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38話:修行

泣いた所までしか記憶が無い。グロニスの母性というか優しさというかに包まれて意識が飛んだんだろう。そこは良いんだ。


問題なのは俺が今グロニスに抱きかかえられながら眠っているような状況と言う事だ。幸い、部屋に誰かが入った形跡は無いが見られたら知らない女性の胸に顔を埋めながら寝ていたという「もしもし、ポリスメン」的展開になってしまうという事だ。学校なのでそろそろ起きなきゃいけないからグロニスを起こしにかかる。


「グロニス起きて」


「ん、んぅ。お、ますたぁおはよ」


「おはよう、学校あるからその腕をどけてくれ」


「やだ」


「え?はい?」


「やだやだやだ。一緒に寝るの」


「いやいや、何この駄々っ子。昨日とは打って変わってキャラチェンジしたな。放してくれないと嫌いになっちゃうよ?」


「それもやだ!」


「困ったな。どうしたものか」


と本気で困り果ててると


「グロニス、マスターを困らせてはだめでしょう。ほら、みんな待ってるから帰りますよ」


「ハダルだぁ。一緒におねんね」


「はいはい、家に帰ったらしましょうね。さ、手を取って」


「あい、お手」


「ご主人様、今です」


「ハダル助かった、後で喫茶店のココア代渡す」


「おお、それはありがたき幸せ」


ハダルの一計のお陰で脱出に成功し、学校の支度を始めるのだった。






それから学校では特にこれと言った事も無く、授業を受けて皆と喋り、呪術の事をより調べておくという風に過ごした。


そして、修行当日がやってくる。学校から家に最速で帰って着替えてから俺は家からそこそこに離れたある屋敷に来ていた。


「このお屋敷、なんだか荘厳な感じがするな・・・これが風情ってやつなのか」


呼び鈴は神社でお賽銭箱の上にあるあれ。そんな感じの鈴を鳴らすらしい。


鳴らしてみると綺麗な音が鳴り響く。


すると、扉の向こうから


「お名前をお伺いします」


「あ、はい。桐生と言います」


「桐生様でございますね。真綾殿が武道場にてお待ちになっております。どうぞお入りください。」


扉が独りでに開く。人の気配は無かったから恐らくシステムで動かしているんだろう。


そのまま武道場らしき所へ向かうと相楽、堂本と見知らぬ男性が一人いた。なんだか優しそうな顔してるな。


「初めまして。桐生君だね?僕は大森 豪。今回は真綾を助けてくれたようでありがとう。礼を言わせてほしい」


「別に礼を言われるような事はしてませんよ。私は自分にとっての敵の牙城を崩したにすぎません。それを好機にしたのは彼女ですから」


「それでも礼を言わせてほしいんだ。僕は肝心な時に傍にいてあげられなかった。任務に失敗して深手を負ってね。君がいなければ真綾は今も是孝様の元で働いてただろう」


「豪、その辺で。時間が惜しいわ。明日の学校もあるから19時までにします。ざっと2時間半か。基礎だけは叩き込めるかな」


「た、叩き・・・お手柔らかにお願いします」


「はい。お願いされました。では始めましょうか」


「あ、一応こっちでも勉強はしてきたから見てほしいんだけど良いかな?」


「見せてもらえる?」


「是非とも見てみたい。それによって独学の欠点が見えてくる」


「相楽も堂本も期待はすんなよ?それじゃ【射】」


呪術で作られた蜘蛛を射抜く。


「ほう、緻密なコントロールは出来ているか。ふむ。課題という課題は2つ・・・と、どうした?真綾」


「桐生君。なんでその蜘蛛を狙ったの?」


「あ?なんでも何もあいつこっちをずっと見てただろ。見られるのはなんか嫌だったから。」


「・・・桐生君。あの蜘蛛はね回廊蜘蛛っていう上級呪術の一つなのよ。仕掛ける術者も相当上でなければ使えない。それを知らずに気付ける。それに、射という基礎の技だけで上級呪術を破れる。これは一から教えるんじゃなくて、どういう発動の仕方をしてるかで足りない所を補うべきだわ。桐生君言ったよね?呪術を知らなきゃいけないって。でも、文字に効果をかけるという部分は知ってるようだし見破り方も知ってる。他に何を知りたいの?」


「幻術だ」


「幻・・・術?」


「そう。俺は幻術だけは使えないんだ。相楽なら俺でも使えそうなの知ってるかと思ってな」


「使えはするけど得意じゃないわね」


「私は得意だ。土師も土御門も基礎は同じ。基礎は私が教えようそれ以降は両家の技を教えれば良い。それでは早速始めようか」


「おう。宜しく頼む」


蒼矢が堂本から教え込まれている様子を見ながら真綾は豪に話しかける。


「ねえ、豪。桐生君が気付いてくれたから良かったけどさ、回廊蜘蛛がこの武道場に仕掛けられてるってやっぱりおかしいよ。今土御門だと私を含めて8()()しか使えない技なのに・・・あれは元々標的の動きを監視して不審な事があれば捕縛する為の技。今日ここに蒼矢君を呼んだ事を知ってるのはこの3人と屋敷主だけ。なんだか怖いよ」


「確かに回廊蜘蛛なんておかしな話かもな。だが心配しすぎじゃないか?土御門からすれば是孝様という元とは言え重鎮に全面戦争挑んで負かしてるんだ。警戒してもおかしな話じゃないだろ?」


「それは・・・そうだけど」


真綾の不安は募るばかりだった。







1時間後、豪も加わり、幻術の中でも中位までなら使えるようになっていた。


凡人では習得に5,6年はかかる難関を1時間で会得したのは規格外と言わざるを得ない。


3人は驚くのに疲れたように


「なんかもうすっとばして超級幻術教えても良いかも」


「ああ、私もそう思う。土師家門外不出の幻術を会得しても良いかもしれん。現在はお館様しか使えないが、ここにその巻物があってだな」


「ん?待て堂本。その巻物なんだって?」


「だから門外不出の幻術」


「門外不出こんなとこにあって良いのか?警備ザルすぎない?」


「見れるのだからそんな事気にするな!」


「速やかに返しとけよ」


案の定、無い事は既にバレているのでこっぴどく怒られるのだが


「後1時間半ね。桐生君の頑張り次第だとどっちも出来てしまうかも。本当末恐ろしいわ・・・」










「出来た~!つっかれた~」


「お、おめでとう。疲れたけど面白かったわ。人間って限界無いのね。桐生君見てると本当思うわ」


「私も、まさかその日のうちに終わるとは・・・露程にも思っていなかった」


「お疲れみんな。とりあえず麦茶入れたからこれ飲んで落ち着いたら解散しようか」


「豪、ありがとう」  「かたじけない」   「ありがとうございます」


口に含んで気付いた。


(このヒリヒリ感は毒か。テトロドトキシンよりはマシそうだが俺じゃなきゃ一発だな。それにこの感じは遅効性。なるほど帰る頃に倒れるようにか、やってくれるな大森)


「いや~生き返りますね。でも大森さん。これ絶対()()()()()()()()()()()ですよ。生き返るじゃすまないですから・・・ね」


「そ、そうなんですか。へ、へぇ・・・分かりました」


さて、相楽も馬鹿じゃない。こんな事をする奴を彼氏にはしないだろう。という事は相楽と離れてた期間に何か仕込まれたな。


最後に忠告だけして帰ろう。蜘蛛の謎も解けたしこれ以上の長居は禁物だ。










蒼矢が帰り、汗を落としてから帰ろうと思った真綾は脱衣所で服を脱いでる時に気付いた。


「?この紙は何かしら」


そこにはこう書いてあった。


【ゼキ タエレキチヲノ ベシラロント シララゼキコエレ

                       テキリ レワ】


「なにこれ・・・暗号?一体何なのよもうお風呂上がったら解いてみようかしら」


そう言って浴室へ向かっていくのであった。

この暗号を解く為のヒントをここに乗せます。

ヒはマ、ヅはビ。これがヒントですね。

この暗号後に話に関わってきますが、解けなくても楽しめるようにするので面倒な人はスルーしといてください

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