18話:休日って休めない
テストも終わり、同級生の思惑もとい思いも知った。いや、知ってしまった俺は今日一日ゴロゴロする予定だ・・・はずだったのに
「蒼矢、我が弟よ。共に遊びに出かけない?」
「いや、今日はゴロゴロしてたいんですが」
「そんなんじゃ青春終わっちゃうぞ?」
「姉貴恋人いないのに青春語るんか?」
「ん゛だと゛コ゛ラ」
「すみませんなんでもありません」
うーむ、迫力だけなら異世界の強面アニキと張れるな。本当に勇者フォルムじゃない俺より逞しいぜ。
「マジで遠出は嫌だよ?」
「いや、単純。久しぶりにあんたの歌聞きたいなって」
「歌?って事はカラオケか?」
「そそ、実はもう予約取ってあったりするんすよねこれが」
「俺に拒否権ほぼねえよな?それ。まあ、良いけどさ」
ジョブとして歌聖を持っている俺の歌は失恋した人の前でラブソング歌ったら心に響きすぎて一日中「ごんな゛にずぎなのに゛ぃ~」と泣かれたり、逆に女の子たちはうっとりしていたらしいし、心にとっても響くようだ。
「よし。それじゃ今から行こう蒼矢」
「ちなみに予約は何時から?」
「30分後」
「はぁ~~?急がなきゃやべーじゃん。準備するから先出てろ」
「ほいほーい」
そして部屋に戻ると突然
「タ・・・・・テ・・」
「へ?何?」
声が聞こえた。よくは聞こえなかったが辛うじて聞こえたタとテから察するに
「助けてって事か」
ただカラオケを楽しんでいられる訳じゃなさそうだ。俺はこの時漠然と嫌な予感がしていた。
謎の声が気になるが今は素直に姉貴とカラオケに向かおう。聞いとかなきゃなどのくらい歌うつもりなのか。
「なあなあ、どのくらい歌うん?」
「2時間で取ってあるよ?もしかしてフリーやりたかった?」
「いや、喉痛めないレベルにしたいからさ」
「つまらないな~。本気で歌い明かしてこそカラオケの醍醐味でしょ」
本当に暢気だ。こちとらさっきの声の方向に索敵を広げながら歩いてるってのに。気付いたらカラオケ屋に着いていた。
「そんじゃ行こうか」
「おう」
ふと目に入ったワゴン車が気になったので使い魔でも忍ばせておくか。何かあればお手洗いって言って抜け出そう。
「ベラ、頼んだぞ」 「久しぶりだな主人。了解した」
小さい声で指令を出す。このベラはピクシーなのだが俺の使い魔なのでこっちでも召喚可能だった。ちなみに、魔王なんて呼ばれてたディールでも真面目にやらないと手傷を追う程に強い。
姉貴は最初から最近の若者に人気という曲を声出しとして歌ってた。普通に上手いし声綺麗だし普通に聞き込んでいた。こうしている最中も目星をつけてるあのワゴン車が違った時の為に全方位の索敵を行っている。この技のお陰で1対盗賊150人の戦いを戦い抜くことが出来たくらい有能なスキル。だが他には怪しそうなのは今の所いなさそうだ。
「じゃ、次蒼矢ね」
「うっす。期待はすんなよ?」
俺が歌うのは中二病と言えばこれって言われるくらい有名なアニソンだ。難しくて歌聖取ってなきゃ歌えないよ。それも最初の曲になんて
「ふぅー」
息を吐ききってから
「すぅー」
一気に吸い込む。出だしの音で歌の善し悪しは決まると言っても過言ではない。
「♪♪」
技能を上手く活用しようなんて考えなくていい。ビブラートは自然と出るから。後は思い、気持ちを込めて歌う。
歌い切った。点数は89点。感情込めすぎて安定感が酷い。
「どうだった?姉貴」
「ふぇ?あ、うん。良かったと思う。でもあれかなー。ラブソングは歌ってほしくないかな」
「え?なんで?そんなに下手だった?」
「あ、いやそうじゃなくて気持ちが伝わりすぎて蒼矢の雰囲気に飲まれちゃうから」
「あ、そうなんだ」
そのまま俺が5曲目を歌い終わって姉貴が歌い始める頃だった。
『主人、報告だ』
ベラから交信が入る。
『どうした?』 『ビンゴだ。4人の男たちが女子を誘拐していたぞ。場所はここからなんか歯車みたいな奴が見える場所だ』 『ふむ。地味に動いてる感じか?』 『そうだな。少しだが動いてる』
観覧車か。それが見える所にいるらしい。・・・どこだろう
『てか、ベラの位置を探知すれば良いんじゃねえか?』
『すまない。その方法があるのを忘れてた。だが、主人のでも探知が届くかは分からんぞ?』
『まあ、やってみるさ』
使い魔のみんなには申し訳ないが使い魔の位置は同じ世界にいる場合、どこでも分かってしまうのだ。
『よし見つけた。今から向かう』
『流石だな主人』
『そんじゃ交信切るぞ。30秒くらいで着く』
『了解だ』
「姉貴、お手洗い行ってくる」
姉貴はグッジョブで了解の合図を送ってくる。
個室に入り
「座標移動」
誘拐犯のアジトらしき家の屋根にテレポートする。音を立てないように内部に入ると正座をした男達が何やら話している。
「とりあえず捕獲は出来ましたがこれからが正念場ですね」
「ああ。こっから土御門の元締めの所へ届けなければいけない。本当の仕事はここからだ」
「睡眠薬が効くまで少し時間があります。最終調整をしましょう」
「しっかし、あんな女の子をこんな犯罪紛いのやり方ででも欲するってあの子に何があるのかはきになっちまいますね」
「本当にな」
こいつらは雇われなのか。ならば先に女の子の様子を確認しておくか。
「おいおい、すっかり寝てるな。困ったぞおい」
元々の予定では届け先までもう一度ベラに尾行してもらい、依頼主諸共一網打尽にする予定だったが女の子に話が通せない以上、得策ではない。
それに、この女の子人間じゃないな。この感じは
「妖狐っぽいよな。発する魔力が」
こうなったらイチかバチかやるか。だとするならベラだけじゃ足りない。もう一人呼ぶか。
サイレントの魔法をかけて
「来い、ハダル」 「ご無沙汰でございます!ご主人!」
このイケメン、俺の使い魔ver.2であるハダル。元々は魔族の中で穏健派の実力者として知られていて俺のやり方に共感したとかでなにかと行動を共にしていた頼れる奴だ。欠点は声がいつもでかい事だけど。
「ベラと共にこいつらを尾行しろ。恐らく高速道路を使う。そこを下りるタイミングでゲートを通るんだがそのタイミングで前2つのタイヤをパンクさせてほしい」
「コウソクドウロ?タイヤ?パンク?よく分からないです申し訳ございません!」
「あーなら説明するから外にテレポートするよ」
「はい!」
一通り説明を終えてカラオケに戻る。15分もかかってしまった。色々ツッコまれそうだな。
「ごめん、遅くなった」
「結構長かったね。大丈夫?そんじゃ歌って♪」
「よし、なら名曲でも歌うか」
結果としてカラオケは1時間20分で退店となった。姉貴が気がそぞろになってしまったからである。これ以上は続行不可能と判断し連れて帰る事にしたのだ。帰る途中で凄く「こっち見ないで」とか「絶対に好きでもない女の子とカラオケ行っちゃだめ」とも言われまくった。一体どうしたんだろう?
帰宅して母さんが姉貴の異常に気付き、熱を測りだしたりしたが俺のいない所で何かを姉が話したらしく、母さんが俺とカラオケ行きたいとか言い出すからまた今度って言って自分の部屋に籠る。
夜はネトゲする約束を入れているが正直出来るか分からない。あの妖狐、いや幼狐の件次第では出来ないかもしれないからワンチャン俺出来ないかもと送っとく。
それから40分が過ぎた頃
『主人!そろそろコウソクドウロ下りるからパンクさせるよ』
『おっけ。そんじゃ俺も動くか』
さあ、任務開始だ。




