13話:帰還した勇者は自分がおかしい事を認識する
蒼矢が家の近くに帰ってきたのは午後の2時すぎだった。6限の授業は2時15分からなので、家での説教時間を考えなくても間に合わないかもしれない。
「ただいま」
「蒼矢?本当に蒼矢なの?」
「うん。本当の桐生蒼矢だけど・・・あのー何故匂いなんか嗅いでるんです?」
「蒼矢の匂いがする。無事に帰ってきてくれたのね」
「ちょ!泣かないでよ」
「泣かせるような事するからでしょうが」
「ごめん。心配かけて。学校にも迷惑かけたから行かなきゃいけないんだ」
「分かってるわよ。でも、もう間に合わなくない?」
「いいや、間に合わせてみせるよ。行ってくる」
「話は帰ってきてからね。いってらっしゃい」
魔法無しで出せるマッハの速さで走る。電車待つより早いだろうから完全徒歩だ。道行く人達は揃ってはや!と言ってくる。このくらいの速さはパーティー内ではみんなより少し早いくらいだ。自分が異質なのは明白だな。
「今回みたいな事になるのはもう嫌だからな、俺が人間をやめてる事以外は話そう」
どんな侮蔑の視線も受け止める。そう決めた。
学校に着くころにはもう3時を回っていて授業終了まで15分も無い所だった。
授業中という事もあって誰ともすれ違わずに教室の前まで来た。先生が喋っている状況で入るのは忍びないので、話し終わったであろうタイミングを見計らう。
そして遂にその時は来た、それではこの問題を各自解いてくれと聞こえたと同時に突入する。
「みんな、おはよう」
「・・・・・・・・」
思っていた通りの静寂
俺の予想では「何サボってんだよ!」とか「この最低クズ野郎」という罵倒の嵐が吹き荒れるだろうと踏んでいる。
さあ、俺のメンタルを強靭にしているうちにその思いをぶつけろ!
「なんでここにいるんだぁ~~~~~~?」
・・・あれ?怒ってると思ったが驚きが勝ったのか?
「お前、蒼矢か?」 「蒼矢・・・だよね?え?本物?」
「ああ、本物だ。はい、俺の学生証」
「いや、そういう事じゃなくて」
「君は桐生君だよね?今来たって事で良いのかい?」
「あ、田川先生。はい、ほぼ欠席なので今日は来なかったって扱いで良いです」
「まあそうなんだが、俺は実力主義でね、今日は45ページから47ページの内容をやったんだよ。そこの総まとめとして問題集の問題を解いてもらってる。それが解けるなら数学は出席にしとくよ。そんじゃ少し職員室に行ってくるからちゃんとやっておくように」
「了解です。そんじゃちゃちゃっと解きますね。あ、それから俺になにか聞きたい人は帰りのHR以降に頼む」
そうして自分の席に着いて黙々と解き始める蒼矢にあれだけの罵声を浴びせた東雲ですら何も言えなくなっていた。
そして数学の課題を提出し終えてHRの為に担任が入ってくる。
「お、本当にいるんだな自由人。言いたいことは山ほどあるがまずは連絡事項とかを済ませる。来週の中間テストの為に明日から部活は禁止。帰宅部は引き続き活動を続けてくれ。以上だ。さて、桐生。お前は放課後直前のこのタイミングで何しに来た?」
「ある方に言われた通り、いつまでも黙ってるわけにはいかないんで軽く説明しにきました。これ終わったら早急に香坂の所へ向かいます」
「そうか。後輩ちゃんの所に行くというのなら時間は上限10分だな。私からは1つだけ聞きたい。お前が登ってきた山の登り心地はどうだった?」
「ハイキングしたての初心者には体力がキツイと思います。って、そこですか」
「しみったれた顔をしている訳でもなさそうだからな。どうせこの後質問攻めに晒される事になるだろうから聞かないでおいてやる。それに、聞かなきゃならない事があるなら明日以降で構わないだろう」
本当、うちの担任って有能だよな。師匠に似てると感じる。
等と考えていると早速声がかけられる。
「あ、あの・・・桐生君。朝はごめんなさい。それと泣いてたって本当なの?」
「東雲さん。謝る必要は無いですよ。あの時の私の言い方は酷いものだったと十分自覚していますし、今こうして言葉をかけていただけただけで有難いと思います。それと泣いたというのは本当です」
あの時東雲亜矢は俺と金輪際関わりたくないと断言したのを覚えている。その瞬間に俺と東雲亜矢が築いてきた関わりはリセットされているだろう。そう思ったから1から関係を築くために敬語で話した。
「え?なんで・・・」
「なんでと言われると困ってしまいます。そこについては香坂に話してからと考えていたもので、簡単に言うと懐かしい物が恋しくなったからですね」
「え?いや、そうじゃな」
「桐生俺にも聞かせろ。あの子とは本当に仲直りしたんだよな?」
「お前、マジでどこ行ってたんだよ」
「ちょ、待て。俺は聖徳さんじゃ無いぞ?一回落ち着け、な?」
「無理だ!時間は有限なのだから」
「その通り。だから美奈も参戦するね☆」
「伊藤~!お前くらいは優しくしてくれると思ってた俺が馬鹿だった!」
解放される頃には既に疲れ切っていた。それでも俺には香坂を見つけださなきゃいけないという至上命題がある。だからよ、俺、止まるんじゃねえぞ・・・
中学校に行ってみたが既に下校しているようだ。俺は香坂の行動パターンなんて全く把握していない。
探すのは難航すると思えた。
駅に最高速で向かったがそこにもいなかった。
諦めて俺がいつも登校に使っている道を歩いてみる事にした。あの時もわざわざ合流しに来たくらいだから、いてくれるんじゃないかって一縷の望みに賭ける事にした。
ゆっくりとすれ違う人の顔を見ながら歩く事15分。高校が見えてきた。謝罪は明日になるなと諦めながら歩く。
すると、学校の正門に人影がいることに気付いた。遠目からなのでよくは分からないがうちの制服では無さそうだ。顔が見えるあたりまで歩いてきた時、俺は時間が止まったような感覚を覚えた。
そこにいたのは、俺が今一番会いたいと言っても過言ではないだろう。香坂 日和だった。
次回、1章完結!
(幕間的なのも入れる予定ですが)




