29話:煽りこそ最大の戦略
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蒼矢が去った教室では憤慨していた生徒の一部が担任の崎田の元へ走って行った。
残った人達は相楽を慰めたり、憤慨が収まらず蒼矢への批判を未だに言う人々がいた。
崎田がやってくる。
「桐生は帰ったのか」
「そうっす!あの野郎、真綾さんに暴言吐くだけ吐いて逃げやがった玉無しっすよ!」
「先生!彼は退学にすべきです。人としてあり得ないよ」
「全く、はぁ~こいつらは本当に・・・」
そんな中
「お前らだろうが何も学んでないのは!!」
伊藤美奈が叫ぶ。
「あ゛?何が学んでないって?」
「美奈ちゃん、あんなクズを庇う気?正気なの?」
「だって、だって!私達は二人の間に何があるか知らないんだよ?蒼矢は言ってたよね?俺に関わるなって。真綾ちゃんの方が何かしたっては思わないの?なんで蒼矢だけを悪者にするのよ!それをしたからあの時蒼矢は傷ついたんじゃない!!お前ら、それでも人間か!!」
「それは・・・」
「そういえば・・・」
「伊藤、お前は一つ間違えている。人間じゃないのはお前だ」
「え?せんせ・・・い?」
「自分に都合よく物を解釈し勝手に理解する。全てが自分第一。自分の中の常識にとらわれ生きる。それが人間だ。お前も常識には捉われていても、公正に物事を見れている。お前の理論なら人間の汚点が無い。つまり人間じゃないのはお前だ」
きっぱりと言い切る担任に憤慨している生徒は質問を投げかける。
「じゃあ、糾弾した俺達が悪いっていうんですか?」
「どこまで行けどもアホばかりか。お前らは聴取は行ったのか?捜査の基本だろう?」
「あ」
「そしてここには何を隠そう、聴取対象がいるだろう?なあ、相楽。お前は何をして何を言われた?」
「彼を・・・悪く言わないで。全て私が悪いの」
「何をしたんだ?」
「彼を・・・ストーカーみたいに・・・追ってた」
「な!?」
「うそ・・・でしょ?」
「ほう、それでなんと言われたんだ?」
「関わるなって・・・言われました」
「ふむ。つまりストーカーに関わるなとノーを突きつけたのか。何が悪いんだ?お前ら」
「それは・・・」
「・・・・・・」
「全く、何か言ってみろやゴミ共!!追及を受けて黙るだけなら猿でも出来るわ!!」
「まあいい、つまりだ。あの時冷静に事態の把握をしようとした者以外は愚者という事だ。よく覚えておけ。それと桜井、相楽。放課後話がある。必ず来い!」
担任は心底あきれたように踵を返す。
「とりあえず、後10分で体育始まるし、準備しない?」
クラス委員が声をかけた事で授業態勢に戻っていった。
「本当に面倒事を運んでくるものだな。奴は」
崎田 燐子は溜息をつく。2回目の騒ぎという事で教頭から彼をどうにかしてくれと言われてしまったのだ。
「だがあいつが悪いんじゃない。悪いのは本来相楽、堂本の後ろにいるやつらだろうに・・・」
この世は理不尽だ。どんなに正しくても、どんなに善い行いをしようと大衆、権力者がダメと言えばそれはダメとなる。逆にどんなに悪事を働こうが、権力者は善にする事は厳しいが無かった事には出来る。言ってしまえば腐った世界。崎田はそれを生徒に味合わせてしまっている事に不甲斐なさを感じていた。
だが、同時に桐生蒼矢という少年はこの状況を嬉々として受け入れているようにも思えた。
何故なら・・・
(私のテストで満点を取れる奴がこんな行動をしたらこうなる事も予想できなかった筈がない。という事は桐生の目的は・・・まさか!?)
「マズイ!!」
勢いよく立ち上がる。
「さ、崎田先生?」
「教頭、相楽の編入面談の時に一緒にいた人の名前、覚えてますか?」
「え、ええ。この国の有力者ですからね。土御門 是孝様ですよ」
「その方が元凶かと」
「・・・はい?」
「今回の私のクラスでの一件、その方が桐生蒼矢が暴走する引き金にしか思えないんです」
「・・・崎田先生。根拠は?」
「私の勘です。でも、自信はあります。一度是孝氏と話をさせてはいただけませんか?」
「馬鹿を言うな。是孝様はお忙しいのだ。こちらからお呼びする等失礼に値する。そうすれば、この学校など潰されるぞ。それに万一不敬などすれば君の人生は終わりだ」
「結局はそれが目的か。くだらん」
「なんだと?」
「私は教師になりたくてなったんじゃないんですよ。私が今この職にいるのは面白い生徒を育て上げてやりたいからです。それが出来ないならこの職に未練などありませんよ?」
「だが」
「私をお呼びですかな?お嬢さん?」
「あなたは!」
そこにいたのは
「ええ、先程崎田先生がお話したいと仰っていた土御門 是孝ですよ。桐生とかいう少年が真綾に暴言を吐いたと聞いて飛んできたのです。まあ、幸い真綾は今体育を元気に受けているようですが。ところで、桐生君とやらはどちらに?」
「それが分からないのです。私が呼ばれて駆け付けた時にはもう出ていった後でしたので」
「ほうほう、それはそれは。さぞ大変でしたでしょうな。こちらでも彼は探しておきましょう。ところで聞きたいこととは?」
「では、お言葉に甘えて。あなたは私の生徒に何の用があるんですか?」
「ほ?それは先程話しましたよ?」
「そうじゃない。なんで調べるような真似をしてるんだって聞いてるんだよ。うちの生徒に手出すんならただじゃ置かねえ」
「崎田先生!」
「教頭構いませんよ。この学校は実にいい先生を持ったようだ。救いようなんて無さそうな生徒なのにそれでも救ってあげようとしてくれるのだから」
「否定はしないか確定だな・・・相楽 真綾。何者だ。そしてあんたは何者なんだ?」
「何者かはノーコメントで。だが、あなたは頭が良いようだ。故に生きてもらってては困る」
「なにを?」
「動くな」
気付けば忍び装束の男2人に刃物を突きつけられていた。
他の教員からも悲鳴が上がる。
「無駄な正義感では何一つ救えない事をお教えしましょう。それでは崎田先生、さようなら」
死ぬ。そう悟って目を閉じた。
だが、一向に切られた、刺された感覚は来ない。
それに
「き、貴様は!」
という声も聞こえる。
ゆっくり目を開けるとそこには
「あんたがずっと接触したかった桐生君だけど?おいおい、無駄な正義感が云々とか言ってたけど俺それで燐子先生守れたんだが?はい、証明失敗。お疲れさん。あーそれと」
いるはずの無い。そしていてはいけない、でもいてほしい
「俺みてえなろくでなしに命賭けて守ってくれるうちの燐子に手出すってんなら、てめえの霊剥ぎ取るぞ」
可愛い生徒、桐生蒼矢が忍び装束の男達を地面に接吻させて立っていた。




