢献はしてやりたくない。あいつらの誰かが政治家か社長にでもなって頼ってくるってんなら良いさ。でも、そうじゃなきゃ俺は何もしない」
「君ならそれを実行出来てしまいそうだから怖いな。さて、着いたから行くぞ」
俺達は車を降りて山へ入る。
そして俺は後悔するんだ。こんな力を持ったことを。
「リッタさん。それ・・・本当なんですか?」
「はい。マスターはどうやら冤罪により捕まったとのことです」
「何かしたいけどどうすれば良いのかな・・・彼を助けるには」
「私達はもう今後の方針は決めたのでそれに従いますが、あなたはどうなさいますか?」
「天ちゃんに連絡を取ってみます。土師なら土御門の権力をどうにか出来るかもしれないから」
「そうですか、健闘を祈ります。少々離れるのでその間に連絡を取ってください」
そうしてリッタはどこかへ飛んでいく。
「ここ電波はあるから連絡しないと。でもどうやって切り出せば・・・迷ってなんかいられない」
電話をかけるとすぐに出てくれた。
「もしもし」
「天ちゃん。お願いがあるの」
「ま、待て。桐生蒼矢の事ならこっちでも動いている。なにやら捕まったようだとは聞き及んでいるが」
「彼は何も悪くないの!私を助けようとしただけなの!」
「?どういう事だ?」
あの時の事を説明する。
「なるほど・・・お館様には話しても?」
「助けてくれるなら」
「分かった。お館様は多忙だから頃合いを見計らう必要はあるが話してみよう。では失礼する」
「あ、うん」
電話は切れた。何やら焦ってる感じだった。
「彼に頼りすぎたのかな。それがいけなかったのかな。無事でいて・・・」
私は祈るしか出来なかった。
「天よ、それは誠か?」
「はい。真綾より聞けた話ではそのように」
「罠の可能性・・・考えてみるべきでは?」
「真実だとすれば非人道的を逸した行為であります。我々も見過ごすわけには参りませぬが・・・」
「そうだな。弥生、朧。両名はこの件の詳細な情報を集めてこい。出来れば2時間以内に」
「御意」
2人の忍は消える。
「2時間とはまた無茶な・・・」
「此度は刑事事件だ。何か手を打つなら早くしなくては手遅れになる事もある。少なくともメディアが嗅ぎつける前にだ。この事が公に知られれば我々は得体の知れない怪物として認知される」
「確かに・・・」
「うむ。天よ、報告大義であった。これにて臨時会議を解散とする。以上だ」
「はっ!」
部屋には耀厳しかいなくなった。ふと言葉を漏らす。
「天道、君は言ったな。何故俺に勝てないと。当たり前だ。真の強者は負けも勝ちも認められるものだ。此度、君は自分の孫でもおかしくない子供に権力を振るったんだ。もう君を止めるべきだろう。若き頃のかの武勇伝はどこへ行った?背にいる人々を守りながら、傷だらけで帰ってきた君を笑った物はごく僅かの弱者のみ。あの格好良かった君をもう一度だけ見たかったよ。そんなに妻を失った事が、憎いのか?」
どこか寂しそうな、どこか懐かしいような、そんな郷愁の記憶の感傷に浸るかのような顔を浮かべていた。
「かつて、友として高めあったな。そして共に今や当主。君にこれ以上の罪は犯させない。君が彼を陥れようとしたのが事実なら・・・」
そして電話をかける。
「もしもし、凸守様でございますか?協力の要請をいや、協力していただきたい事がありお電話を差し上げました。内容ですか。・・・単刀直入に言いましょう。共に土御門 天道の暴走を鎮めていただきたいのです」
「なんだか濃いな。この山」
「だろうな。今まさに儀式準備の真っ最中だろうからな」
「てか、なんで俺は警察署にいたかと思えばまた山にいるんだよ」
「そうぼやくな。さて、そろそろ約束の集合地点だ」
少し開けた場所には天幕やテントが設営されていた。
「これから土師当主、土師 耀厳と会う事となる。そこで最終準備を行う算段だ」
土師・・・直接の接触は堂本くらいしかしてこなかった派閥か。
天幕の中には白髪の混じった存在感に満ち溢れているおじさんがいた。所謂イケオジってジャンルかな。
「初めましてだね。此度は斯様な場所に足を運んでもらってすまない。私は土師 耀厳と申す物だ。天を突然嗾けてしまってすまなかったね」
「彼女ですか。ええ、まさか初日に堂々と告白されるなんて思いもしませんでしたよ。こちらも自己紹介を。ご存じとは思いますが桐生蒼矢です」
「なるほど、挨拶を返す事は知っているのか。ここに呼んだ目的は聞いているね?その算段だからもう簡潔に言おう。我々と共に戦ってくれ。蒼矢君」
笑って俺は答えた。
「お断りします」




