20話:もふもふの妖狐って愛くるしい
この妖狐ちゃんは可愛いロリなんですよ。
現実にいてくれたらモフりたい
男たちはかつてない程の冷や汗をかいていた。先ほど目の前の青年から発せられた「殺し甲斐がある」という言葉、最初ははったり、カッコつけだと思ったがその考えをすぐさま捨て去る事となる。自分達の半分も生きてないであろうと見受けることの出来るその青年からはあまりに濃密な雰囲気が漂い、一切の隙が無いように思えたのである。
はっきり言って勝てない。そんな思いも頭をよぎった。
「おい、どうしたんだ?刃物なんざ持ってるんだ。さっさとかかってきたらどうだ?」
「一つ、聞かせてくれないか」
「なんだ?」
「ガキ、いや君は一体どんな人生を送ってきたんだ?まだ成人にもなっていないだろう?どうしてそんな戦い慣れているかのような佇まいが出来るんだ」
「答える気はねえな。初っ端からガキ呼ばわりされてはいそうですかって自分の事を話す訳ねえだろ?それにあんたらは犯罪者だ。不必要に法を犯す奴らの事を俺に気遣ってやる義理も無いと思うが?」
「くっ、我らも人間なのだ。仕事をしなければ生きていけないのだ。これが正しくない事等承知だ。だが君はまだ知らないのだよ!生きる事の辛さが!私だって真っ当に生きたかったさ。でもな!この世間様は、時代は、俺達を苦境に追いやる。盗みをするかと考えた事もあったさ。でも、同じく困ってる人から搾取するなんてのは非道すぎるだろう。そんな時に割のいい仕事が舞い込んだら飛びつくのは悪い事か?」
「そうだな。情勢に関しては俺も知ってるよ。だからこんな仕事をしたってのは分からんでもない。だが、窃盗という選択肢を外せたなら、何故その女の子は例外だったんだ?お前らにとっては子供は差別対象なのか?」
「・・・・・・」
「こんなことを弱っている奴の精神状態に漬け込むように依頼するゴミの顔は拝んでみたいが、だからといってこのまま女の子をそこまで連れていくわけにはいかないからな。止めさせてもらうよ。覚悟決めろよ?男なら」
あんまり男だから、女だからって言葉は使いたくないが、こいつらならこれを言っても大丈夫だろう。
こいつらは根が悪い訳じゃない。でも、行動が是と出来ない以上は止めなければならない。いずれは妖狐を捕獲しろなんていうとんでもないことをぶち上げる脳味噌が腐ってる馬鹿共も追わなきゃいけないが、まずはこいつらをどうにかしないとな。
「安心しろ。殺す気は毛頭ない」
「そんな佇まいでそれを信用しろと?」
「それを言っちまうとあんたのさっきの情熱的な告白を信じられなくなるんだが、あれを信じてもらわなくても良いんだな?そうするとあんたらが本当のろくでなしだって認定する事になるから手加減しねえよ?」
「チッ、ここまでやりにくいとはな。お前ら、刃物捨てろ。対峙すんのはやめだ」
「え?」 「リーダー?」 「はい」
「俺達は便利屋だ。依頼人を明かす事は出来ねえ。だが、仕事が続行できなくなった今連絡を取らなきゃならねえ。それで手を打ってくれねえか?あんたの望み通り仕事は降りる。それと依頼人に近づく材料として会話の内容は聞いてて構わねえ」
「・・・随分とこちらに有利だな。本当にそれをしてくれるってんなら乗るのも吝かじゃない。良いだろうその条件を飲もう。俺はあんたらに危害を加えない。情報を聞け次第この場から立ち去る。あんたらの事を口外しない。この3つで良いか?」
「ああ、それで良い。それじゃ一旦移動するから付いてきてくれ」
「分かった」
さあ、心理戦の始まりだ。
人気が全くない駐車場に移動した。パンクした車はタイヤを新調しリーダーの男以外が乗ってきた。
「ここで良いか。よしおんじゃ今から連絡するから声はあげるなよ」
「分かった」
ここでリーダーの男が電話をかけ始めると同時に仲間たちが場所をこっそり移動しているのが見えた。恐らく俺をどうにか倒そうと画策でもしているのだろう。気付いているからこそいつでも対処できるように準備しておくか。
「もしもし、俺です。すみません。事情によりお届けできませんでした」
「なに?確保はしているのだろう?何故なのだ?」
「移動手段が失われてしまって、更には面倒な事にターゲットがバレてしまい、追われているのです」
「なんだと!?バレた?今どこにいる?さっさと教えろ!使えない貴様らの為に探してやるから。さあ、早く!」
「教えられませんよ。どうせ処分するつもりなのでしょう?それに奴は探している。もうどっちからも逃げられるほど体力は残っていません。今回の依頼の報酬は放棄します。ですが、今回の依頼は口外しません。なので手を引かせていただきます」
「貴様、待て」
電話は切れた。正確には切った。男は相手方から追われることを承知の上でたった一人の青年に屈服したのだ。部下たちはもっと話すと思っていた。それに集中している蒼矢を後ろから襲うつもりだったが目論見は外れた。
「すまない、だがこれで勘弁してくれ。私達はターゲットの女の子が何者かを知らずに仕事を請け負った、これは事実だ。そしてその正体を知っている君は奴らの敵方が仕向けた刺客なのだろう?」
「ん?どういう事だ?」
「とぼけるな。この子が人間ではないという趣旨の事を仄めかしたじゃないか。奴らは土御門と名乗っていた。そこの敵なのだろう?」
「つち・・・みか・・・ど?なんだそりゃ。初めて聞いたぞ」
「え?」 「え?」
そしてさっきまでは一触即発のような雰囲気が流れていたのに色々と話し合ってるうちに双方全てを理解した。
「じゃあ君は・・・偶然分かったから助けに来ただけ?・・・そういや、何かに利用しようという事は一度も言ってなんか・・・」
「そうだな。それに最初の契約は果たされてる。土御門だっけか?そいつらが俺の次の敵って訳か。この子はあるべき場所に帰しておく。お前らは早急に立ち去れ。追手が恐らくもう出発してる」
「分かった。お前ら、引き上げるぞ」
「お、おっす」 「はい」 「あ、はい」 「何がどうなってんだ?」
男たちは来た道を戻っていった。蒼矢はある魔法をかけていた。妖狐と蒼矢に関する記憶を消す魔法である。これが残っていれば彼らが見つかった時に長い拘束を受けるだろうと考えたからである。そしてその条件はリラックスする事。これで彼らが無事だと良いなと思いながら傍らに座る妖狐を見る。
「なにを・・・するきですか」
「そうだな~・・・一個だけ俺の欲望発散に付き合ってくれ」
「よ、よくぼう?ひっ!こ、こないで!」
「大丈夫。すぐに終わるからさ」
等と言って激しく抵抗する妖狐を連れて彼女の住みやすいであろう神社まで飛んできた。
「そ、そらをとんだ?なにもの・・・ですか?」
「君がもっと僕と親しくなったら教えるよ。さて、では望みを叶えるとするかな」
このやり取りから20分後、やっとの思いで主人を見つけたベラとハダルは腑抜けた顔で幼女狐をもふもふする主人を見つけ苦笑いしか出来なかったという。
そんなだらしない顔をしていた主人の第一声は
「あ、お疲れ。やっぱもふもふはやめられねえや」
もう一つの伏線はそろそろ回収します。




