14話:帰還した勇者は思い出した
1章完結!
幕間をすこーし挟んで2章に行きます。
「桐生先輩、やっぱり私の事探してくれてたんですね」
「まあ、そりゃあ。今回は色々迷惑かけてごめん」
「本当に迷惑はかけられましたね。でも、もう大丈夫です。先輩にも事情がある事は話してもらえましたから。先輩が私を嫌いになったからでは無かったので今回は許します。そして私の方こそごめんなさい。先輩にしつこくしすぎました。」
「これからはお手柔らかにお願いします」
「はい。お願いされました。それじゃ帰りましょうか」
「その前に、香坂。少し二人きりで話したいことがある。移動しないか?」
「え?二人で?・・・良いですけど、ここじゃダメなんですか?」
「そこで盗み聞きしてる奴らがいるからな」
最初から気付いていた。うちのクラスの4名が茂みに隠れてる事くらい。
するとぞろぞろと出てくる出てくる。
「バレてんのかよ」 「なーんだ。バレたか」 「気付くんだ。凄いね」 「これは、その・・・私がやりたいって言ったわけじゃなくてその・・・」
左から颯斗、煉牙、美奈、亜矢が続々と姿を現した。
「蒼矢。俺達は聞いちゃいけないのか?」
「そうじゃない。香坂に話したら言うつもりだった。だから、香坂が一緒に聞いてていいってんならこのまま皆にも話すが、香坂は良いか?」
「え?別に構いませんが、何故私に言ってからなんです?」
「今回の当事者は香坂だろ?当事者を差し置くなんて出来ねえよ」
「先輩って、変な所に拘り持ちますよね。でも、私の事を気遣ってくれているんだろうなって分かるのでありがとうございますと言っておきますね」
「なあ、まだ教室開いてるだろうから行かないか?話すにはもってこいだろ」
「でも、中学生の私が入っても良いんですか?」
「それは担任との交渉次第だな。でも、あの人今回のは把握済みだし話分かる人だし許可してくれると思うけどな」
思った通り、特例を認めてくれた。杞憂だったようだ。でも、条件として自分もその場にいる事が条件だと言われてこっちに断る理由は無かった。
「さて、蒼矢。まずは俺から聞かせろ。実際のところ何があってお前は逃げたんだ?」
俺はあの時あった事をそのまま答える。香坂も相槌を打って真実だと伝えてくれる。
「核心話さない気か?なんで逃げたのかって聞いているんだ」
本当に容赦がない。だからこそ、自分達が正義だと思っている奴らに問いただす。
「質問を質問で返すようで悪いんだが、なら聞こう。お前らは俺の何を知ってるんだ?颯斗、煉牙、東雲、伊藤」
「どういう意味だ?」 「蒼矢?一体何を言ってるの?」 「桐生君、それは」
皆がたじろぎ戸惑う中で伊藤は俺を見据えて言う
「私達は知らないよ。たった3ヶ月、そんな時間しか一緒にいないのに知れるはずが無いよ。私だって中学からずっと友達の子いるけど全てなんて知らない。でもね、見てれば分かるの。日和ちゃんを見て誰かを思い出しちゃったんじゃないかなって。それも、もう会えない人」
この場にいた誰もが驚愕と戦慄を顔に出していた。出さざるを得なかった。
「・・・・・なんでそう思った?」
「日和ちゃんから蒼矢が泣いてたって聞いた時からなんとなくそうかなって思ってたの。蒼矢はさ、普段から楽しそうに過ごしてた。それも悲しい過去なんて持ってないんじゃないかなってくらい。だから、バレーの授業で亜矢ちゃんを取り合った時におかしいって思ったの。なんかこう、焦ってるというかなんというか・・・語彙力ないからいい言葉が分からないや。なんだか亜矢ちゃんを守るというよりも約束を必ず守るって感じがしてたから。それを思い出した時に考えたの。その結果がこの答えだったよ。どう?」
「3割正解、4割間違い、3割は分からないが答えだな。まず、もう会えないであろう人の感傷に浸ったのは事実だ。それで涙出てきちまってな。見られたくなくて逃げたってのが真実だ」
「!?」
担任ですら絶句した。「もう会えないであろう人」という言葉はすなわち大切な人との離別を意味する。高校1年生には到底耐えられるような事実ではないであろう事は想像付くからだ。
「え?でも、ならなんでそれを私の時には話さなかったの?言ってくれてたらあんなひどい言葉は言わなかったのに・・・」
東雲 亜矢は問う。だがその問いの答えを蒼矢は溜息を吐いてから語りだした。
「そういうところですよ。あの時のあなたにもう会えない人の事を思い出したらそこにいたくなかったんですと言ったらなんて返ってきましたかね。恐らく、辛いだろうけど男なんだからシャキッとしなさい。といった事を言われて結局私は学校には行かなかったでしょう。普段のあなたを見ていたから分かりますよ。あなたは強い人です。ですが、私は弱いんです。あなたには何を言っても弱い人間は相容れないでしょうから」
「その敬語もなんなのよ!普段のように喋ってよ!それも私のせいなの?」
流石にイラついてきた。こいつは強いのかもしれないが
「うるせーよクソガキ。金輪際関わるなってデカデカと宣言したのはどこのどいつだよ。なぁ?東雲 亜矢!!」
「あの時に昨日迄の俺達の関係は消えただろ?軽蔑だけなら信頼を回復する手立てもあるだろうがよ、関わるなって言われたら誰だって赤の他人、いや、赤のクラスメイトになるに決まってんだろ!そんな状況作り出しといてよくもまあのうのうとそんな戯言吐けるな。もうお前はいいや。さっきの伊藤の質問への解答だが、悲しい過去なんて高校に来る前からある。
それと俺が感傷に浸った理由は、香坂に重ねたからじゃない。言い方こそ悪いが、あのウザイノリを受けてあの人が与えてくれる優しく温かい感じが恋しくなっちまったからだよ。あーもう、こんな恥ずかしい事言わずに終わらせたかったのに」
「分からないってのはどういう事?」
「あの時約束守るって気持ちはあったが焦ってたかは分からない。少なくとも自覚はしてないから分からないって言ったんだ」
「そうなんだね・・・でも、蒼矢も一つだけ間違ってる事はあるよ」
「ん?何がだ?」
「涙を見られたくなかったから逃げたって事は、それが恥ずかしいって思ってるって事だよね?でもね、誰かを思って流す涙は決して格好悪くないんだよ?それだけ誰かを思いやることの出来る優しい人だっていう証明なんだから」
本当に理想論ばっかりだ。実際人間なんて事情知らない状況で誰かが道端で泣きだしたら大丈夫かなって思ってくれる善人は少数だ。大半はいきなり泣き出したで終わる。情緒不安定な危険人物と思うかもしれない。中にはダッサとか言うパリピはいるだろうし、心中で格好悪いと嘲笑う奴も少なくないだろう。俺は言葉にするならゴミクズ共と何年も渡り合ってきた。いや、ポジティブシンキングにするなら実に人間らしいかな。だからこそ口から出てきた言葉はこれだけだった。
「甘っちょろいな。でも、好きな生き方だ。お前はそう生きてくれ」
「なんだろうな。蒼矢、お前悟ってるんじゃねえのかって雰囲気あるな。それも俺達が知らなかったお前の一面なんだろうな」
「そう思っててくれ。さて、お開きで良いか?」
「おう」 「そうだね」 「私も」 「担任としては不安要素が色々と露見したがまあ、良いだろう。東雲、お前はどうだ?」
「え?あ、大丈夫です」
「そうか。ならこの件は一旦これで解決とする。みんな寄り道せずに帰るように」
そして俺達は帰路につく。会話は普通の日常っぽい事だけだった。みんな俺に気を使ってくれているんだろう。先生の言葉もあったしな。
こうして高校最初の大事件は終わりを告げた。俺は同時に申し訳なく思う。こうして一緒に歩いてくれる友達がいる事をすっかり忘れて一人で抱え込んでしまった。向こうのみんなも何かと寄り添ってくれたのに仲間の大切さを忘れてしまっていた。
しかし、まだ俺達には試練が残っていて・・・
「あ!全く勉強してない!」
「・・・やべー!中間忘れてた!!」
波乱のテスト期間が襲来するという現実にいきなり引き戻されたのだった。
ここまで読んでいただけてありがとうございます。
2章からはもう少しファンタジー要素を入れて主人公が格好良く見えるようにしていくので乞うご期待!




