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幕間:歯車は回りだす

蒼矢が蘆屋道巌を下し、無事捕縛された後、この国の異能力者のトップ達による会議が密かに執り行われた。


「この報告を見るに、あなた方土師(はじ)はこの少年に妨害され果てには眠らされたと、なんと愚かな。日頃からの鍛錬を怠り、実績の上に胡坐をかいているからこうなるのです。あなた方にこの国の総括は任せられませんな」


「起きた事は事実。否定は出来ないが、修練を怠っていた訳では無い。それに、そう貶すだけが土御門の仕事なのか?私は今日の会談はこの少年を今後どうするか、そして蘆屋道巌が敗れた今、他の凶悪な能力者たちも神経を尖らせながらいる事だろう。その者達への対策及び我々の協力体制の再確認と聞いていたが、毛頭そんな事をするつもりは無さそうであるな。であれば、我々だけで会合をした方が合理的という物。これにて失礼」


「まあ、待てそう早まるな土師よ。もう少し話をしようではないか」


両者はこの国の異能力者をまとめ上げる2大勢力の土師と土御門の総代である。彼らは陰陽師、公家など国の中枢に古来より関わってきた家を筆頭に日々鎬を削っている。どちらが日本という国の能力者の頂点に立てるかを競っているのだ。正直言ってこの期に及んでこんな事をやっている愚者である事は明白だが。

蘆屋道巌はその操霊術を用いてたった一人であるにも関わらず彼らが脅威としていた人物だった。本来であればただの監視だけではなくすぐにでも討伐をすれば良いのだが、山一つを自らの霊を貯蔵する場として定義できる実力はこの国では随一で、手出しするには500人程の能力者が命を懸けなければならない筈だった。


日本最強の能力者と謳われる者ですら、単騎でぶつかるには本気で集中しないといけないと判断するほどに強いのである。そんな道巌をたった十数分で軽々と無力化する単体戦力など脅威でしかない。その為の会議なのだが。そのはずなのだが・・・


「先に話を逸らしたのはそなたであろう。土御門 天道。すべきことは撤回ではないのか?」


「元はと言えば、貴様ら土師がそんな小僧の侵入なんぞ許し、対峙させてしまったのが原因ではないのか?そのお目付け役などに撤回する物など無いわ。土師 耀厳(ようげん)


一切、蒼矢に関する議題は話さず蹴落とすことに必死である。かつて、天道は軍師としての才と結界術を用いて後方及び一線で、耀厳は稀代の使い手としてこれまた一線で戦ってきた凄腕なのだが地位に就くと耄碌してしまったのだ。


それを見兼ねたある人物が口を開く。


「さっきから聞いていればなんなのだ?貴様ら、特に天道。貴様だ。会議の進め方がまるで分かっていないな。議題を戻すぞ。その少年についての情報を土師、早う述べろ。」


この男、まだ24の年月しか生きていないにも関わらず、最強と評される男だ。名を凸守 倭。ここにいる総代2人が相手になっても勝てない実力者だ。


「は!失礼しました。では、彼と対峙した瑠美より再度の情報共有をさせていただきます」


情報を聞き終わるとたった一言。


「こいつには絶対に関わろうとするな」


とだけ発した。


「な!?」  「左様で・・・なるほど確かに」


「ふむ。貴様らの事だ、どうせこんな戦力は是非とも手中になんて考えているのだろう?確かにこんな戦力取り込めれば日本を影から動かす事も容易かろうな。耀厳よ、其方は気付いたようだな。わざわざ瑠美を眠らせてから敵を狩る。すなわち誰にも知られたくないという事と同意義である。この若者がここまで考えているかは不明だが、仮に、俺を不用意に追ったら容赦なく消せるのだ。という意味合いも込めていたとしたら?」


「・・・」


沈黙。


「であるなら、奴の顔は覚えているのだろう?探し出し、人員を派遣するのだ。危険人物かを見極める為にもな。派遣は双方一人ずつ選出しろ。良いな?」


「はい」  「了解しました」


「では、以上とする何かあればまた招集しろ」


こうして蒼矢の知らない間に学校に転校生が2人来ることとなるのだった。







side~東雲 亜矢~


亜矢は帰宅する。普段であれば、母親と今日あった事を話に行くのだが、その日は自分の部屋に籠りっきりだった。


というのも、蒼矢の事を考えたかったからである。


「何で敬語なのよ。なんで今までのように戻ってくれないのよ。なんでよ・・・なんでなのよ!!私が悪いの?桐生君だって悪いじゃない!」


頭にきて関わるなと言ったのは事実。それでも、本当に関わりたくないわけではない。亜矢にとっては自分と将来的にはパートナーとなってほしい。いや、なる事が確定している未来なのだ。自分のパートナーとなる男がこんなクズではいけないと一度突き放したに過ぎないのであった。


しかし、亜矢の思惑とは裏腹に弱っていた蒼矢には本当に拒絶したと思われ、先ほど教室での会話の時は美奈を優先されるという屈辱を味わう事となる。元々、負い目を感じていたため、ほとんど言葉を発せなかった。


そうこうしているいうちに扉がノックされる。


「亜矢?どうしたの?何だか悪いって聞こえたのだけれど・・・」


「え?お母様。大丈夫です」


「何か悩みがあるのは分かります。学校で何かあったのでしょう?普段なら私に色々話してくれるあなたが今日は話してくれない。顔が見たいの。入っても良いかしら」


「え?はいどうぞ」


そうするとすぐに亜矢の母親は部屋に入る。


「その顔は・・・異性となにかあった感じね。亜矢の場合だと桐生君かしら?」


「なっ?き、桐生君がなぜそこで出てくるのです?」


「ふふ、図星ね。あなたが話してくれるお話の中で出てくる男性は先生か桐生君くらいしかないもの。それに、なんで異性とのいざこざが分かったかって言うとね、女の勘よ。」


「そんなに分かりやすかったですか?」


「まあね、私は人の思っている事を推測するのが昔から得意なの。恋愛相談を受けて相手の人とその子を見比べるとなんとなく脈があるか分かっちゃうのよ。ちなみに百発百中よ。」


さらっととんでもない事を言う亜矢の母、綾菜。ちなみに、凄く穏やかそうに見えるがこれでもかつては業績下がりまくっていた夫の会社を立て直した凄い人物なのである。


「実は、彼とはこんなことが・・・」


綾菜は話を聞き終わり、心底面倒そうな顔をした。


「彼も彼ね。でも貴女も貴女だわ。彼の本心が予測出来ないからなんとも言えないけれど、彼の一番になるにはちょっと悪手だわ。そうね・・・日程の調整しましょうか。亜矢は一緒に帰ってくる事をどうにか漕ぎつけなさい。その日に合わせて私が駅で買い物帰りっぽい雰囲気で待ってるからそこで少し話したいわね」


「分かったわ。私は基本いつでも大丈夫だけど」


「それじゃ、私の方は・・・」


こうして蒼矢の知らない所でまた計画は動いていくのだった。

そして2章へ・・・

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