26話:九尾、再臨。
土日は詩歌の強化に努める事にした。ちなみに小規模の球技大会があるっては聞いているが相楽が怖いから傍観に徹する予定だ。
さて、そんなこんなで俺と詩歌は夜が明けて少ししたくらいの時間帯に俺が魔法実験をした無人島に来ている。剣術と体術に関しては一朝一夕でどうこうはならないが魔法と感知に関しては潜在能力を引き出すだけなのでこの二日間でどうにかする。魔法は夜にこっそり抜け出し色々と調べ歩いてので大丈夫だ。
「なあ、そういやさ妖狐に進化ってあんの?」
「ゲームじゃないんだから・・・ってツッコミを入れたいけどあるのよねこれが。ちょっと人化解くね」
「おけ」
するとそこには小さい6本の尾を持つ狐がいた。
「お、狐だ。可愛いなーよしよし」
「可愛い!?ちょ、離して」
「おう悪い。どうしてもモフりたくなるのが止められなくて」
「はあ、本当にもう。まあ良いわ。今尻尾が6本あるでしょ?これが9本になると妖狐の最上格、九曜になるの。九曜に達したのは歴史上で玉藻の前っていう人しかいないらしいわ」
「へえ、ちなみに6本は?」
「昔聞いた話だと大人の場合は普通なんだって。7本から先が大変なんだって」
「ふーん、ならその9本目指してみようぜ」
「私で行けるのかな」
「そんなの分からない。でもさ、やらずに後悔はしたくねえだろ?それに俺がいる。やってみる価値はあるさ」
「そうだね。よしやってみよう」
そして驚く。蒼矢は詩歌の成長の速さに。詩歌は蒼矢の教えの的確さに。
魔力量の測定、
部屋から直接テレポートをかけたので母親と姉貴はいない事に気付いていない。なので、一度部屋に戻ってきてからリビングへ向かう。
朝食後、詩歌の町案内をすると言って午前中は出かける事になった。
とは言え、ある程度の所で島へ転移するので嘘をついてる事に変わりなし。心の中でめっちゃ謝っとく。
さて、こうして再び戻ってきたわけだがここで一つ変化に気付いた。詩歌から感じる魔力の量も質も人が変わったかのように多くなっているのだ。
「なあ、詩歌」
「ん?どうしたの?」
「魔術を教える前にもう一度尾を見せてくれ」
「?いいけど」
すると
「え?7本になってる?なんで」
「俺の魔力を受けた事で体中の魔力を堰き止めてた場所が開いたんだよ。だから少しの間は酔いみたいな症状現れるかもな」
「そうなんだ。まさか、強い人との魔力量比べだったとは」
「さて、それじゃ魔術の練習をするぞ。まずは説明するぜ」
俺が使うのは頭の中でのイメージを現実世界に投影したビジョンで発動するものだ。だが、この世界ではそのビジョンを魔法文字として表現する事で発動するっぽい。
俺もサンプルとして書いてあったのを試してみた。そしたらこの文字式遅いのなんの。こんな速度でしか発動できなかったらオークのトップとなんざ張り合えません。てことで異世界式を教える事にした。
「良いか?イメージだ。飛行魔術なら空を飛ぶ自分をイメージしてくれ。そのイメージに自分の魔法力が足りてれば発動可能だ」
「イメージ・・・よし!火出してみるね」
火か・・・最初から難しいものを。出すのは簡単だ。それを持続させるのは難しい。まあ発火現象が確認出来たらよしとしよう
「ファイア~~」
あらあら、なんという事でしょう。火柱が立ってるな。・・・火柱?嘘だろ?もう出来たの?
「蒼矢ー、出来たよ」
「そ、そうだね。まだ勢い衰えてないしこりゃ完璧だわ」
その後も色んな物質を作り出す事に成功していった。いや待ってよ。俺より才能あるやん。これ抜かれるんじゃ・・・と不安が頭を過ぎる。土曜日、特訓開始1日目だけで尾は8本になっていた。
そして2日目。この日から身体トレーニングもメニューに入れていく。運動神経は良いとは言えないのでこっちは時間がかかりそうだが詩歌が妖狐に伝わる秘術を知っていたようなのでそれの習得をしている。なんでも、これを会得したものは妖狐の中でも一目置かれるんだとか。だが、異空間に接続するというその魔法はあまりにイメージがしづらい為、二人そろって頭を悩ませていた。
「蒼矢、異空間ってどんな感じなのでしょうね」
「そうだなぁ・・・異空間は知らないな」
異世界はよく知ってるけど。
その時俺はある考えが頭に浮かんだ。
「なあ、詩歌。山行こうぜ」
「山?」
「そう山。普段行かない場所って俺達からすりゃ異空間だろ?なにかのインスピレーションは貰えるかなって」
「良いけど、どうやって?」
「そりゃ勿論レッツテレポート」
「うん。知ってた」
というわけで田舎の方にある山に急遽行く事になった。これには山登りで体力を鍛えるという狙いもあるので一石二鳥である。
標高としてはどこぞの怨霊師を倒した時とほぼ変わらないがあれより緩やかで登りやすい。はずだが・・・
「つ、疲れた・・・おぶって」
「バテるの早くない?」
詩歌さん、狐の状態じゃないと山登り無理らしかったです。
仕方なくおぶって歩いていると頂が見えた。
「おー、すげ」
「絶景だね。あ、降ろしていいよ」
「うす」
でもこの景色を見てるとなんだか達成感を感じられる。詩歌の方を向くと
「きれい」
と少し微笑んでいるように見えた。大抵の男はこれで落ちちゃうんだろうな。
と、詩歌が何かに気付いたかのように目を見開いた。
「そっか、異空間ってそういうことか」
「ん?どした?」
「こうも聞いたことがあるの。玉藻の前は男を誑かし色んなものを貢がせた悪女と言われているが実際は、兵役などで行き場を失った子供達、同胞の為に自らの力を振るっていたとも言い伝えられているって。それが異空間だとしたら?」
「異空間はつまり・・・えーと・・・なんなんだ?」
「異空間は見つけるんじゃない。探すんでもない。自分が理想と思う場所を創造する。それが異空間の正体だと思う」
「ならやってみるか?人は今いないしやれるぜ」
「うん。やってみる」
詩歌は目を閉じ集中する。
(私が望む理想郷・・・好きな人達と病気も無く自然、食物に恵まれ、動物と心が通う世界。不老不死は望まない。でも、必ず生まれ変わってまた集まれる。そんな世界)
そして気づいた。
私の理想は・・・
[起源の創造]
蒼矢は咄嗟に身構える。あまりに濃く多い魔力の激流。そして、詩歌とは違う存在をはっきりと感知したからである。そして自分が異界にいる事も分かっていた。
そこには九尾になった詩歌と九尾の女性がいたのである。




