3章 40話:夏にやるべき事は早急に片づけないと
3章開幕!初手、主人公、クズになる(某小説風)
夏休み初日、俺達は宿題を片づけていた。
「蒼矢、ここの答えは?」
「そこは6p3だな」
「ねえ、蒼矢。この人物分かる?」
「カノッサの屈辱だから・・・ハインリヒ4世とグレゴリウス7世だな。ってなんで年下に聞いてんだよ姉貴」
「いやー。蒼矢なら分かるかなって」
「さいですか」
レポート課題以外を初日に終わらせるという目標の元に3人協力プレイをしている。詩歌も姉貴も頭いいので2,3時間あれば終わりそうだな。
俺は今日この後相楽に会いに行く。土御門のした事を一応伝え、あの手紙の意味に気付いたかを探る。土御門 天道。見下げたクズだが軽視してはいけない。相手は権力者、俺が実力行使に出ても良いが、悪として報道されるのは俺だ。詩歌も一緒に向こうの世界へ行くと言うなら別に構わない。この世界は腐り、汚れすぎてる。本当に俺がいるべきは向こうだろう。でも、育んくれた世界を見捨てたくは無い。
正午を過ぎた頃、
「お~わった~~」
「疲れましたね」
「とりあえず冷たい茶でも持ってくるよ」
そう言って部屋を出て気付く。
(家の外から誰か見ている?休みって言っても休めねえか)
ここで捕えに行っても良いが、それは下策。外出ついでに話聞きにいくとするか。
ベラは呼んでおこう。彼女の小ささなら相楽にも誰にもバレないだろうし、俺じゃ気付けない所にも気付いてくれるだろう。
外に出て2分。俺はミスに気付いた。
「相楽って・・・どこにいるんだ?」
「主人って主人らしいよな」
「どういう意味?」
「そういう意味さ」
相楽の居場所が分からない。こんな時にどうするか・・・
「ハダルにココア代渡せば良いんじゃないか?」
「そうだ、ハダルがいるじゃん」
そうしてハダルを呼ぶと「あのですね・・・私を喫茶店代で釣ればなんでもしてくれる便利道具と思っちゃダメですよ?」とか言っておきながら口角が下がらないハダル君が探しに行ってくれた。さて、さっきの女性もやっと追いついたし確保するか。
こういう時には彼女の後ろに移動して
「こんにちは!僕に何の用ですか?」
民家の屋根にいた女性の背後に無事移動できた。
「な?ターゲット?いつの間に?くっ、死ね!」
クナイを振り回す。
「おっとっと、危ないな~。死ね・・・死ねねー。そんじゃ死ぬ覚悟は出来てるって事で良いんだよな?」
「な?躱された?情報通りの強さ。ならば次の手」
「人の話聞かねえのかよ・・・ま、良いや」
首に手刀を落とし意識を刈り取る。
「な・・・かぁ」
抱きとめると
「そやつはどうするんだ?」
「んなの決まってんだろ?こういう密偵に失敗した女の末路なんざ」
「私にはよく分からないが・・・同じ女として嫌な予感がするな」
薄い本知らないのに察せるとは!こいつ・・・出来る。まあ、グヘヘみたいな事はしない。ただ、少しだけ尊厳との戦いをしてもらおう。
「ん?ここは・・・」
「お目覚めですかい?お嬢さん?いや、密偵さん?」
「き、貴様は?ターゲット!この京香、一生の不覚」
「ふーん。京香さんって言うんだね。って事は土御門 京香さんで良いですか?」
「しくった・・・好きに呼ぶが良い」
「この人分かりやすいな・・・まあ、やりやすいから嬉しいけども」
「やりやすい?なんと破廉恥な!?」
「は?何言ってんの?いやいや、話聞きやすいなって意味だが他に何が?」
「な・・・なんでもにゃい」
なんか調子狂うな。どういう事だ?どこに破廉恥な要素なんて・・・
「まさかとは思うけど京香さん・・・むっつりな方ですか?」
「う、うるさい。もう何も言うな・・・年上をからかうな」
何だろう・・・可愛いというより不憫で可哀想な人になってきた。
これはいじめすぎるとネガティブモードになっちゃうタイプだな。そんな時は
「さて、お遊びはここまでにして京香さん。あなたが土御門の人間なのは分かってます。目的はなんです?話してくれればこれ以上の拘束とかは止めるんですが」
「その前にここはどこだ?」
「とある廃校です。人が来ない事は確認済みなのでいくらでも時間はかけて良いですよ?」
「人が来ないという事は二人きり・・・と」
「まあ、そうっすね」
「男は獣、男は獣。何をする気なのだ」
「あんたが何の目的で俺の部屋を監視してたかを聞かせてもらいたいだけだよ。後、俺はそんな獣じゃない」
「嘘だ!男は獣ってパパがずっと言ってたんだもの。だからターゲットも獣!」
「理論としては間違いじゃないがアホなんだろうな・・・なあなあ、手を出すとしたらもう出してるとは思わねえか?なんで出してないかって事を考えてくれ?」
「・・・なんでだ?」
「考えろよ。人間ってさ追いつめられると判断力低下するじゃん?そうしたら喋ってくれるかなってね。そうだな・・・例えば、膀胱がピンチになったとしたら・・・」
「ハッ!まさか!」
「そうだよ。あんたがここで漏らそうがなんだろうが俺は関係ない。喋りたくないならそれでも良いが、あんたが言う獣にそんな光景見られるってどんな気分だろうねぇ?俺も暇じゃないから途中で消える事もあるけどあそこのカメラ・・・もう、分かるよな?」
「ひ、卑怯な!そんなの選択肢あって無いような物じゃないか」
「卑怯?陰からコソコソ人の私生活盗み見るような奴に言われたくないね。あ、それと喋らないなら水分だけは供給してやるよ。利尿作用のある緑茶だけどな」
「くっ、殺せ・・・」
この日の事を見えない所で聞いていたベラは日記にこう記している。主人、桐生蒼矢は絶対に怒らせてはならない男だと。
尚、この男。忘れてるかもしれないがかつて世界を最小限の戦いで救った勇者であり主人公である。
案外決着は早かった。決壊寸前でありったけの情報を早口で言って解放してくれとせがんできた。ざっと目覚めてから50分。トイレも行かずに張り込んでたんだろう。土御門の何がホワイトだ是孝とかいうクソ爺。ブラックって再認識させられたわ。
トイレで用を足してもらってる間に術式を展開。7分で俺に関する記憶が消えるようにした。立ち去る時もこっちの顔色を窺っていたがまるで仏のような笑み(ベラには果て無い程の不気味さしか無い笑みと言われた)で見送った。この笑顔の何に不満があるのかさっぱりわからん。
さて、手に入れた情報を整理すると、今回はどうやら俺と詩歌の2人の調査が目的だったっぽい。その前から俺の情報は集めてたらしいが突然記録が消える(空白の)時間があったり、詩歌も俺が近くに置く存在という事で警戒するべきだと思ったらしい。
「さて、これで確定だ。あいつらは俺を放っといてはくれないらしい」
「当たり前であろう・・・剣気を放ち、更には自分達の幹部クラスをあっさり退ける未成年ともなれば不気味と思うのは当たり前じゃないだろうか・・・とは言っても主人が迎撃すると言うなら無論付き合うが」
「迎撃?何を言うんだいベラ。迎え入れる必要も無い。攻撃する必要も無い。まあただ単に言えば・・・蹂躙だろうな」
「踏み潰してるじゃないかそれ・・・木端微塵とか今回のこの事知らない土御門の若者たちは本当に災難すぎるな」
そこへハダルがくる。
「居場所分かりましたよ。ご主人様、彼女は今ショッピングモールで買い物をしております」
優秀な仲間のお陰で次の目的地が定まった。




