116話:これが俺だ
なんとか書けた・・・
「双剣とな。私を倒しに来たにしてはお前も法を破っているじゃないか」
「何言ってる。権力を相手にするんだ。これくらい当たり前だろう?」
「馬鹿か?私を倒したところで、君は捕まる。それを親御さんは望むのかい?」
「親か・・・普通なら思い留まるんだろうけど、生憎と、俺にはそんな理由で止まるだけの何かは残ってないんだ。それに、あんたが言うってだけで怪しさの塊だし、聞く訳がないだろう?」
「小生意気な。現実の見えてないお前には親の気持ちなど分からぬのだろうな。はっきり言おう。君は歪んでいる。親と言う言葉に躊躇を見せないのも、こうして襲撃をするのも。君に私は何もしていないし、私の部下達は優しい奴らだ」
「だから?親の為に?確かに大切にされてきたんだろうな俺は。でもよ、人間の嫌なとこ見すぎちまったからさ、親が大切に育てるのは所詮自分の為。そんなとこだろうって思ってる。あんたの言う通り歪んでるよ。だから言わせてもらう。それこそ手塩にかけて育ててきた娘を・・・嬲り、犯して殺したのはどこのどいつだ?」
「それは・・・」
「俺が直情的だから情に訴えかければ止まるとでも思ったか?俺はな、ゴミ掃除してるだけなんだよ。政治家ってのは良いご身分だよな?そうやって好き勝手やってもカネと力技で揉み消す。お前らが手本見せてんじゃねえか。成り上がりたきゃさっさと汚くなれってな。俺がやってるのはお前がやってるのと同じことだ。ただ、使う力が違うだけ。それで?子供達には清廉潔白に生きろ?間違ったことをしたら反省して償えだ?やってられるかそんなもん。横で血流してる人も、これから死に向かう人も・・・そんな現実を変えられる立場にいながら変えようともしなかった自分たちのせいだと、せいぜい思い知れ」
「ならばお前もゴミじゃないか!!」
「毒を制するには毒を用いらなきゃいけないだろ?あんたみたいな人類の汚点をみんな嬉々として守ってんだからよ。そいつらねじ伏せる事の何が悪い」
「気に入らないから攻撃か。お前もクズだ。お前が嫌う私と同類だ!」
「同類ね・・・安心しろよ。人間にクズじゃない奴なんていない。そのクズを上手く隠し通す奴。それこそが頭がいいって事なんだから。俺は隠したりしない。俺のクズで誰かの無念を晴らせるなら、被害を抑えられるなら・・・それで良い」
「はぁ、はぁ・・・」
「弱いな。腐っても生物だ。ちっとは喧嘩出来ないとあっさり死ぬぜ?野生なら。なあ、聞かせてくれよ。あんた、なんで政治家になりたかったんだ?」
「いきなり何を」
「もうあんたの肉の壁はいない。殺してこそいないが、役には立たないだろう。あんたは負けた。どうせあんたは終わる。なら聞かせろよ。あんたは・・・どこで歪んだんだ?」
「それを聞いて何になる?」
「知りたいんだよ。人間はどんな事があればこんな凶行に手を染められるのか」
「君は聞かなくても良いんじゃないか?話すにしろ・・・後ろのそいつらを抑えてくれ。怖くて喋れない」
「怖い?腑抜けやがって。これより多い人数で女を取り囲んでより強い恐怖を与えた元凶が何言ってんだ?」
「そんな事を言われると話したくなくなるものさ」
ここまでは計画通り。さあ始めよう。こいつの、精神崩壊をな。
「そうか、なら・・・・・・良いぞ。やっちまえ」
「!!?」
石橋は右肩を躊躇なく突き刺す
「いだぁぁい!!焼ける!!助けてぇぇ」
「お前さ、勘違いしてないか?お前は敗北者。捕まったら最後・・・どうなろうと何も言えねえんだぞ?」
突き刺した刀を横にずらす。
「や、やめろぉ・・・やめてくれぇぇ」
「痛いか?辛いか?やめてほしいか?」
「も、もちろん!」
「そうか、なら良いぞ。その刀抜いてやっても」
「本当か!?」
「ああ、だが条件がある」
「?」
「なに、簡単だよ。お前が奪った命、全て元に戻せ」
「・・・へ?」
「あ?だから、殺した女性全員生き返らせろって言ってんの」
「そ、そんなの無理だ!!」
「フッ、クックック、これは驚いた。犯されてる女には助けてと言われた時に、【良いぞ?だがその代わり、自分で抜け出せ】なんて言った男が?大男2人に押さえつけられ異物を挿れられてる女性に無理難題課しときながら?自分は無理難題が出来ないですと?おいおい、出題者の出来ない問題を解けって、どんな罰ゲームだよ」
「なぜ・・・そのことをしっている?」
「何故だろうな。ま、どうでも良くね?さて、まだ足りない。長岡さん。あなたもどうぞ。死なない程度なら好きにして良いですよ?」
「・・・そうだね。ならやらせてもらおうか」
そう言うと合計で4発殴り、腹を蹴っただけで終わらせた。
「そんなんで良いんですか?」
「うん。君が地獄は見せてくれた。それに、こいつを殺しても家族は帰ってこない。なら、少しでも僕が天国に行けるようにしてまた一緒に暮らす。それが・・・僕の目標だ」
「あなた、本当良い人っすよ」
そう話してる間にもうちの先生にひどくやられて歯なんて5本も残ってない。このままじゃ死んじゃう。
「先生、そのくらいで」
「まだだ。まだ足りぬ。こいつが光を失い、男も失うまで・・・切り刻んでやるんだ!!」
止めに入る。
「何故邪魔をする!!」
「言いましたよね?最高の復讐をしようって。これ以上は死んでしまう。彼は生物的に見れば最弱ですよ?僕達と同じような肉体だと思ったら大間違いです」
「・・・大詰めか。しかし、どうやって地獄を見せるんだ?」
「ん?それに関してはお任せを。あなた方の恨みをそのまま呪いにしますから。恨みによる呪詛ほど・・・怖い物はありませんので」
森山の顔に手を当てる。
「さて、暴力の時間は終わったよ。ここからは地獄を見る時間だ。あなたは結局話さなかったな。何故政治家になろうとしたのか。それを思い出し更生する事を解放条件にしようと思ったけど、もう良いよ。抜けられない地獄の円環の中で、生ある限り苦しみなさい」
森山の身体がビクンと跳ねる。そしてすぐに
「あああああああぁぁぁぁああぁぁぁ!!」
叫びだす。
「こ、これは?うるさい!」
「催眠術の一種です。負の感情を抱く、邪な事を考えると想像を絶する悪夢を見るという暗示をかけています」
「け、警察が到着したらしいです」
「そうっすか。よし、立ち去りますよ」
「そうですね」
「俺は残る」
「え?」
「元よりこいつを殺したら自首するつもりだったのだ。私が一人でやった事にする。君達の関与は疑われないようにするよ」
「確かに償うのは必要だけど、捕まる必要は」
「あるさ。捕まって公に顔をさらしてこう訴えるんだ。僕は罪と認めない。本人が、政治家全員が、国民が森山という男を罪人と認め、本人も罪だと認めるまで、私は罪だとは思わないと。こんな凄惨な事件が起こらないようにするさ。だから僕は残る」
「・・・それで良いんだな?」
「ああ、こうしてこいつの顔をブサイクに出来たんだ。こうして嘆かせている。君のお陰だ、感謝しているよ。それに、君だって大義の為とはいえ人を傷つけた。いつかはその罪を清算する時が来る。先に僕が償い方を見せておこうじゃないか。先生として君に教えたい。世の中ってのは理不尽でね。心の底から悪い奴の悪事には罰が当たる量が多くないのに、良い人がたまにやった悪事は大きな罰として返ってくる。真面目とか良い子は美徳かもしれない。でも、圧倒的に報われもしない。そんな世の中を・・・僕は潰す。その為に少しお別れだ。さ、時間が無い。行きなさい」
「・・・面会には行く。またな」
俺は長岡さんと一緒に脱出をした。
「全く、会いに来ちゃダメだよ。バレちゃうじゃん」
「石橋だな」
「ええ、そうっすよ。随分遅かったっすね」
「大臣!!・・・これを一人でか?」
「ええ、俺一人っすよ。なんなら今ここで何人か殺して証明します?」
「しなくて良い。石橋嶄十郎。逮捕する」
「ええ、どうぞ」
その日、後に石橋事件と呼ばれる事件が起こった。容疑者は一人。文部科学大臣森山を含め、文部科学省の幹部と護衛、総勢14名が重傷を負った。この事件のエピソードとしてはこう語られている。
容疑者石橋嶄十郎は晴れやかな笑顔で逮捕されたのだそうだ。




