43話:課題、片づけます。
夏休み開始4日目。決着を付けるべき時が来たようだ。
「詩歌、やるぞ」
「蒼矢、やろう」
「この忌々しき宿題に今こそ決着を!」
「何してんの?あんた達」
あれ?姉貴が引いてる。姉貴も乗ってくれるかと、って無いのかよ!レポート課題無いのね。羨ましい。別に苦手じゃないし好きだけど夏休みを潰してまでやりたいかと言われれば絶対やりたくない。てなわけでさっさと仕上げよう。これが終われば学校からの課題とはおさらばだ。
「まずはテーマを確認!日本の学会で議論されてる物について調べ意見を書く。A410枚書きゃ文句は無いだろ!」
「師匠!私、邪馬台国の場所とか信長結局どうなったん?論争しか知りません!」
「つまり、それで良いんだ!同じテーマは使わない方針で行く!弟子よ!どっちが良い?」
「信長の方が纏めるの楽そうなのでそっちで」
「よし分かった!俺は邪馬台国やる!」
「そのテンションさ・・持つん?」
「持たないな(ですね)」
という訳でやり始めたが、邪馬台国は面白いったらありゃしねえ。箸墓古墳の位置から考える説、書物に記載された距離からの計算による説。色々出てくるが俺は思った。
(ま・・・待てよ?そもそも239年頃に古墳なんてあったのか?仮に小規模の墓があって後世の奴らがオー、ヒミコサマノオハカジャナイデスカ、リッパニシナキャなんて思って追加したとしたら?クソ、考えが纏まらねえ)
「なんだろう、うちの弟大丈夫かな。アホな事考えてそうな顔してる」
この姉貴は本当に失礼だな。大真面目に考えてるわ。
「待てよ・・・もしこの記述を正しいとするなら邪馬台国の王は卑弥呼なのかって事が疑問になる。仮に卑弥呼は王でなく象徴だとするなら」
「え?何ぶつぶつ言ってるの?怖いんだけど・・・」
それから1時間かけて考え続け結論に至った。
「俺はこれで行く!」
俺の考えはこうだ。なんだか長期間内戦が起こっててどうしようなんて思ってた男どもが「女の子ならみんなデレデレになるんじゃねえか?」的ノリで、アイドルみたいな感じでみんなのマスコットキャラクターみたいな感じにしたのが卑弥呼。それを知った魏の皇帝は「親魏倭王は卑弥呼にあげよっかな」と考えた。だから卑弥呼が王女になってしまったんじゃないか。
相当な暴論を考え付いたようだが蒼矢は気付いていない。この考えにはじゃあ、国がどこにあったのかを含まれていない事を。それに気付くのは清書が7割ほど終わってからであった・・・
「あれ?これって結局何を結論付ければ良いんだっけ」
そうして思い返す。そして気づいた。
「あれ?この内容だと邪馬台国何とか説にならないんじゃ・・・やってもうた~~~~~」
「うるさいわね!静かにやってよ」
「あ、ごめんなさい」
「今日の蒼矢面白いね。夏休みの宿題ってこんなに楽しいんだ」
いやいや、詩歌さん。宿題楽しめるって凄い事よ?普通は嫌で仕方ないから終わったらご褒美とかで進めるものだからね?
ここからまた2時間くらい唸り続けるのであった。
「あんた達?まだやってんの?ご飯にしましょ?」
「あ、母さん。了解。手詰まりだから休憩するかな」
そうしてリビングに行く。ふと気が付いた。
(国があるべき場所は当時その国を一番統治しやすい場所。仮に近畿に大和朝廷的なのがあったとしたら・・・書ける!これはもろたで!)
「母さん悪い。10分で終わらせるから待ってて!」
「あ、ちょっと」
俺は再度机に向かう。
「そう、九州にもすぐ行けて周りを海に囲まれている場所。邪馬台国が実在するなら山口だ!」
遺跡などは調べていないで出した結論だった。ただ、国交をするならとにかく海に囲まれていて、色んなものが出土している九州に程なく近いという理由だけで選んだのである。とても学年トップクラスの成績の持ち主の考えとは思えない。
そうしてレポートを終わらせた蒼矢は得意げな顔をしながらリビングへ向かっていった。
午後、蒼矢は小屋づくりの為に無人島にリッタと共に来ていた。
「なるほど・・・日照自体も浜辺なら悪くないですね。ここなら1ヶ月は確実に過ごせるかと」
「オーケーだ。そんじゃ建てる場所探しに行くか」
「はい」
島を歩く事僅か10分。
「ここじゃない?」
「ここ以外良さそうな場所は見当たりませんね」
木が良い感じにまばらな場所を見つけた。
「危険性などを調べますので待っていてください」
「お、ありがとうな」
そうして調べていると気になる事があった。
「マスター、こちらへ来ていただけますか?」
「どうした?」
「この釘・・・何でしょうか」
「あー、あるなぁ。俺も探すから手分けしよう」
「了解でございます」
調べていくと計4本も見つかった。だが、藁人形は無さそうなので呪いの類では無いだろう。なら何のために・・・
「抜いてみますか?」
「いや、浄化とか出来る事だけして放置しよう。下手に触らない方が良さそうだ」
とりあえず浄化の最上級魔法と罠看破を使っておく。後は何かあればリッタならどうにか出来る。という事で建設をしていくのだが
「この感じだと平屋で広さは目いっぱいか?」
「そうですね。お風呂用の水などは私がどうにか出来るのでお風呂と食材用の氷室を用意していただけると有難いです」
「とりあえず部屋は7にしとくか。それぞれの個室1つずつと5つあればどうにかなるだろう」
「そうですね。お願いいたします」
「そんじゃ、創造魔法 我が求めし物 ここに顕現せよ! クリエイション!」
俺がイメージしたとおりに家が出来上がる。向こうの世界でも一瞬で家が建つとか大工とかの専門職が涙目になると言われて使えなかった。今こうして有効活用出来るとは。
ベッドは柔らかくなんては行かないが出来るだけ柔らかめに。生活性はきちんとこだわった方だ。出来ればこの家が使われない事を望む。騒動が終息したら速攻で片づけるからそれまでの役目だ。
さて、家が完成した所でリッタから提案をされた。
「幻術、勉強されたとお聞きしました。私の得意魔法も幻術なんです。手合わせしてみませんか?」
と言われたので砂浜でやる事に。俺が使う幻術はそこにその存在がいると見せる技だ。だが、リッタが言うにはそれでは極めたとは言えないという。それを見せてもらうのだ。
「それじゃ、行くぜ」
「いつでも来てください。マスター」
まずは初手
「幻術 蜉蝣迷宮」
「これは・・・疑似的な迷路で方向感覚を失わせる幻術の類ですか。当日のうちに習得したとは思えない完成度ですが私には届きません」
次の瞬間、術が破られる気配がした。こんな小手調べでやれるなんて思っちゃいない。でも、早すぎだ。向こうとは術の形態も違う。目の前の女の子が強敵だと思わされた。
「なら、瓦解氷銷」
「氷の中に閉じ込める幻術・・・いや、違う?そっか、自分が崩れていく様を見せて戦意を無くすんですか。厄介ですが、リフレッシュ」
「な、なんだと?」
「こういう錯覚系の幻術は予め正常な自分を定義しておいてそれに戻せるリフレッシュのような魔法で簡単に解けてしまいます。ではこちらも。アクノ・ヴァルカン」
「ちっ、炎の幻術か」
さっき言ってた通り正常な俺を定義して、
「リフレッシュ!」
よし、なんとか解けた。
「やり方をお教えしてすぐに出来てしまうとは、やはりセンスがおありですね。ですがこれは破れないでしょう。マキナ・クロノミアス!」
「なんだそりゃ、ってなんだこの巨人!?うぉっとあぶねぇ」
「この術の真骨頂はかすった部分に痛みがきちんと生じる事です。どうなさいますか?」
「クソ、やるしかねえか。リッタ!とっておきを見せてやる!止めてみろよ?」
「受け止めて差し上げます」
「なら、百花繚乱 秘術 千本桜!!」
「なんだか格好いい名前ですね。あれ?ゴーレムが止まった?何故。破られた感覚は無いのに・・・あ、そういう術なのですか。この世界の幻術も侮れませんね。まさか、幻術に幻術をかけて無効化するなんて」
「それだけじゃないぜ」
「枝が!動けない・・・これがその秘術の強みなのですか。解いても良いですが、幻術を上書き出来るのは私も可能です。暗黒魔法 秘術 カオス・ダークマター」
「何をしようと無駄だぜ。この術は最強・・・ってあ、足場が無い!浮いてる?」
「これが私の持つ技の中でも上位に入る技です。全ての物を奈落へ落とすかのような錯覚で一発逆転も狙える秘術の中の秘術です。まさかこれを使わされるとは思いませんでしたまだやりますか?」
「これが聞かないなら完敗だ」
「ド素人とは思えない程強かったです。時間がある時で構わないので私がお教えしても良いですか?」
「ああ、宜しく」
「はい!やっとお役に立てる・・・嬉しいです!」
こうして幻術の再修業が決まった。本当、休む暇が無いな。
※本文中の蒼矢君の暴論は根拠が全く無い物なので、信用してはいけません




