45話:敵は強大で雑魚
なんか外野がうるさかったので心臓とかの生命維持に必要な部分以外麻痺させといた。
俺はこの時ある事を考えていた。やはり八岐大蛇騒動は相楽や堂本と言った能力者達の噂で俺をおびき出す為の餌だ。つまりは、俺が家の周辺にいると不都合なのだ。何故なのか。ずっとこれを切り伏せた時から考えている。
念の為他の使い魔にはいつでも動けるようにはしてもらっているが果たして何が起こるのやら。
そしてこの大きな蛇。明らかに討伐に時間がかかりそうな奴だが、これはあいつらも何を召喚したのか知らないと言っていたのだから俺を引き離しておくには無関係だろう。
討伐と称して殺すのは簡単だが、それでは勝手に喚ばれて訳も分からず殺されるこいつが可哀想だ。という訳でここは謝罪をして聞いてくれなきゃ威嚇をしてみる。生物は強いものにひれ伏しやすい習性がある。なら、お前より強いと言ってやれば大人しく言う事聞いてくれるだろう。
「まずは詫びる。人間の勝手な都合で呼び出してしまった事、後ろの奴らに変わり謝罪する。私としては戦いたくない。だから、元の居場所に戻す手伝いをするから敵意を無くしてはくれないだろうか」
頭を下げる。異世界ではたまにこうすると話に応じてくれるのもいた。正直人間より話しやすい。
なのだが・・・
「シャ~~~~~!」
威嚇で返してきた。
考えてみれば人間の言語など分かる筈もない。向こうの怪物が人生経験豊富だったというだけか。
ならば
「ごめんな。俺に従え」
「!!!」
殺気にも似た威嚇。リッタが横で「流石でございます。マスター」と頬を赤らめている。今の俺ってカッコイイのかな。
「よし、教えてもらうぞ。君はどこにいたんだい?」
「なるほど、これが彼の言語ですか。私が訳します。知らない。分からない。ただ、この場所ではないとの事です」
「リッタさん蛇語分かるの?」
「はい。彼らは特殊な音でコミュニケーションを取ります。その音パターンさえ知っていれば誰でも分かりますよ」
「異世界とこっちってそういう所変わらないのね」
「さあ?もしかしたらあの世界の怪物を召喚したのかもしれませんし、偶然同じなのかもしれないですが」
「てか、俺の言葉理解してたのか」
「ええ。最初の威嚇は僕に何する気?って感じでした」
「あ、そうだったのね」
「シャーー、シャーー?」
「簡単には帰れないのは分かってるけどどうやって?って聞いてますね。話に乗る気はあるようです」
「それはお前の足元、いや尾元か?の召喚陣調べるんだよだから少し待っててな。その前にあいつら眠らせとくか。スリープ」
ここからは聞かれてはいけないので召喚した奴らを眠らせといた。
解析する事15分。
「オッケーだ。こいつは異世界から飛ばされてる。ただ、リッタ達のいるあの世界じゃない。そんじゃ転送するか。リッタ、手伝ってくれ」
「はい。マスター」
世界を超えた転送など常人では出来ない。俺とリッタだから出来るんだ。あ、魔王とかベラ達でも出来るけど今いるメンツではって話な。
「座標、特定。周囲に人、いません。今ならいけます」
「よし、そんじゃ。パラレルテレポート!」
この技は異界に何かを飛ばす時に使う技だがあまりに多用しすぎるのはご法度なので誰かと一緒、使い時が適切かを判断する人がいて初めて使って良い事になっている。
「よし、これで一件落着か。さて帰ろうかな」
「そうですね。楽しいデートでした」
「デートか・・・うん。楽しかったな」
「私とのデートを喜んで・・・またデート行きましょう!」
「ああ。行ければな」
横で屍のように眠っている奴らを放っておいて帰ろうと思った時だった。
パリンッ
「ん?傀儡魔が割れた?相楽に何かあったって事か!悪い、全速で戻る。後で合流しよう」
「え?あ、ちょっとマスター」
脇目もふらずに飛翔する。
「はぁ、今だけは私を見てほしかったんですけどね。でも、ご友人の為に本気で助けに行くそのお姿。私はそれに惹かれてしまったのでしたね。お役に立つためにも私はあの無人島に行くことにしましょうか」
リッタは小屋のある無人島へ飛んで行った。
尚、召喚していた者たちは1時間弱で目を覚まし、血が止まっていて動けたので天道への報告の為に歩いて行ったそうだ。
「真綾、なにゆえだ?何故逃げるのだ?」
「何故ですか?当たり前でしょう。事あるごとに私を監視し、豪を唆し、更には私の友人にまで手を出す始末。そんな人たちに待てと言われて大人しく待つとでも?頭が空っぽなのも大概になさい!」
「減らず口は叩けるようだな。威勢が良くとも奇襲を喰らって急遽逃げ出したのだ。そう長くは逃げられなかろう。事実、こうして我々が目の前にいるのだぞ?」
「・・・そうね」
相楽真綾は追い込まれていた。孤立無援という言葉をまるで体現したかのような状況。或いは四面楚歌と言うべきか。彼女自身は土御門のルーキーの中では優秀な方だが、前線で何年も戦ってきた奴に勝てと言われたら相討ちが良い所。それでなくとも桐生蒼矢という異質な強さを持つ存在を前にして自信など無くなっていた。そんな彼女では暗殺部隊と遊撃部隊に囲まれたこの状況は必死である。詰みなのだ。
「ふむ。だが、強い事は認めよう。まだ目が死んでいないというのは凄いものだ。大人しく我が当主とその側近達に従っていたらこうはならなかっただろうな」
「ええ、私の力なら上役になれたでしょうね。でも、倫理を捨て、人道を欠いた集団の中で腐るなら、足掻いた方がマシよ!」
「そうか、ならば攻撃あるのみか。総員仕掛けよ!」
降りかかる無数に見える術と弓の嵐。彼女は近隣の林へ逃げた。住宅街を走るなら大きくは出れなかっただろうに判断を誤ったのだ。
(これは・・・よけられないかな。父上、母上。先立つ不孝をお許し下さい。天ちゃんも仲良くなれたけどもう話せないや。東雲さん、伊藤さん、崎田先生、颯斗君、煉牙君、皆の顔が思い浮かぶ。願っても良いなら)
「もう少しだけ、生きてたかったな」
「でしたら、それこそ足掻いてみては?」
「え?」
「な?貴様、何奴?」
「我らの術を全て打ち消した?」
「弓矢が・・・粉々に・・・」
「あなたは?」
「なんとか間に合った~。大丈夫?真綾ちゃん」
「詩歌ちゃん?どうしてここに・・・」
「それは後で。ハダルさん」
「ええ、あなたは彼女の守護を。殲滅は私が引き受けます。マスターに直々に鍛えられたその力。期待していますよ?」
「任せて!」
「チッ、邪魔が入るか。皆、警戒をせよ。そこの男・・・強者だ。儂では勝てんほどの」
「土御門現トップと肩を並べるあなたより強いと仰いますか?」
「そうだ。そこの者、ハダルと言ったな。何故我らの邪魔をする?貴様には関係なかろう」
「関係?大ありですよ。私が敬愛する主人が貴方がたのお陰で遠方にわざわざ出向かれていますので。本来家でゆっくり過ごしていただける筈だったものを・・・そういう恨みがございます」
「遠方?桐生蒼矢の関係者か。貴様のような男を従えるか・・・彼は何者なのだ?」
「我が主人の事をそう易々と教える訳が無いでしょう。もしや躻者なのでありましょうか?そのようなお方に常識を言ってしまい大変失礼いたしました」
「貴様ッ!ぶち殺してやるわ゛!」
「ハハハハハ。化けの皮が剥がれるのも早かったですね~。さっきまでの出来る人感どこへ投げ捨てられたのです?そういえば、世界記録なる物があると聞いております。そちらに世界で一番の愚者と名を刻まれてみては?」
「死ね!」
「おうおう、怖い怖い。ん?あーあなたの振るう剣ではありませんよ?そんな剣筋では主人には遠く及びませんので恐れてしまっては主人に失礼です。顔ですよ顔。その醜い皺の寄ったお顔でございます」
「切り殺してやるわ!!」
「ハダルさん・・・めっちゃ煽りますね」
「単純な人はこうしてあげるのが一番です。しかし、些か遊びに興じるのも飽きてきました。ですのでこちらも少々」
瞬間、腹部が熱くなるのを感じた。
「は?」
「内臓に行っては死んでしまいます。ですので皮下脂肪の部分のみ少々切らせていただきました」
「ぐぁッ!痛い、焼ける!誰か助けを」
この時間、詩歌以外の誰もが相楽真綾など忘れていた。だからこそだ、この場にいるはずの無い奴の接近にハダル以外は気付いていなかった。
「さあみなさん。前座としてお送りしましたこの寸劇、いかがでございましたでしょうか。それでは真打のご登場にございます。皆さま、最後迄お付き合いいただければ幸いでございます」
まるでタイミングを合わせたかのように相楽真綾の近くに降り立った青年。
誰もがその名を口にした
「(桐生)蒼矢!」
人に刃物はまず向けるのがダメなんだよなぁ・・・良い子は真似しないでくださいね




