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31話:凸守 倭

寒い。モチベなんとか保たないと・・・

土御門 是孝は焦っていた。


当主、敬愛する土御門 天道から失望したと言われたからである。


此度、桐生蒼矢を調査する為に相楽 真綾を派遣した所までは良かった。しかし、看破され対峙した末に敗走。強引なやり方で失敗する等言語道断である。


そんな彼は自室で策謀を練っていた。自分の計画を頓挫させ、自分の顔に平気で泥を塗る忌々しきあのガキに痛い目を見せてやる。大人を舐め切った子供に躾をするのだと、それが自分のすべきことなのだと正当化しながら。


そうしていると先刻まで人の気配など無かった部屋にある人物がいる事に気付く。


「凸守様、お久しぶりにございます。用がおありでしたらこの老骨が出向きましたが」


「ふん、貴様の美辞麗句は聞き飽きたわ。貴様、何をしているのだ?」


「色々と考え事をしていますが」


「そうじゃない。私がかの会談で何と言ったのかまさか覚えてないなどとは言わないよな?是孝」


「それは・・・勿論でございます」


「ほう・・・という事は貴様は記憶として残しておきながら私の発言に背いたと?」


「それは・・・そうなってしまいました。しかし、これが最善なのだとそう思ったのです」


「そうして独断で動いたと・・・その結果能力者達の立場が悪くなったのだぞ?どう責任を取るつもりだ?私に責任を求めても無駄だ。土師も籠絡作戦は取ったようだがどうやら彼がどんな人間かを見る為だったようだ。奴らはギリギリとは言え私の言葉を守ったと言えるだろう」


「・・・」


「それだけではないぞ?この作戦に駆り出した女子。どうやらつい最近失敗をした故にこれを引き受けさせたとな。好く者がいながら別の男に心を売る事を強要したそうだな」


「い、いえ、それは違います。彼の物は顔立ちも良く、男子高校生相手であれば好みであろうと思っただけでございます」


「やはりな、認めたか。つまり、最初から私の言葉など聞く気すら無かったではないか。貴様は更生プログラムとやらがあると聞いたのでな。それを受けさせるとでもしようか」


「そ、それだけは・・・」


「貴様の部下が失態をした時は躊躇無いそうじゃないか。それだけ効果覿面なのだろう?でなければ此度の失敗、貴様はどう取るつもりか?本来は貴様の首一つで済む問題では無いが、私がなんとかしてやる」


「え?そ、それは・・・」


「このたわけが!私もあの時件の高校にいたから分かる。あの少年にこれ以上反感を買われるのは愚策だと言うのが分からんのか!あの剣気はこの国で同程度の者がいないと思わされるほどだったのだぞ?貴様がその地位にいる価値は無いと知れ!明日までに責任を取らぬなら土御門を私は見捨てる」


そう言い残し、部屋を出ていった。是孝はどうにか反論したかったが出来ない。作戦失敗に人の心を軽く踏みにじるやり方。そして、自ら対峙し敗走を喫したという事実。責められて当然だったからである。


翌日、是孝は土御門から足を洗う事を当主天道に進言したという。








是孝が倭から追及を受ける少し前。帰り道は蒼矢を待っていた相楽、詩歌と帰っていた。


主な話は相楽が申し訳ないと謝りまくっていたが、それ以上に気になるのは・・・


「なあ」


「うん」


「ええ」


「後ろのあいつ何やってんだ?」


実力者が集うこの集団には堂本 天の隠密術では隠し通せるはずもなく・・・


「流石だな!私に気が付くとは。それでこそ私の見込んだ男!」


後方で不審者と化していた天がいた。


「いやいや、天ちゃん、あれは私でも気付くよ?」


「堂本さん。本当にごめんなんですけど、私の事はバレてるからあなたももうバレてるよ?」


「バレる?そんなの委細承知。それでも私は蒼矢を追う!」


「じゃあ聞くけど、上司からもう俺の事は良いよって言われたら?」


「追わないであろうな」


「それで見込んだって言われても・・・」


「本当天ちゃんって面白いね」


ふと前方に意識を向けるとある男がこちらを見ている事に気が付いた。


蒼矢はすぐに臨戦態勢を取る。この佇まい、この存在感、間違いなく戦闘に長けている。


「ほう、やはり先程の剣気はったりでは無かったか。即座に俺を警戒するとはな」


「どちら様でしょうか?」


その問いに答えたのは男ではなく堂本と相楽だった。


「凸守様」


「凸守 倭 様」


「ふむ。その通りではあるが人の名前を気安く呼ぶな。我々は素性を知られることが最大の弱点と習わなかったか?」


「も、申し訳ございません」


「すみませんでした」


「今回ばかりはその男に名乗るつもりだったから許そう。以後気を付けろ」


「はい・・・」


「そんで?凸守さん。人の往来も少なからずあるけど、やりあうってんなら付き合うぜ?」


「ふん、そこの女子も私を見て畏怖しないという事は相応の強さを持ち合わせているのだな。2対1で勝てると思いあがるほど馬鹿ではない。それに、元から戦う気は無い」


「さっきのクソ爺のお仲間っぽいのによく言うぜ。それじゃ何の用だ」


「約束してほしいのだ」


「約束?」


「ああ。君が我々能力者にこれ以上敵対しないと。先にしかけたこちらが言うのもなんだが、それさえ言質を取れれば他に用は無い」


「なるほど、その集団の統括やってるってところか。まあ良いぜ。けど、そっちがちょっかい出すってんならその時は防衛するぜ?」


「それで良い。やられるならやられる前に倒す。その気概があるなら僥倖。そこの2人も聞いたな?戻り次第報告してこい。とは言っても、土師ではなく土御門が聞くかだがそこは俺がなんとかする。土御門の女子よ安心して報告しろ」


「は、はい!」


「最後に何個か。桐生蒼矢、君はいずれこの国に必要な人間となる。だから、この先何があろうと絶望はしないでくれ。それに、かの妖狐を助けたのは君だろう。妖狐の事が知りたければ大江山に行ってみるが良い」


「は?」


「それではこれにて失礼する」


気付かないうちに姿を認識出来なくなっていた。


『私は彼を追えています。きちんと遠ざかっているようなので心配は無用です。ご主人様』


『お前ってさ、俺より有能なんじゃねえの?ハダル』


『お褒めにあずかり光栄です』


うちの使い魔がどうやら本当に有能だという事を改めて思い知らされた。






その日の夜。相楽と堂本は報告をし今回の任務は終了した。


土御門邸では


「手を出すな・・・か。土師より先にどうにかしなければならんと言うのに・・・」


「失礼ですが、本当に取り込むなんて考えは改めるべきでは?是孝様が失敗なさったのが何よりの根拠かと」


「あんな愚か者など知らぬわ!天道様、どうしますか」


「結論としては引き続き相楽 真綾を忍び込ませる。何かしらの弱みを握ってくれるだろうからな。それを待とうではないか。良いな?真綾」


「はい。天道様」


「では、お前に任務を言い渡す。相楽真綾!桐生蒼矢の弱みを握り逐次報告せよ!」


「はっ!」


廊下を出て自室に戻ろうとすると


(また失敗したんだとさ)   (親子そろって雑魚かよ) (彼氏に愛想尽かされるんじゃねえの?)


と陰口を叩かれていた。しかし、そんな奴らに


(でも、是孝様が失敗の原因らしいから彼女が全面的に悪いって言えないよ)

と弁明をしてくれる人もほんの少しいた。


(こんな劣悪集団だったと気付かなかった私も馬鹿ね。桐生君に土御門の本当の事をうっかり喋ってもまあ破門にされるだけだしなんかもういいや)


そうすれば父母と会えると考えた。彼氏はまだ軟禁中だが後一月で解放される。後一月耐えるのみと考えた。


彼氏が更生と称して人格を壊されている事を知るまでは。


一方土師では・・・


「そうか、ご苦労。この先も彼の動向を確認してはいくが、天、君は引き続きやりたいか?」


「お館様の御心のままに」


「それはありがたいんだが・・・いや、ほら、急遽転校してきてさ、元の高校にお友達もいるでしょ?だからそこのところはどうなのかなって」


「友達?強いて言うなら人とはあまり関わりたくない性分ですので未練はあるほど仲が良い級友はいなかったのですが」


「あ、そうなの・・・なんかごめんね」


「ですので、仲良い人も出来たこっちの方がいて楽しいと言えば楽しいです」


「そっかそっか。ならこのまんま引き続き宜しくね。あ、報告は定期的で良いけど、彼がトラブルに巻き込まれたらその時は早急な報告宜しくね」


「承知!」


「そんじゃ、今日はもう休んで良いよ」


「失礼いたします」


天が部屋から去る。


「しかし、不甲斐ないな。倭様にわざわざ出張っていただくとは。精進しなくちゃ」


自分も成長しなきゃ。こう考える耀厳であった。

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