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34話:傷

クラスに帰るとやっぱり上手いじゃないかよと言われ、なんでやらないんだよと言われまくる。こんなやる気無い奴の試合なんて見たいか?やる気ある人の方が良くね?


その後、午前は1試合だけして休憩に入る。無論勝った。対戦相手の2年の先輩ははさっきのを見てたのか知らないけど終始、怯えたようにこちらを見ていた。いやいや、そんな心配しなくても3年から舐められてたから怖くないよ~。うん。怖くない怖くない。


そして昼休み。大所帯で昼飯を食べていた。


「蒼矢凄かったよね?みんな」


「ですね美奈さん。勝てる気が微塵もしません」


「おい、相楽。そんな事をわざわざ言わなくても。まあ、俺も勝てる気しないけど」


「颯斗に同感」


「うむ。桐生のスマッシュは迅雷の如き速さだった。なにか技名は無いのか?」


「そうだなぁ・・・顕現せよ!ケラノウス!!」


「・・・・・・・・・」


「堂本だからな?何か無いの?って聞いたの。俺はリクエストに応えただけだよ?って、おい!東雲も詩歌も可哀想な子を見る目でこっちを見るんじゃねえ!」


「いや~別に?蒼矢はソウヤジャナイデスカ」


「貴方の個性を否定しないわ」


「泣くよ?良いの?僕泣くよ?後カタコトやめよ?詩歌さん。東雲も憐れまないで?」


何故だかかわいそうな子扱いを受ける事になってしまったが、どうせここまで勝ったなら優勝してやろうかなと思った俺は午後からも頑張ろうと思った。


「ていうか、お前バド部入れば良かったじゃん。南雲先輩全国2位だぞ?あの人と張り合えるならエース行けるって」


「へぇー。そりゃ強かったわけだ。入る訳ないだろ。3年に目付けられてて、歓迎してくれんのは恐らく部長のみ。そんな魔境になんで態々突入しなきゃいけないんだよ」


「まあ、仕方ないわな。午後も頑張れよ。優勝なんてしたら女子からモテるかもしれないぜ」


「モテるね・・・ま、頑張るよ」


「おう」


俺はこいつらが羨ましい。この世界の女性は東雲みたいに何を思ってるのか分からない奴らで溢れている。伊藤は例外だ。分かりやすすぎて心配にはなるが、じゃあ、このハイテンションが俺は好きかと言われたら好きではない。詩歌もたまに策を弄してやろうフヒヒ的な顔してるし。

姉貴に至っては、昔から弟をこき使う人だし、母親もよく自分の理想を押し付けてくるタイプだった。最近でこそ変わっては来たけど。

やっぱり、そう考えると俺ってライラが好きなんだろうな。母性に溢れてて、でも甘やかしすぎる訳じゃない。でも、抜けてる所があるから支えてあげたくなる。なんで告白しなかったんだろう。いや、分かってる。違う世界の人間で俺が戻ると公言した以上、俺がそれを破る訳にはいかない。

もし、俺が向こうに移住できるなら・・・・・・こいつらとはそれっきりなのか。それに詩歌を一人で生きていけるようにしてないし・・・あークソ、踏ん切りがつかねえ、やめだやめ。午後に集中しないと。


「どうした?こっちをジーっと見て」


「ん?あー、なんでもない。そんじゃ、試合あるから行くわ」


「いってら」


さて、もうひと頑張りするか!






「やっぱり、悲しそうな、懐かしいような目をするんだね蒼矢」


みんなが応援に行った後、詩歌は一人教室に残って空を見ながら考え事をしていた。


先程、蒼矢が先輩に公開処刑されそうな時、私がどうにかしなきゃと思ったが、彼の目を見て戦慄した。

腐っても先輩。尊敬の念は抱けない物言いをしてはいるものの、それでも・・・それでも、()()()()()()()()()()()()()()を向けるだろうか。応対こそ自然そうだが、一緒にいるから分かる。あれは、大人社会に出ていない子供がしてはいけない目。自分も人と関わった時にあんな目をしていた人を見ていたから分かる。横で一緒に見ていた真綾と天も同じように思っていた。


「詩歌、真綾、桐生の目」


「ええ、怖いわ。なんであの先輩は怯えないのかしら?」


「あの視線の意味を知らないからじゃないかしら。無知蒙昧ってやつよね」


「どうする?止めに入らないと桐生の力なら(みなごろし)にしかねんぞ」


「それは大丈夫よ天。蒼矢が今の時点で手を出していないのがその証拠よ」


「そうね・・・見守るしかないわね」


というやり取りがあってのどこか儚げな視線。


「蒼矢、あなたは何をしてきたの?何を見てきたの?私じゃ、それをどうにか出来ないのかな・・・」


ふと、時計を見ると開始まで5分。そろそろ行かないと間に合わなくなるので詩歌は試合会場へ向かった。







試合会場の体育館へ向かってると


「蒼矢!」


聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「お、姉貴じゃん。学校で話しかけてくるなんて珍しいな」


「あんた!あれ本気で言ってるの?上級生の大半敵に回したわよ?この学校でスポーツの部活には入らないって、先輩達には従わないって宣言したようなものじゃない!」


「別に良いじゃん。先に、スポーツマンシップを放棄したのはあちらさんなんだし。俺がそんな奴らにへこへこする理由ある?心配してくれるのは有難いけど、俺は尊敬もしない相手に自分を曲げてまで阿諛追従して生きるなんざ御免だね。そういや、姉貴は女バレだったか。あーそういう事。女バレエースの弟がこんな狼藉ってのは見逃せないって事か。でしたら、以後気を付けますのでこの度のご無礼はお許しください先輩様」


「蒼矢・・・私はあなたを心配して・・・」


「心配か・・・で?まさか忘れた訳じゃないよな?姉貴が中学の時言った事。あんたは出来損ないだねって笑ったよな?出来損ないが出来損ないらしく頑張ったらこんな様だって訳だよ。先輩の不興買って、心配してくれる姉には盾突くゴミが俺だよ。あなたが言った通りだ。俺は本当に出来損ないだって証明できたんだから。慧眼だったって事じゃん?それじゃ。時間がギリギリなんで行くわ」


「待って!・・・」


その声を無視して体育館へ向かう。これで良い。俺は傷付く事も、嫌われることも慣れている。中学時代は姉という身内からすら心無い言葉をよくかけられた。だから、俺が悪者になる事で姉貴は弟を心配した良い人に出来る。既に嫌われているであろう俺がどう思われようが雀の涙が加算されるだけ。0を1にするなら、10を11にした方が良い。でも、中学時代の事を言ったのは失策だったな。心象が少し悪くなる。反省反省。


実際、ヒソヒソと沙羅ちゃんかわいそうと同情の声が聞こえる。あ、沙羅ってのは姉の名前だ。これでミッションクリアだ。


その後の試合は連戦連勝。決勝は


「1年でここまでの逸材がいるとは思ってなかった。では改めて、バドミントン部部長にして前回のインターハイ2位。南雲 克介だ」


「では自分も。帰宅部最速帰宅生徒になる為精進している桐生蒼矢です」


「ハハハ、それ肩書は酷いや」


「笑わないでもらえますかねぇ・・・」


「いやいや、笑うよ。それと、僕に優しさは不要だ。全力でかかってきたまえ」


「優しさ?」


手招きをされたので寄る。


「さっき、お姉さん煽ってたでしょ。あれって、自分が悪者になって彼女は弟を案じた良い姉みたいなイメージをみんなに持たせたかったんじゃないの?少なくとも僕にはそうとしか見えなかった」


「だとしたら?」


「それは君が彼女に向けた優しさだよ。まあ、彼女は結果的に少し傷ついたようだけど、それでも対人関係は良くなった。修学旅行を目前に控えてる現状では良いのかもしれないね」


「え?傷つく?」


「おや?それも計算のうちだったんじゃないの?ふ~ん、なら僕も君に対して勝てる突破口が見出せるかもね。じゃ、始めよっか」


傷つく。その言葉の意味が理解出来なかった。姉は俺を馬鹿にしていた。だからそれが正しいと肯定してあげただけ。やはり運動部として活動してるから俺の行動が許せなくて傷ついたのか?そうだと思いたいが最適解とは思えない。そして最適解が分からない。仮に南雲先輩の言う事が正しいというなら。




俺は、何かを喪失してしまった欠陥という名の傷ありロボットなのだろうか。

3章は、そろそろになるかと思います。

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